[用語解説]高速増殖炉、もんじゅ
もんじゅ存続、停止中でも年間維持費161億円 (2016/5/19 政治山)
原子力規制委員会が見直しを勧告していた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)について、政府が存続する方針であるとの報道がありました。
総事業費は1兆円超
もんじゅの研究開発の事業費(予算)は1兆410億円(1980―2016年度)に上り、毎年の維持費に平均161億円余がかかっています。2012年11月、保安規定に基づく機器の点検漏れが約1万点見つかり、その後、日本原子力研究開発機構は「体制を再構築した」としたものの、その後も検査に不備が見つかりました。
運転主体の受け皿探し難航
規制委は昨年11月、「運転を安全に行う資質がない」と断定し、機構に代わる運転主体が見つからない場合はもんじゅの抜本的な見直しをするよう、馳浩文科相に勧告していました。文科省は検討会を重ねていますが、ナトリウムを冷却材に使う特殊な炉は現段階でリスクが大きく、受け皿探しは難航しています。
高速増殖炉型は、現在運用されている軽水炉型の原発に比べ、ウラン資源の利用効率が100倍以上に向上する夢の技術です。2005年10月に閣議決定された「原子力政策大網」では、2050年頃からの実用化を目指すことが明記されていましたが、その前段階の目標である2025年頃の実証炉も実現の目途が立っていません。1995年のナトリウム漏洩事故以来、本格的な運転再開にも至っていません。
政府は前のめり、国民レベルの議論は進まず
増殖炉を諦め、現状の軽水炉に研究開発の重点を移している国が多い中、日本の開発予算だけが目を見張る金額になっています。
政府はもんじゅを「国際的な研究拠点」と位置付けています。国内に滞積するプルトニウム約48トンについて、国際社会から疑念を持たれないために高速増殖炉での消費を目指しています。
原子力発電そのものの賛否が分かれる中で、実用化の目途が立たない高速増殖炉の研究開発にどこまで予算を投じるべきなのか、国民レベルの議論は進んでいません。
- <著者> 上村 吉弘(うえむら よしひろ)
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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