【海外】シリア、初めて化学兵器保有を認める 米国は攻撃を見送るのか? NewSphere(ニュースフィア) 2013年9月12日
シリアのアサド政権は10日、初めて化学兵器保有を認めた。シリアのムアレム外相は、化学兵器の製造をやめ、保管場所をロシアや国連、関係諸国などに発表すると表明した。シリアの化学兵器を国際管理下に置くというロシアの提案や、米国が軍事介入に踏み切る姿勢を見せていることの影響といえる。
また、化学兵器禁止条約(CWC)にも署名する意向を示している。
米国の対応は オバマ米大統領は10日夜、シリア問題への米国の対応について、全国ネットのテレビ放送で演説した。シリアの化学兵器を国際管理下に置くというロシアの提案に対して、「軍事力を使わずに化学兵器の脅威を取り除く手段となる可能性がある」と述べ、議会にシリア攻撃決議の延期を求めた。
ただし、軍事介入の可能性は否定していない。米軍が軍事行動に踏み切る場合は期間を限定し、地上部隊は派遣しないとも強調した。
さらに、ケリー国務長官はジュネーブでロシアのラブロフ外相と会談する予定だ。ケリー長官は、化学兵器の国際管理について、「速やかに、本当に(表面的でなく)、検証可能でなければならない」と述べている。
シリアの化学兵器問題については、昨年6月に行われたロスカボス・サミット(メキシコ)で、米露トップは最初に意見を交わしたという。USAトゥデイ紙は、当時は、ロシアのアサド政権への武器提供をめぐる溝が埋まらなかったと指摘。化学兵器への対処をめぐって、ようやく歩み寄りの姿勢がみられたといえる。
各国の対応 フランスも、シリアのアサド政権に対し、化学兵器に関する情報を全面開示し、国際管理下に置くことなどの国連安保理決議草案を提示。草案には、シリアが応じない場合、国連憲章7章に基づく武力行使を容認する条項も盛り込まれている。
また、8月21日の化学兵器使用について、国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう要求した。
なお日本は、アメリカへの「支持表明」を避けている状態だ。一方、ロシアの提案に対しては、「前向きなものと評価し、支持する」と安倍首相はプーチン大統領に語っている。
内戦の根本的な解決にはならないという指摘も USAトゥデイ紙は、オバマ大統領の化学兵器問題の解決努力は、シリア内戦の根本的な解決にはならないと指摘している。
ニューヨーク・タイムズ紙も同様に、アサド政権が化学兵器を放棄しても、同国の内戦にあまり影響を与えないだろうと見解を示している。同紙は、化学兵器が重要な戦闘で戦局を変えるとは思えず、戦争で死亡した10万人以上の中で、化学兵器で死亡した数は2%にも満たないであろうと推定している。
同紙は、欧米諸国の諜報機関の情報を基に、シリアは世界最大の化学兵器保有国の一つかもしれないと報じている。フランスの諜報機関によれば、「数百トンのサリン」や「数百トンの硫黄マスタード」、「何十トンのVXガス」などの毒ガスを保有しているようだ。