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[用語解説]百条委員会

疑惑の政務活動費を解明する、百条委員会は伝家の宝刀!? (2014/7/16 政治山)

政務活動費の不透明な使用により兵庫県議会議員を辞職した野々村竜太郎氏。この件をめぐって、百条委員会の設置が必要ではないかとの意見が出ました。政治山に寄稿をいただいている東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に百条委員会について伺いました。

兵庫県庁

百条委員会とは何か?

――聞き慣れない名称ですが、百条委員会とはどのような委員会なのでしょうか?

「地方自治法第100条に基づき設置される特別委員会であることから百条委員会と呼ばれています。簡単に言うと、百条委員会は地方議会が地方公共団体の事務に関する調査を行うために設置する委員会です。ちなみに、地方自治法第百条は地方議会の調査権について定めた条文で、その中には、今回野々村氏の不透明な支出で問題となった政務活動費の支給について定めた項もあります。議会や議員には調査活動が保障されており、その手段が百条委員会です」

――百条委員会では、どのようなことが調査対象になるのでしょうか?

「一部例外はありますが、自治体における大半の事務が調査の対象になります。今回の野々村氏の問題は政務活動費に関するものですが、この政務活動費の交付については、若干複雑な手続きを取ります(参照:誰が政務活動費の支出を認めるのか?)。参照記事の図を見れば分かるように、政務活動費は首長(普通地方公共団体)が交付することになっていますから、政務活動費の交付は自治体の事務にあたり、百条委員会の調査対象になると解されます」

個人を追及するのではなく、あくまで調査のための委員会

――自治体の事務が調査対象になるということですが、野々村氏個人の不透明な支出について調査することはできないのでしょうか?

「この場合、兵庫県知事が交付した政務活動費につき、不適切な使用があった可能性があり、そのような交付を行っている県知事の責任について調査が行われるということになると思われます。百条委員会が設置されれば、当然、政務活動費の交付を受けて不透明な支出を行っていたという疑惑を受けた野々村氏もそこに呼ばれることになったはずです」

――では、野々村氏個人の問題追及のために百条委員会を設置することにはならないということですか?

「実態として、首長や議員などを追及するために百条委員会が利用されることも多いのは確かで、今回も兵庫県議会で百条委員会が設置されれば、野々村氏個人を追及する場になっていたはずです。ただし、百条委員会は、あくまで議会が調査を行うために設置するものであることは忘れてはなりません」

強力な手段、いわば「伝家の宝刀」

――野々村氏は議員辞職をしましたし、遡れば猪瀬直樹前東京都知事も借入金の問題で追及された際に、この百条委員会の設置が決定されたタイミングで辞職しました。それほど百条委員会を設置されたくない理由があるのでしょうか?

「地方自治法第百条の条文には、『当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。』とされています。百条委員会が有する調査権は、国政における国政調査権に相当するもので、出頭や記録の提出を求められた際に、正当な理由がなくそれを拒むと、禁錮または罰金に処するとされています。また、虚偽の陳述を行った際にも、禁錮に処するとされています。出頭の拒否や虚偽の証言があった場合には、議会は告発しなければならないこととされており、調査の対象とされる人物にとっては“逃げ道”がふさがれていると言えるでしょう」

――「逃げ道」がふさがれていると言うほど、百条委員会は強力なものなのですね。

「その通りです。百条委員会は地方議会が調査を行う上での伝家の宝刀であると言って良いと思います。実際に、百条委員会の設置は極めて例外的ですし、これを設置するという話が出た段階で、猪瀬氏や野々村氏のように辞職してしまうというのが現状でしょう」

「本年2月から沖縄県議会では、米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古沿岸部埋め立てを承認した仲井真知事の判断について調査を行うために百条委員会が設置されていました(7月15日に最終報告書が本会議に提出される)。このように国政にも関わるような重大な問題についても、百条委員会が使われることもあります。それぐらい、百条委員会は地方議会にとっては強力な「武器」となるのです」

本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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