韓国紙、日本が「殺傷用」ミサイル開発と非難 中国紙とともに、平和主義逸脱を糾弾 ニュースフィア 2014年7月22日
政府は17日、国家安全保障会議(NSC)を開き、アメリカへのミサイル部品の輸出と、イギリスとミサイル技術の共同研究を行う方針を決定した。武器輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」に代わり、条件付きで武器輸出を可能とする「防衛装備移転三原則」が今年4月に定められて以来、初めての適用ケースとなる。
多くの海外メディアもこれを報じている。中でも韓国の中央日報は、安倍首相が“平和三原則”を破ったとして、批判的な論調を展開している。
【日本製部品は米国を経てカタールへ】
輸出が決まったのは、アメリカの地対空迎撃ミサイル「パトリオット2(PAC2)」の「シーカージャイロ」という部品だ。標的を追尾する赤外線シーカーに組み込まれ、ミサイルの姿勢を調整する役割を果たす。三菱重工が、PAC2を生産する米大手防衛装備メーカー、レイセオン社との契約に基づいてライセンス生産し、同社に輸出する。
APによると、アメリカはこれまでにPAC2をイスラエルを含む10ヶ国余りに輸出しており、三菱製の「シーカージャイロ」を搭載したPAC2も最終的にはカタールに輸出される見込みだという。
ロシアのRIAノーボスチ通信はこれについて、「日本政府は、新三原則が制限する移転先の軍事衝突の拡大には結びつかないと判断し、最終決定をNSCに委ねた」としている。「防衛装備移転三原則」では、第三国への移転について「適正管理が確保される場合に限る」などとしている。
【共同研究の狙いは空自戦力の底上げ】
同時に決まったミサイル技術の共同研究は、イギリス、ドイツ、フランスなどが共同開発している「ミーティア」空対空ミサイルの標的識別センサーに関するものだ。「ミーティア」はアメリカ製の同等品に比べて射程距離は長いが、命中制度に難があるとされる。それを改善するために日本の三菱電気の持つ技術に白羽の矢が立ったのだとという。
「ミーティア」は、自衛隊が導入を予定しているF-35戦闘機にも搭載可能となる見込み。防衛省の担当者はAPの取材に対し、共同研究が将来のF-35の戦力強化に結びつくことを期待していると述べたという。政府も共同研究の狙いについて、「日英の防衛協力関係の強化」と「自衛隊の戦力の底上げ」の2点を挙げている。
中国国営新華社通信は、日本はこの共同研究について、9月にイギリスで開催予定の日英外務・防衛相会談で最終合意を目指している、としている。
【韓国紙は「殺傷用ミサイル開発」と批判】
一方、韓国の中央日報は、共同研究を「殺傷用ミサイル開発」と呼んで糾弾する。毎日新聞の記事を引用する形で、「ミーティア」は殺傷能力の高い兵器であり、新三原則が明記している「平和国家としての歩みを引き続き堅持する」という理念から逸脱するというのが批判の根拠だ。
PAC2の搭載部品の輸出についても、「結局、日本の部品が米国を経てカタールにまで輸出されることになる」と、日本の軍事技術の移転が国際紛争を助長する危険性があると指摘。「殺傷用武器にまで手をのばす」のは、新三原則の基本理念を損なうと非難している。
新華社通信も、「一部の反対派の意見」と前置きしつつ、「新しいルール(防衛装備移転三原則)は最終的には国際紛争を助長し、日本の平和主義を傷つける」と批判している。