【海外】北朝鮮、拉致再調査へ 韓国紙“日米韓の足並みが乱れる”と懸念 ニュースフィア 2014年6月2日
日本と北朝鮮は29日、北朝鮮が日本人拉致被害者の再調査を行うことに合意した、と発表した。
両国は26日から3日間、スウェーデンのストックホルムで、核やミサイル開発の問題とともに拉致問題について話し合いを行っていた。
日本政府はこれまで、日本人17人が北朝鮮によって拉致されたと主張している。このうち、5人は2002年に日本へ帰国が実現した。しかし、北朝鮮は残る者のうち4人の入国は確認していないとし、8人は病死、あるいは、何らかの事故で死亡したと説明していた。
「やっとスタートラインに立った」
菅官房長官は、今回の合意について、「生存する拉致被害者の帰還など、確実な結果に繋がることを期待している」(ニューヨーク・タイムズ紙)と述べた。
菅氏によると、北朝鮮政府は、国内に拉致被害者調査のための委員会を、3週間以内をめどに設置すると約束した。委員会は拉致被害者だけでなく、1950年代に、朝鮮人の夫とともに北朝鮮に入国した日本人妻の消息についても調査することになるという。
同氏は、「少なくとも、スタートラインには立った。今までは、この条件に達することも難しかった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と話し合いの成果を強調している。
安倍首相は、「拉致問題の完全な解決は、安倍政権の最優先事項のひとつだ」「全ての被害者家族が再び我が子をその胸に抱きしめる日が来るまで、我々の任務は終わることはない」(ニューヨーク・タイムズ紙)と、任期中の解決を約束している。
なお北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、北朝鮮政府が「日本に関係する全ての問題の最終的な解決を図るため、包括的で徹底的な調査を行う意思を明らかにした」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と報じた。
北朝鮮の思惑
北朝鮮の態度の変化は、経済の立て直しと、中国への依存を減らしたいという金正恩第一書記の思惑があるのかもしれない、とニューヨーク・タイムズ紙はみている。
また日本にとっては、事態打開の可能性を得たことは、安倍首相の外交上の著しい手柄だ、と同紙は報じている。
北朝鮮は、核開発や、張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑などで、中国との関係が以前ほど良好ではないとみられる。日本も、中国と領土問題で対立。韓国とは、植民地時代の歴史認識で溝が深まっている。
立命館大学の中戸祐夫教授(国際関係)は、「現在の状況を考えたとき、両国接近には絶好の時機だろう」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と述べている。
菅氏は、北朝鮮が「信頼に値する国か」の質問に答えて「日本政府は、問題解決へのひとつひとつの段階について内容を見極めるつもりだ」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)としている。
一方、朝鮮中央通信社は、拉致被害者の生存が確認されれば、北朝鮮政府は被害者を日本へ帰国させると報じ、代わりに日本は、「不名誉な過去を精算し、長年の問題の解決、関係の正常化を図る決意を明確にした」(ガーディアン紙)としている。
日米韓の足並みが乱れるのではという懸念
菅氏は、日本は拉致問題に関して、北朝鮮に課していた制裁を解除するだろうと述べた。2国間の旅行、現金の送金、北朝鮮から日本への船舶の入国などを問題解決の進展に合わせて認める方針だ。制裁の解除は、国連安全保障理事会の制裁決議の内容に含まれないものだけだと説明している。
また、このことが、アメリカ・韓国と足並みを揃えてきた金正恩政権への対抗姿勢を崩すとの見方は否定した。
しかし、韓国の中央日報は、安倍政権のこうした「独自の対北朝鮮路線」は、日米韓の安保共助にも影響を及ぼすだろう、と懸念している。日本が送金などで対北朝鮮制裁を解けば、戦列に1つ2つ穴を開けるようなものだ、と批判している。