【経済】アベノミクス効果でIPOブーム? それでも海外投資家が不安視する理由とは NewSphere(ニュースフィア) 2013年11月21日
日本企業株の新規公開(IPO)が今年、2007年以来の高水準に達する見込みだと、ブルームバーグが報じている。実際それらの銘柄はことごとく初日に急騰、平均131%の公開日伸びを示してもいる。しかしこのIPOブームは、日本経済の好調を意味するのであろうか。
絶対もうかる新規株
野村ホールディングスの予測によると、今年約60社がIPOを行ったか、年末までにそうする予定であり、2007年の121 IPO以来最大だ。さらに、来年にも約80社が公開予定だという。IPO数は2000年には203に達していたが、景気後退や2006年のライブドア事件に伴って減少していた。
ブルームバーグによると新規株は特に個人投資家に人気で、11月8日までの週には、東証マザーズ取引額の71%を国内の個人投資家が占めていた。今年公開済み銘柄の約80%は公募価格以上で取引されている。確実に儲けが期待できるだけに新規株の応募競争は熾烈で、「宝くじに当たるようなもの」だという。
株バブルに見え隠れする懸念
しかしIPO市場の過熱を懸念する声もある。例えばシステム情報株式会社は19日の終値が2729円、先月の上場直後には6060円に達していたが、2014年9月期の1株当たり予想利益は71.35円に過ぎない。ブームは12月にも終わる可能性があると考える専門家もいる。
一方、ブームがまだしばらく続くと考える専門家も、その理由は「現在の停滞した市場で投資先企業に困っている投資家が、簡単な収益機会としてIPOに殺到している」というものだ。東証株価指数TOPIX銘柄の平均取引量は、5月の46億株から10月は24億株に減少している。
また、ブルームバーグはIPO数と株式市況は相関が薄いとも指摘している。2000年以来、日本のIPO数が60を超える年は8年あったが、次の12ヶ月でTOPIXが落ちたことが4回、上がったことが4回であった。
5月がピークだった日本市場
IPOが過熱する一方で、フィナンシャル・タイムズ紙は、日本の構造改革の遅れから、海外投資家が将来を不安視し始めていると報じているた。10月には、7月以来初めて、日本でのエクスポージャーが削減され始めた(ハイリスクな金融資産から撤退し始めた)という。TOPIXは9月までの4四半期で62%の急騰とは言え、専門家が「アベノミクスの通知表」とするTS倍率(TOPIX÷S&P 500)は最近、下落している。
同紙は「1年前に始まった回復は、米国の(量的緩和)縮小懸念が世界市場を揺さぶっていた5月下旬のピークを再現するには至っていない」と評している。2020年オリンピック開催決定も、財政規律のための消費税増税決断も効果はなく、アナリストらは日銀の追加緩和発表など「何かが起こってくれないといけない」と考えているという。