【政治】世界が失望…日本の温暖化対策が後退 原発停止以外の理由とは NewSphere(ニュースフィア) 2013年11月19日
日本政府は15日、温室効果ガスの排出量を「2020年までに2005年比で3.8%減」とする新たな目標を決定した。また、発展途上国の温暖化対策支援として、2015年までに官民あわせて約160億ドルを拠出する計画も明らかにした。
現在ポーランド・ワルシャワで開催中の気候変動枠組み条約の第19回締約国会議「COP19」で20日、石原伸晃環境相が正式に発表する。
新目標は、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の稼働をゼロと仮定して策定。安倍首相は「あくまで現時点での目標」と述べ、新目標が暫定的なものとの考えを示した。
先進国の中でも最も野心的な目標を抜本的に見直し
前政権の民主党は「2020年までに1990年比で二酸化炭素の排出量を25%削減する」という野心的な目標を掲げていた。
フィナンシャル・タイムズ紙は、1997年に京都で開催されたCOP3において「京都議定書」合意でリーダーシップをとった日本にとって厳しいものだと報じた。京都議定書で掲げた「2012年までに1990年比で6%減」の目標は既に期限が切れている。今回の目標は、1990年より排出量は3.1%増加することになる。
福島事故以来の原発停止だけが目標後退の原因ではない
福島事故以前、日本は電力の約30%を原発に依存していた。事故をきっかけに国内の大多数の原発が稼働を停止する中、輸入化石燃料の使用に頼らざるを得ない状況となっている。
日本の水力発電を除く再生可能エネルギーは3%以下で、導入が遅れていたとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘。さらに、福島事故以前も排出目標達成に苦しんでおり、炭素税や国内排出量取引制度などの政策措置も失敗していたと報じた。
COP19に参加している世界の代表団は日本の発表に失望
COP19のリーダー、クリスティアナ・フィゲレス条約事務局長は「日本の発表に失望した」とコメント。中国代表団の蘇偉副団長は「失望を言いあらわす言葉がない」と新華社通信に語ったという。
国際環境NGO「グリーンピース」のマーティン・カイザー氏は「日本は原発を完全に停止しても、劇的に排出量を削減できる」と語ったという。グリーンピース独自の計算では、日本がより積極的に再生可能エネルギーを追求すれば、原発に頼らずとも排出量を20%以上削減できるとのことだ。
日本だけではない課題
一方、日本の目標後退のほかにも、COP19には課題があるとニューヨーク・タイムズ紙は指摘した。
先週オーストラリア政府は、CO2廃出に課税する炭素税を廃止するため、新たな法律を導入した。また、2009年にデンマーク・コペンハーゲンで開催されたCOP15ではアメリカと中国が小幅な削減目標を提示し、険悪な状況で閉幕。以来、気候交渉はほぼ進展していない。