口利きとあっせんは同じ意味?請願と陳情、要望は?―甘利・遠藤氏問題  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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[用語解説]口利き、あっせん、請願、陳情、要望

口利きとあっせんは同じ意味?請願と陳情、要望は?―甘利・遠藤氏問題 (2016/2/12 政治山)

 甘利前経済再生相に続き、遠藤五輪相が口利きしたのではないかとの疑惑報道が出て、政界で“口利き”がキーワードになっています。国会議員や地方議員の元には日々、様々な請願や陳情、要望があります。国民や住民のこうした思いを叶えようと議員活動しても、それを通常「口利き」「あっせん」とは呼びません。

デジタル大辞泉によると――
口利き………………「間に立って紹介や世話をすること」
あっせん(斡旋)…「間に入って双方をうまく取り持つこと」と説明しています。

法律用語としては「あっせん」

 口利きもあっせんも当事者同士の間を取り持つ行為を指すようです。ほぼ同じ意味と考えて良さそうですが、刑法197条の『あっせん収賄罪』でもあっせん利得処罰法の『あっせん利得罪』でも法律用語としては「あっせん」という表記になっています。

 マスコミや私たちの会話では「口利き」の方が使いやすく意味も分かりやすい印象なので、前者が文語体に、後者が口語体に向いている表現なのかもしれません。

お願い

請願や陳情、要望は政治の声を届ける有効な手段

 一方、請願や陳情、要望は国民や住民が自分たちの思いを政治に反映させる有効な手段ですが、その違いは何でしょうか。

請願……「こいねがうこと。目上の人などに願い出ること」
陳情……「政治家などに、実情を訴えて、善処してくれるよう要請すること」
要望……「物事の実現を強く求めること」とあります。

請願や要望ではなく、抗議となればデモ行進や抗議集会なども有権者の政治活動の1つと言えます。

請願書は国会で審議

 議員の元にはしばしば国民や住民から請願書が提出されます。拉致被害者の救出や特定の疾病に対する医療費補助など国民総意に近い要望は有志が署名を集めて、賛同する議員の紹介により議会に提出されます。国会の場合、衆参各院で受理されると、議長から付託を受けた所管の委員会で審査し、議長に報告。議長は本会議に諮り、採択または不採択が決定されます。

請願の提出から採択・内閣送付まで

請願の提出から採択・内閣送付まで(参議院ホームページより)

 予算編成の時期に地方から陳情団が大挙して訪れ、所管の役所や各党、議員会館に要望書を提出します。地方からの要望で目立つのは主要道路をつなげる「ミッシングリンクの解消」や農林水産業の補助金拡充などです。1年前の要望書と内容的にほぼ変わらないことも多く、恒例行事のようになっている側面も否めませんが、要望活動の前に開かれる決起集会では団体職員がタスキや鉢巻きをして鬨(とき)の声を上げる光景も見られ、生活を掛けた思いが伝わってきます。

<著者> 上村 吉弘(うえむら よしひろ)
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター
1972年生まれ。読売新聞記者8年余、国会議員公設秘書3年余を経験。記者時代に司法・県政の記者クラブに所属し、秘書時代に中央政界の各記者クラブと接してきた経験から、報道機関の在り方に関心を持つ。政治と選挙を内外から見てきた結果、国民の政治意識の低さに危機感を覚え、主権者教育の必要性を訴える活動を行っている。