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【海外】中国、次世代原発の開発推進 「安全でクリーン」な資源を利用も、“技術者には悪夢”の声  NewSphere(ニュースフィア) 2014年3月24日

関連ワード : 原発 福島 

 福島第一原発の事故以降、世界的に原発への懸念が高まる中、中国は原発を推進する方策を取っているという。

 中国が開発中の原発は、「トリウム」というウランに代わる物質を燃料とし、ウランを原料とする従来型の原発とは異なるものである。中国科学院により設立された研究所ではこのトリウムを燃料とする溶融塩原子炉の開発が進められている。

ウランに代わる未来の原発

 デイリー・テレグラフ紙によると、中国には2万年分の電力をまかなえる量のトリウムが埋蔵されているという。

 また、このトリウム原発は、安全、安価、かつクリーンであることからも注目されている、と同紙は伝える。ウランは核兵器の材料となるプルトニウムを生成するが、トリウムにはそれがない。また従来の原発よりも、ずっと小規模の設備で事足る。またシェールガスなど他の燃料と違い、ほとんどCO2も排出しない。レアアース採掘のように危険な放射性廃棄物も伴わないとのことである。

 トリウムについては、まだ研究段階で、不確かな面も多く存在する。しかし少なくともウランよりは安全であることが福島以降失われた原発の信頼回復に役立つだろう、と開発に携わる李教授は語っている。

とにかく先を急ぎたい中国政府

 このプロジェクトに携わる研究員達は、最初の新型原発完成まで25年とされていた当初の目標を、10年に短縮するよう政府に命じられた、とガーディアン紙は報じている。

 李教授は、政府が開発を急ぐ理由を「かつては”燃料資源対策”が原発推進の理由だったが、今は”空気汚染対策”のほうが本音のようだ」とサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙に語っている。石炭が燃料の大部分を占め、空気汚染が壊滅的な中国にとっては、夢の次世代資源ということらしい。

「政府は、石炭から脱出する唯一の希望としてトリウム型原発に賭けており、そのことが研究員達に膨大なプレッシャーとなっている」と李教授は続ける。またデイリー・テレグラフ紙では、中国原子能科学研究院の古教授がこのプロジェクトを「科学者にとっては夢だが技術者にとっては悪夢」と評し、次世代原発に対する過度な期待への懸念を表している。

ところが簡単には進まない事情

 しかし現実には困難も多い。ニュースサイト『クオーツ』は、中国の原発開発が遅々として進まない理由として、コスト、技術的困難、世論の反対の3つを挙げている。

 まずコストについて。同メディアによると、原発の建設には少なくとも6年はかかる。しかし、風力や水力ならば約2年、早いものでは数ヶ月で稼働可能なものもあり、電力供給が急を要する中国では短期間かつ安価で作れる設備の方が好まれる傾向があるという。

 次に技術的困難がある。あるいは現在建設中の従来型原発が今後6年で稼働可能になったところで、電力供給量は45GW(ギガワット)にとどまり、目標とする58 GWには及ばない。その上、開発中のトリウム型原発は、まだまだ技術的問題が山積みで解決には時間がかかる、という専門家の分析を伝えている。

 更には世論の問題が立ちはだかる。福島の原発事故以降、やはり中国でも原発の安全性を疑う声があがっている。現在建設中の原発施設も、反対運動から着工が6ヶ月遅れた、とのことである。

 そのような背景から、「トリウムによる新型原発の開発プロジェクトも、やはり同様の反対運動に直面するだろう」と研究者達はサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙に語っている。

提供:NewSphere(ニュースフィア)

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