【社会】“ハエだらけの薬工場”…第一三共が印子会社を売却 お粗末な買い物に疑問の声も ニュースフィア 2014年4月9日
7日、第一三共は、子会社であるインド最大の製薬会社、ランバクシー・ラボラトリーズを、やはりインドのサン・ファーマシューティカル・インダストリーズに売却すると発表した。
ランバクシー社は、後発(ジェネリック)医薬品を主力とするメーカーで、後発薬界への進出を狙った第一三共が2008年、46億ドルで63.4%の株式を取得していた。
しかし、悪質な製造工程により、米国食品医薬品局(FDA)から罰金や輸入禁止を受けるなど、実態はお荷物であったようだ。買収以来、第一三共の株価は40%下がっていた。
この会社を買ってきたのは誰だ! サジを投げた第一三共
サンファーマ社は他の株主分も含め、32億ドル相当とされる全株(+推定負債8億ドル)を取得する。合併完了には、規制当局の承認を待って9ヶ月かかる予定だという。旧株主は1株と引き換えに、新会社の0.8株を取得する。ランバクシー社の2013年の売上は18億ドルで、合併後の新会社は年間売上42億ドル、65ヶ国に展開する世界第5位の後発薬メーカーとなる。
第一三共は新会社の約9%(単独では現在サンファーマ社を支配するディリップ・サングビ氏に次ぐ)と、取締役1名を派遣する権利を得ることになる。それでも第一三共としては、ランバクシー社を立て直せず、大幅な値引き転売を強いられた形だ。
第一三共の中山譲治CEOは、最善を尽くしてきたと主張する。ただ同社は、ランバクシー社の元オーナー兄弟を、買収時の虚偽説明で非難していた。
また日経新聞は、以前買収を主導した旧三共製薬系と、今回売却を主導した旧第一製薬系、社内両派の勢力変化も背景にあったと指摘している。
【ハエもガラスも気にせず造りまくれ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、パンジャブ州トアンサのランバクシー社成分工場が、いかに劣悪な状態であるかを告発した。
2012年には同工場でのガラス片混入により、抗コレステロール薬48万ボトルの回収騒ぎが発生していた。今年1月のFDA報告書では、原料や医薬品有効成分の試験結果改ざんが認定された。同工場は合格するまで再検査を繰り返し、失敗した試験の証拠は削除していたという。工場の研究室は窓が閉まらず、ある部屋はハエが「多すぎて数えきれない」状態であったという。
さらに従業員らの証言によると、数ヶ月ごとに3日間の安全コースを受けただけで薬の製造方法さえ教えられていない、一時契約社員が製造のほとんどを担っていた。彼らは「たとえ手抜きになっても生産継続を保つよう言われた」。元保守技術者は空白の書面に署名し、後から設備点検を実施したかのような内容が書き込まれた。
同社は公式には「ランバクシーはシステムやプロセスを改善し続けるものであり、患者様、処方者様、並びに他のすべての利害関係者様が弊社に期待される高い基準を支えるべく、なおも全力を傾けております」と声明している。だがこの件についてのコメントは拒否されているという。
それでもサングビなら何とかしてくれる
しかし各紙は、サングビ氏とサンファーマ社の立て直し手腕には期待大である模様だ。ウォール紙も、サンファーマ社は「現在および過去のFDA当局者によると、品質には定評がある」と書いている。実はサンファーマ社自身、3月にグジャラート州の成分工場がFDAから輸入禁止を受けている。ただ、医療安全問題を受けて厳格化されるFDAの検査に概ね耐え続けていることから、むしろ問題の改善にあたって適任と見られているようだ。