中国、日本人戦犯「供述書」45日連続公開 韓国紙だけ評価、「反日プロパガンダ」と欧米メディア報道 ニュースフィア 2014年7月9日
中国で重要資料を保管する中央档案館は、中国の軍事裁判で有罪判決を下された45人の日本人戦犯の「供述書」を、3日よりウェブサイト上で公開し始めた。7月3日から8月15日までの45日間、毎日1人分ずつが公開される。
欧米メディアは、中国の新たな「反日プロパガンダ」と報じているが、韓国紙は「信ぴょう性が高い」と評価している。
【供述書はどのようなもの?】
中国国営新華社通信によると、第2次世界大戦後、1950年から1956年にかけて、中国で日本人1109人が戦犯容疑者として勾留されていた。1956年に中国共産党政府の下での軍事法廷が開かれた。罪が軽いとされた1,017人は起訴猶予となり、その時点で釈放された。45人は重要戦犯として裁判を受け、有罪宣告により8年から20年の収監とされた。
今回公開されるのは、その45人が取り調べ中に書いた供述書である。いずれも自筆、もしくは本人の署名がある。そこには、「中国人民の殺害、拘留、奴隷化、毒殺、中国人女性の強姦、生物兵器の製造、毒ガスの放出、市街・村落の破壊、平和を好む住民の強制退去が含まれる」と、中央档案館の李明華副館長は語っている(中国国営CCTV)。また同氏は、「これらの文書は、中国人民に対して日本の帝国主義が行った悪逆非道の犯罪の動かしがたい証拠である」とも語っている(新華社)。
【中国側が語る公開の意図とは?】
公開期間のうち、7月7日は、日中全面戦争のきっかけとなった盧溝橋事件の起きた日であった。
前述の李副館長は、「日本には常に誰かしら、日本軍による戦争犯罪と侵略行為を否定しようとする者がいる。このことが中国人民の感情を傷つけている。そのためわれわれは、抗日戦争開始77周年記念日に、これらの資料を公開することを決めた。歴史の真実を証明する証拠としてだけでなく、現在における国民の指針として歴史を利用するためにも」と述べている(CCTV )。
背景には、安倍政権に対する非難がある。ロイターによると、「安倍内閣は発足以来、他国への侵略、植民地化政策の史実をごまかそうとして、善悪をあからさまに混同し、国民を誤った方向に導いている」と李副館長は語っている。
【海外メディアはどう見ている?】
ロイターは、集団的自衛権の行使を可能にする憲法の新解釈の閣議決定以降、中国の「反日プロパガンダ」は高まりを見せていると報じる。今回の資料公開は、その一環だ。日本に対して、非難合戦で優位に立とうとする中国政府の取り組みを示している、と説明する。
AFPも同様に、尖閣諸島をめぐる争議のさなか、過去の出来事を目立たせようとする中国政府の最新の努力、と報じる。中国は、日本の平和憲法の再解釈は、再軍国主義化への道を開く可能性のあるものだ、と主張している。戦時中の日本の軍国主義と、現在の日本の軍事力強化を関連づけ、世界にアピールすることに中国は熱心だ、と報じている。
ロイターは、宣伝キャンペーンで西欧諸国に訴えかけるための努力として、英語の翻訳(による本文の要約)が公開記事に伴うことを伝える。中国国営新華社通信でも、「中国の記録文書が日本の戦時の残虐行為を明らかにする」と題した英語の特設ページを設け、集中的に報じている。
【韓国の朝鮮日報は「信ぴょう性が高い」と評価】
日本批判で中国と軌を一にし、中国との距離を急速に縮めている韓国紙は、中国の資料公開を評価する。朝鮮日報は、「日帝の戦犯らが真実を記した可能性が高い」と語る。根拠は、中国共産党が戦犯容疑者らを人道的に遇したためだという。暴行や拷問が行われることはなく、その代わり「過去に犯した過ちを書き記し、反省するための時間を設けた」。強圧的、暴力的な雰囲気ではなかったので、わざわざ嘘をつく理由がなかった、と「北京の外交筋」が語っているという。
一方ロイターは、この裁判が開かれたときには、中国の法廷は既に共産党の管理下にあり、公正な裁判が行われる見通しは小さくなっていた、と報じる。これらの文書が強いられた自白に等しいものか、そうでないかははっきりしない、と疑問を呈している。
【国内問題の重要な記録文書は国民に触れさせない中国共産党】
中国は、自国民に対し、1937年の南京大虐殺のような、日本の歴史上の残虐行為を絶えず思い出させている。一方で中国共産党は、自分たちが引き起こした惨事について、記録したり、公表しようとする試みは、依然として一切禁止している、とロイターは述べる。例えば何千万人もの餓死を招き、惨たんたる結果に終わった、毛沢東の「大躍進」政策などだ。AFPも同様に報じ、他にも、1966年から1976年の文化大革命や、1989年の天安門での「殺戮」が挙げられている。
李副館長が、記者会見の席で、「大躍進」と文化大革命に関する文書を公開するつもりが政府にあるかと問われたとき、李副館長は狼狽したように見えた、とロイターは伝える。李副館長は直接の返答を避け、記録文書に関しては、法律と規則があると答えた。このやりとりは、ネット上の記者会見の筆記録からは削除された、と記事は語る。