特集「参議院議員選挙2013」
「第10回政治山調査」から読み解く経済と為替 (2013/7/8 株式会社フィスコ)
政治山が先頃実施した「第10回政治山調査『参議院議員選挙とネット選挙に関する意識調査』」では、安倍政権の評価を背景に自民が高い支持を集めていることや、ネット選挙で有権者は、ニュースメディアや選挙メディアのほか、候補者のホームページに信頼感を寄せていることが分かりました。ここでは、投資支援サービスや情報を提供する株式会社フィスコがこの「第10回政治山調査」をもとに、株式相場や円相場を分析しました。
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参院選の展望~民主党の苦戦を想定
アンケート調査結果によると、参議院議員選挙(以下、参院選)での投票予定政党は自民党が30.8%で第1位、第2位はみんなの党で7.2%、第3位は日本維新の会で5.2%、第4位は共産党で5.0%、第5位は民主党で3.8%と、第1位の自民党が第2位以下を大きく引き離す格好となった。
先日実施された東京都議会議員選挙(以下、都議選)においては、自民・公明政権与党の候補者が全員当選する結果に終わり、都議会第1党だった民主党は改選前の43議席から15議席と大幅に後退。共産党の17議席を下回り第4位となった。こうした直近の都議選の結果や今回実施のアンケート調査結果などを考慮すると、参院選では自民、公明政権与党が優勢、民主党は劣勢という構図が浮かび上がる。
7月1日時点で民主党の公認・推薦予定候補者は58名であるが、上記の構図を考慮すると候補者の多くが苦戦を強いられそうだ。民主党は、2010年に行われた参院選の比例代表では得票率31.5%で1845万票を獲得、自民党の12議席を上回る16議席を獲得した。ただ、今回の参院選での民主党への逆風を考えると、民主党は2010年の比例代表での獲得議席16議席を下回る可能性が高いと言えよう。
参院選の主要争点は景気対策、消費増税、原発問題、雇用対策の4点に
調査対象者の60%が20~40歳代と比較的若い有権者のなか、今回の参院選で重視するポイントとして景気対策が52.9%でトップとなった。こうした結果から、自民党支持と見られる有権者の多くは、景気対策を最も重視していると推測できる。そして、50%を超えた景気対策に続いたのは、消費増税で30.2%。これに原発関連、雇用対策などが続いた。各政党は景気対策や消費増税、原発関連などをそれぞれ政権公約に掲げていることから、有権者の関心と政党の思惑は合致していると言える。
アンケート結果から読み解く:株式相場
有権者が最も重視していると思われる景気対策については、安倍政権の景気対策を「高く評価する」「やや評価する」の割合が57%で50%を超えた。景気対策については「合格点」に届いていると言えそうだが、2012年11月半ばからの株高が評価されている面もありそうだ。株式市場は参院選での自民、公明政権与党の過半数超えをコンセンサスと見ているが、仮に自民党が単独過半数に迫る勢いと伝わった場合には、市場ではポジティブサプライズと捉えられ、参院選の結果が出る前に株価が上昇する可能性もある。
総合評価、景気対策については、過半数が評価する状況だが、3番目に高い原発問題は、評価しない(あまり評価しない、まったく評価しないを合算)が6割を占めている。これについては、原発再稼動に向けた反対票が上回っていることが考えられる。
一方で、原発輸出の動きは景気対策、雇用対策につながるだけに、再稼動問題のみに重点を置くと矛盾感が出てくる。海外ではアジアで原発電所の建設が急増し、今後20年間に約100基増える見通しであり、中国、インド、韓国で新設計画の9割を占めている。海外の需要を取り込んでこそ景気回復、雇用対策につながるため、再稼動に対する反対のみでの判断は日本の回復を遅らせる要因になるかもしれない。
なお、海外での受注獲得が増えるようだと、三菱重工業、東芝、日立製作所、日本製鋼所といった主要企業への支援材料になる。国内の再稼動の動きが強まるようだと、木村化工機、日新電機、トーヨーカネツなどに対象が広がりをみせることになる。
アンケート結果から読み解く:円相場
個人投資家は、自民、公明政権与党の大勝=株高=円安基調持続と判断している。自民、公明政権与党の勝利は確定的との見方だが、参院選投開票の翌日(7月22日)の日経平均株価の動向が円相場(ドル・円相場)の当面の動向を決定するといっても過言ではない。ただし、米国は9月にも量的緩和策の早期縮小に着手する可能性がある。株式相場が参議院選挙後に反落しても、ドル・円相場は円安方向に振れる可能性はある。自民党が単独過半数を獲得するなど自民、公明政権与党が圧勝し、日経平均株価が年初来高値を更新することになれば、ドルは年初来高値を上回り、年末までに110円を目指す展開となりそうだ。
- 株式会社フィスコは、投資支援サービス等を提供するプロフェッショナル集団です。2013年4月19日に、インターネットを使った選挙活動を解禁する公職選挙法の改正に伴う新たなコンテンツ提供を発表し、各政治家の発言要約や影響分析のコンテンツ提供を開始しており、その付加価値向上に取り組んでいます。