「生前」退位という言葉は不適切?  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   「生前」退位という言葉は不適切?

[用語解説]生前退位

「生前」退位という言葉は不適切? (2016/8/9 政治山)

関連ワード : 憲法 法律 生前退位 用語解説 皇室 

 天皇陛下が国民向けビデオメッセージの中で、生前退位の意思を表明されたとして、大きく報道されています。

 しかし、陛下はメッセージの中で、退位や生前退位という言葉は使っていません。識者の中には、「生きている間に、という意味で『生前』という言葉を使うのは不敬」という指摘もあります。

おことばを述べられる天皇陛下

おことばを述べられる天皇陛下(宮内庁ホームページ)

退位だけで「生きているうちに」という意味含む

 そもそも退位自体に「生きているうちに地位権力を手放す」という意味があり、崩御により皇位継承された場合は退位とは言いません。

 現在の日本国憲法や皇室典範では、皇位継承は崩御を前提とし、退位についての規定がありません。

 また、生前という言葉には、「亡くなった人が生きていたとき」という意味で使われることが多く、「生前を偲ぶ」「生前の功労により」といった表現で用いられます。現に生きている人に対して「生前」という言葉はあまり使われません。

「生前」なくても「退位」「譲位」で意味は伝わる

 ご存命中に後継者である皇太子殿下に譲位する、という意味であれば、「退位」もしくは「譲位」と表現すれば趣旨は伝わるはずです。陛下のご意向を最初に報じたNHKが、ニュースの肝である「存命中に」ということを強調するためか、敢えて「生前退位」と表現したために、標準ワードとなってしまいました。

退位の実現には多くの政治的課題も

 天皇陛下の退位を巡っては、元号をどうするか、不在となる皇太子をどうするか、皇室典範改正か一代限りの特別法制定か……など、解消すべき政治的課題が多くあります。大きく言えば、法の下の平等や人権に関わる憲法上の問題にも及ぶテーマであり、安倍政権の対応が注目されます。

関連記事
【アンケート】天皇の退位と法整備についてどのような対応が望ましい?(~8/19)
天皇陛下生前退位の論点は?
現代社会において「摂政」ってありえる?
改憲は妥当も今は好機ではない? 優先すべき政治課題、求められる国民の覚悟…海外の視点
高円宮典子さま、出雲大社神職の千家氏と婚約内定 「女性宮家」議論に海外紙も注目
関連ワード : 憲法 法律 生前退位 用語解説 皇室