児ポ法改正、なぜ漫画・アニメは対象外? “検閲”への強い抵抗と海外報道 ニュースフィア 2014年6月20日
18日、参議院で、改正児童ポルノ禁止法が可決された。現行の法律では、児童ポルノの製造、提供、提供目的の所持が禁止されている。今回の改正で、新たに、単純所持が禁止となった。性的好奇心を満たす目的で、自分の意思で児童ポルノを所持した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることとなる。漫画、アニメ、CG(ゲーム)は、規制対象とならなかった。
【ようやく禁止された、と海外メディア】
海外メディアはこぞって、日本が「ようやく」、他の先進国並みに、児童ポルノの所持を禁止した、と報じた。
AFPによると、先進7ヶ国(G7)中、所持が違法化されていなかったのは日本だけで、現在は70ヶ国以上で禁止され、処罰の対象となっているという。ロイターは、OECD加盟34ヶ国中、日本の違法化が最も遅く、これまでずっと、児童ポルノの購入者にとって“安息の地”と見なされてきた、と伝える。
CNN(記事1)は、アメリカ国務省の発表した『2013年国別人権報告書』の中で、「日本は依然として、児童ポルノの製造および取引の国際的な拠点であった」と述べられていることに触れる。CNN(記事2)は、警察庁の『平成25年版 警察白書』から、2012年、児童虐待の検挙件数、被害児童数、児童ポルノの検挙件数が、1999年に統計を取り始めて以来、過去最多となっていることを引用する。
今回、法改正に取り組んだ議員らは、所持を違法化することによって、児童ポルノの流通を食い止めることを期している、とロイターは報じる。児童ポルノの購入者を、警察が拘留し、尋問できるようになるので、その提供者、製造者、他の収集者にもたどり着ける可能性が出てくるからだ。
【漫画・アニメが規制されなかったことに注目】
海外メディアは、日本特有の漫画やアニメなどが、今回、規制対象から外れたことについて、大きく取り上げている。これらを規制すべきかどうか、日本国内でも、意見が分かれていたことを伝える。
CNN(記事1)によると、日本アニメーター・演出協会の監査役の桶田大介弁護士は、「アニメが免除されることは、当然」だと述べた。「この法律の趣旨は、子供たちを犯罪から守ることです」「この法律でアニメでのそういった表現を禁止したとしても、趣旨にかなうことはないでしょう」というのが理由だ。
CNN(記事2)は、漫画家の赤松健氏が、日本漫画家協会を代表して議員に働きかけていることを伝える。漫画のキャラクターは架空のもので、実在する児童のポルノとはまったく異なっており、誰も傷つかない、と氏は主張している。
AFPは、漫画家、言論の自由の擁護者、出版関係者から、強い抵抗があったと伝える。規制の対象とされた場合、表現の自由は侵され、アートに関して権力者が独断的に判断を下すことを許してしまう、というのだ。日本では、太平洋戦争に至る過程で、国が厳しい検閲制度を敷いていた過去があり、それが社会的記憶として強く残っている。そこで、反対者らは、政府に出版物の統制を許してしまう危険を警告する。
【規制賛成派の意見】
漫画・アニメ規制賛成派の、自民党の土屋正忠衆院議員は、「もちろん、言論の自由は大事だ。そして、わたしは漫画が大好きです。しかし、今ある漫画の中には、非常に堕落していて、守るに値しないものがあります」とロイターに語っている。CNN(記事2)に対しては、「このようなひどいものは、表現の自由で守られてはいないと、わたしは考えます」と語っている。
先述のアメリカの『人権報告書』は、「性描写が露骨なアニメ、マンガ、ゲームには暴力的な性的虐待や子どもの強姦を描写するものもあるが、日本の法律は、こうしたアニメ、マンガ、ゲームを自由に入手できるという問題に対処していない」と非難している。
搾取される児童を救済するNPO法人ライトハウスの藤原志帆子代表は、以前、児童に性的虐待が普通のことだと信じ込ませるために、漫画を利用していたケースに取り組んだことがある、とCNN(記事2)に語った。「ですから、小児性愛者は、アニメを持ち出して、『こうやって大人とするんだよ』と言うかもしれません」
【海外から、漫画・アニメを擁護する意見】
豪マッコーリー大学のアニメ・漫画の専門家であるミオ・ブライス博士は、「漫画すなわち性的だとか、漫画すなわち暴力だと、しょっちゅう思われています。しかし、それは漫画のほんの一部分でしかないのです…とても詩的なものもあるし、とても美しいものもあります」と、CNN(記事2)に語っている。
同記事には、読者から多数のコメントが寄せられているが、漫画・アニメを規制した場合の実効性を疑う意見が大半だった。
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