北朝鮮への国連制裁決議「あまり大きな影響ない」=専門家 株式会社フィスコ 2017年8月9日
国連安全保障理事会は5日、北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で可決した。しかし、専門家は、北朝鮮にとっては最大の防衛策であるミサイル・核開発計画を緩めることはなく、大きな影響をもたらさないと分析する。
今回の制裁決議では、北朝鮮の主要な貿易相手国であり唯一の同盟国である中国の役割が、制裁決議に賛成に回った意味は大きい。しかし、米国拠点の組織「韓国社会協会」トーマス・バーン(ThomasByrne)会長は、ブルームバーグの電話インタビューで、制裁は経済的な影響を与えることができるが、金正恩政権の戦略である核ミサイル開発には「あまり影響を与えない」と分析した。
北朝鮮は中国にとって、対米防衛において重要な「緩衝国」となる。北朝鮮の核ミサイル開発がすすむ背景には、中国支援があると考えられている。
韓国メディア・デイリーNKによると、2016年9月、中国企業の遼寧鴻祥実業発展有限公司(以下・鴻祥)の馬暁紅会長は、北朝鮮に核兵器とミサイル開発物品を密輸したとして、中国当局に逮捕された。馬会長は取り調べに対して、中国現地政府の官員が密輸に関与したと供述している。
また、米誌「ナショナル・インタレスト」5月23日によると、北朝鮮のミサイルは、中国衛星のナビを利用して発射している可能性があると指摘した。
新たな制裁 北朝鮮の外貨収入源3分1が削減
米国が提言し続けた北朝鮮の輸出禁止を含む制裁決議は5日、全会一致で可決した。これにより外貨収入源である輸出の総額3分1に相当する約10億ドル(約1000億円)が削減されると想定される。
対話重視を掲げる中国、ロシアも賛成に回っており、トランプ大統領は、ホワイトハウスの声明で、中露の協力に対して謝意を示した。
今回の制裁の内容は下記の通り。▼北朝鮮からの石炭、魚介類、鉄・鉄鉱石、鉛・鉛鉱石の輸入を禁止▼国連加盟国は新しい北朝鮮労働者を受け入れてはならない▼北朝鮮企業や個人との新たな合弁事業はできない▼既存の合弁事業に新たな投資はできない▼北朝鮮旅行の禁止▼北朝鮮に関連する資産を凍結する対象個人の条件の拡大▼加盟国は、制裁決議をどのように実施したかを90日以内に安全保障理事会に報告する。
このたびの国連会議で示されたデータとして、北朝鮮は2017年、輸出収入としてそれぞれ石炭400億円、鉄鉱251億円、鉛113億円、海産物295億円を得ているとした。また、国連人権調査官によると、外国で外貨を調達する北朝鮮人は2015年は5万人で、おもにロシアと中国。毎年、北朝鮮政府のために1200~2300億円を調達していると試算している。
日本は安倍総理大臣の談話を6日に発表。今回の国連安保理決議の採択は「国際社会が北朝鮮に対して最大限の圧力を強化すべきとの考えで一致したことによるものとして歓迎する」とした。
王毅・中国外相と李容浩・北朝鮮外相は6日、フィリピンのマニラで2~8日まで開催される第50回ASEAN外相会議の会期中に2国間の外相会談を行った。会談後の会見で、王毅外相は、北朝鮮情勢が「危機に限りなく近い臨界点に達している」と表現し、米韓にこれ以上、緊張を高める行動を抑制するよう求めると述べた。
ASEAN外相会議には、北朝鮮、米国、ロシア、中国、日本、韓国の外相ら政府関係者が出席。韓国外務省によると、同国の康京和外相は李容浩・北朝鮮外相と会話したが、韓国側の対話案に否定的な対応だったという。
(編集・甲斐天海)
【ニュース提供・大紀元】
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