「自分で決める」を支える社会へ‐日本財団が知的障害者の実態調査を実施 (2024/01/10 政治山)
障害者権利条約第12条「法律の前にひとしく認められる権利」の中で重要と位置づけられている意思決定支援※ですが、障害者は、人生の様々な場面で、自分の希望や願いを表現する機会をなかなか得られていません。
日々の生活における決定だけでなく、結婚や出産など自らの家族を形成する場面や家族との死別等、障害者自身のライフステージの変化に伴う意思決定が必要な場面において、障害者が家族、親族等による決定に従わざるを得ない状況があります。
判断能力が十分ではないとしても、地域生活でその人らしく生活していくためには、障害者の希望や願いを聞き取り、その人を取り巻く関係性を豊かにし、互いに支えあう地域社会を構築していくことが求められます。
本調査は、自らの意思の形成や意思決定そのものに困難が伴う知的障害者の置かれている現状と課題を明らかにし、今後のあるべき意思決定支援を提言しようとするもので、調査の結果をもとに、課題解決に向けた提言を行うことによって、知的障害者一人一人が自らの可能性を生かし、その人らしく暮らすことができるような意思決定の仕組みを構築することを目指して行われました。
※意思決定支援:すべての人に意思があるということを前提に、障害者が自分の人生において選択の機会があり、自分の人生を自分で決めることができるよう必要な支援を提供すること
【問:就職の際に本人の意見が聞かれたかどうか】
今回の調査結果を受けて、日本財団公益事業部国内事業開発チームの袖山啓子氏は、以下のように述べています。
「意思決定支援とは、認知症や障害のために判断能力が十分ではないとされる人が、自分の可能性を生かし、自分らしく暮らすことができるように、複数人の支援者が本人の希望や願いを聞き取り、実現していくプロセスにおいて提供される様々な支援をさす。日本財団はこれまでオーストラリア等の先進事例を日本に紹介する活動や、日本版の実践プログラムの開発等を支援してきた。2022年には、(一社)日本意思決定支援ネットワークと愛知県豊田市と3者協定を締結して実践を重ねている。
その中で、意思決定支援の本来の目的は、周囲の人が本人にとって良いと判断した正解を出すことではないため、支援の難しさを改めて感じている。今回の調査で、進路決定の際に本人の意見が聞かれ、自分で決めたと回答した人は約半数(21人)であった。日本財団は、今後も「良かれと思って」周囲が決めるのではなく、本人が意思決定できることを支えられる社会を目指していきたい」
調査結果の詳細は、以下よりご覧ください。
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2023/12/new_inf_20231201_02.pdf
■調査概要
方法:半構造化インタビュー
調査期間:2023年3月~5月
調査対象者:言語表現が可能な知的障害者
調査対象者数:1法人2地域の福祉サービス利用者40名
インタビュアー:田中恵美子(東京家政大学)、望月隆之(聖学院大学)
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