歳費が決まっている議員の育休はあり?なし? (2016/1/8 政治山)
昨年12月、自民党の宮崎謙介衆院議員(34)が育児休暇を取る考えを示したことが、与野党を巻き込んで賛否二分する議論になっています。
宮崎議員が勉強会立ち上げ、国対幹部から批判も
宮崎議員は6日、育休規定がない衆議院規則の見直し案を検討する勉強会を立ち上げました。育休中の議員歳費の在り方についても議論する方針で、勉強会には自民党の有志議員10人が出席したそうです。
一方、同日午前と午後の2回にわたって国対幹部に呼び出され、売名行為と見られかねない点を批判されたほか、この日議長に提出する予定だった規則見直しの提言書について、提出前に国対を通すように求められたとのこと。
衆議院規則・参議院規則には産休の規定だけ
宮崎議員の妻・金子恵美衆院議員(37)は2月中旬に出産予定で、宮崎議員は約1カ月間、金子議員は約3カ月間の育休を取る予定です。
出産については、衆議院規則185条2項で「議員が出産のため議院に出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる」と規定。参議院規則187条にもほぼ同様の規定があり、これまでに野田聖子・小渕優子衆院議員ら衆参で計9人の女性議員が産休を取っていますが、育休規定はありません。
国会には“産休”の規定もない?
ただ、この産休も出産のための欠席であり、休暇ではありません。被雇用者の場合、休暇は“給与が出る労働者の権利”である一方、欠席は“自己都合によるもので給与が出ない”というケースが多いので、欠席届を出す場合は産休とは言えず、「出産のための欠席」というのが正しい表現です。つまり衆議院にも参議院にも、育休はおろか産休の規定も存在しないことになります。
とはいえ、国会議員の給与は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」などにより、欠席したところで歳費が決まっています。国会議員は明らかに被雇用者ではありません。
現状のまま育休とれば衆議院規則に抵触?
今回、宮崎議員は本会議のたびに欠席届を出すことで事実上の育休を取る予定ですが、上記の規則では、「出産のため」と限定されており、規則に抵触する恐れがあります。
このほかに欠席届を出せるケースは、事故のため出席できなかつた場合に限られます。また、事前に不在を請う請暇届を出す場合は、議院運営委員会に諮られ与野党の議運理事の了承が求められます。
自治体ではすでに多くの“育児欠席”の前例
自治体では、東京都文京区の成沢広修文京区長が長男の誕生を機に2010年4月、2週間の育休を取得しました。その後、湯崎英彦広島県知事、倉田哲郎箕面市長など都道府県、市区町村の各首長が次々と育休を取りましたが、3男4女の父親でもある橋下徹氏は大阪府知事だった当時、首長による育休取得に批判的な見解を示しました。
首長は自治体の特別職という立場でもともと勤務時間の規定がなく、育休制度も存在しません。条例で言及していない自治体の場合、育児を理由にした欠席の期間は給与が減額された首長もいるようです。
与党内でも複雑な反応
今回の育休宣言に対しては、身内の自民党からも賛否分かれた反応です。谷垣禎一幹事長は「議員は被雇用者とは身分関係や業務が違う」と否定的な一方、丸川珠代環境大臣は「男性議員も育休をとるべき」と賛成しています。
野党からは疑問の声が出ています。民主党の岡田克也代表は「歳費をまるまる取りながら休むのは、国民から理解を得られない」とコメント。蓮舫代表代行も「時間的自由度が高い国会議員は、完全育休より公務との両立が可能。かつ、国会議員の育休は、給与も全額保証で民間より遥かに優遇されている」とツイッターで批判しています。
おおさか維新の会の足立康史議員は、自身のウェブサイト上で“心から応援したい宮崎議員の「育休」宣言”と題して、「現在の規則の枠内での『やりくり』は心から応援したいが、規則改正には深刻な課題がある」と限定的にエールを送っています。
国会議員は賛否とも慎重な発言
全面的に否定すれば、イクメンや育児休暇、女性活躍そのものを否定しかねない微妙な性格を含むテーマだけに、発言する議員も慎重に言葉を選んでいるようです。
一方で、国民からは、肯定する意見も散見されるものの、会社員と異なり比較的自由に時間を調整できる国会議員という立場を問題視する意見がネット上では圧倒的に多く寄せられています。