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【社会】佐村河内氏問題、なぜ起きた? 海外紙が指摘する日本の特性とは  NewSphere(ニュースフィア) 2014年2月10日

 聴覚障害の作曲家として知られる佐村河内守氏 (50)がゴーストライターの存在を告白した問題で、海外メディアからも注目が集まっている。

 問題の発覚は、佐村河内氏が5日、創作活動に他の作曲家を雇っていたことを弁護士を通し文書にて公表したことから始まる。さらに翌6日には、ゴーストライターとして雇われていた新垣隆氏(43)本人が会見を開き、事態はさらなる展開を生んだ。

 新垣氏によると、代表作「交響曲第1番 HIROSHIMA」を含む20以上の曲を同氏に代わって作曲し、その関係は18年前から続いてきた、とのことである。さらに世界を震撼させたのが、会見で新垣氏が作曲の代行だけでなく、佐村河内氏の聴覚障害そのものが虚偽である可能性について告白したことだ。このことがスキャンダルに拍車をかけ、海外メディアも大きく報じている。

米メディア”偽りのベートーベン”

 90分間にわたる会見で新垣氏は、佐村河内氏を「1度も聴覚障害者だと思ったことはない」と発言。同氏によれば、佐村河内氏との打ち合わせでは、新垣氏の作った曲を聴いてそれに対するコメントをすることもあったとのことである。会話も、普通にできていたそうだ。

 おそらく障害は公の場でのパフォーマンスだろうと語る新垣氏の言葉を、ニューヨーク・タイムス紙は「ベートーベンの仮面を借りるための虚言」と表現した。

なぜ、今このタイミングで?

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、新垣氏は、長年自身の役割に倫理的な疑問を抱いていなかった。しかし、津波被害者や障害者の希望となる存在として佐村河内氏が持ち上げられたNHKのドキュメンタリーを見て、考えが変わったという。そこで佐村河内氏に公表を促したが、自殺をほのめかされできなかったと語る。

 今回、ソチ冬期オリンピックで男子フィギュアスケートの高橋大輔選手が同氏の曲を使うことを知り、行動に移したとのことである。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、「高橋大輔選手が我々の共犯になるかもしれないことが耐えられなかった」ため、告発したそうだ。

 同紙はこれを「高橋大輔選手にとって最悪のタイミング」と報じ、メダル候補への影響を懸念。高橋選手の関係者は「曲を今から変えることは不可能。パフォーマンスに影響しないことを望む」と発表していると伝えた。

両氏の動機は? 各紙の分析

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、新垣氏の動機は明らかではないとしつつも、同氏が18年にわたるゴーストライター活動で受けたトータルの報酬「700万円」について言及した。フィナンシャル・タイムス紙はこの額を「ささやかにも700万円」と表現し、報酬への不満が告発につながった可能性にふれた。しかし新垣氏は会見では金銭問題のもつれを否定しており、報酬にも不満はなかったと発表している。

 またニューヨーク・タイムス紙は、佐村河内氏がはたらいた一連の欺瞞について、日本がクラシック音楽を高く評価する国であることが動機につながったと分析する。スズキ・メソード(世界で展開するピアノやヴァイオリンの指導法)の発祥地で、小沢征爾のような国際的スーパースターを生み、東京だけでも10のプロ・オーケストラがある日本は、世界でもトップクラスの「クラシック音楽を愛する国」。そのことが佐村河内氏を名声に向けた虚飾の人生へと走らせたのでは、との見方を示した。

提供:NewSphere(ニュースフィア)