【社会】大画面iPhone開発の布石? アップル、ルネサス子会社買収交渉のねらいとは ニュースフィア 2014年4月4日
アップルが、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの子会社である『ルネサスエスピードライバ』の買収交渉をしていることが2日、日経新聞により報じられた。この件について海外各紙も大きく取りあげている。
交渉の背景は
アップルが買収を検討しているルネサスエスピードライバ(以下RSP)は、液晶用の半導体を開発、販売する会社である。RSPの株式は現在、ルネサスが55%、シャープが25%、製造委託先である台湾の半導体メーカー・パワーチップが20%それぞれ保有している。ブルームバーグによると、アップルは、ルネサスの保有分全株を取得する方向で動いており、取得額は500億円規模であるという。
この報道を受けルネサスの株価は2日、6%上昇の831円を記録。これは2011年3月以来の高値となる急騰、と同誌は伝えている。
ロイターによると、ルネサスが子会社のRSP売却を検討する背景に、主力である自動車産業向けの半導体事業に絞り込む方針があるという。そのため同社は液晶用半導体事業からは撤退する方向で動いており、RSPのルネサス保有分55%の売却先を探しているもよう、という情報が関係者筋から得られたとのことである。
同メディアによると、ルネサスはRSPの売却先として複数社検討しているらしいが、この件について広報はコメントを控えているとのことである。「もしもRSPが他社の手に渡ったら、アップルにとっては喜ばしくないことだろう」とマッコーリーキャピタル証券のアナリスト、ダミアン・トン氏は指摘している。
さらなるハイエンドを求めて
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、アップルは、iPhoneの未来型に「より大きな画面」を見据えており、その開発に向けた動きとしてルネサスの買収を検討しているという。
モバイル端末の画面が「より大きく、より鮮明に」なるにつれ、各メーカーはバッテリー消費の少ないディスプレイ開発への苦戦を余儀なくされた、と同紙は伝える。そうでないと、すぐ電池が切れるか、もしくは長持ちさせるために端末を分厚くするかのどちらかになってしまう。
「特にiPhoneに関して言えば、その”特別感”を維持するためには、とにかく技術を常に最先端へと押し出す必用があり、ディスプレイはとりわけ肝要と言えるだろう」とサンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、マーク・ニューマン氏は同紙に語っている。
混戦のモバイル市場
かつてモバイル業界はアップルの独壇場であった。しかし昨今、アンドロイドOSの躍進とサムスンの台頭によりその立場は危うくなっている。
アップル最大のライバルとなったサムスンは、主要な部品の多くを自社内で製造しており、特に最新技術を用いた有機ELディスプレイについては「多メーカーの追随を許さない」と自信を示す(ロイター)。
一方アップルは、現在にいたるまで主要部品の多くを外部委託に頼っている。つまりはコスト、制作期間、仕様、商品情報などのすべてについて、サムスンより不利な状態である、と同メディアは分析する。
敵はサムスンのような大企業だけではない。次々と現れる低価格の新興勢力も脅威だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は述べる。例えば、あまり知られていないが中国のOppo社は、すでにiPhone5Sより高解像度の液晶画面を誇る商品を発売しているという。
iOSによるアップルの端末は、アンドロイド端末とは別の道を歩むほかない。だからこそアップルは「高価格の理由」が納得できるような商品を世に出し続ける必用がある、と同紙は指摘している。