【龍馬プロジェクトリレーコラム/若手政治家が考える「まちの課題を解決するために」】
第41回 故郷をあきらめない!~新しい田川を創造する~ (2014/7/11 金子和智/龍馬プロジェクト 九州・沖縄ブロック所属)
「地方から日本を変える」を合言葉に、日本全国の国会議員や地方議員などが超党派で集まった『龍馬プロジェクト』。政治山では、龍馬プロジェクトの思いに賛同した若手議員によるリレーコラムを連載しています。「まちの課題を解決するために」の第5回は、福岡県田川市議会議員で龍馬プロジェクト九州・沖縄ブロック所属の金子和智氏による「第41回 故郷をあきらめない!~新しい田川を創造する~」をお届けします。
我が故郷、田川市
皆さんは福岡県田川市をご存知ですか。田川市は福岡県のほぼ中央に位置し、面積54.52平方キロメートル、人口5万人の小さな市です。かつては「炭都」と呼ばれ、最盛期には国内の石炭産出量の半分近くを占め、製鉄のための石炭供給基地、近代日本の母なる地として繁栄した筑豊地域の中心都市の1つです。
炭鉱には全国から多くの人が集まり、人口が10万人を超えた時期もありましたが、国のエネルギー政策転換の影響を受け、昭和30年代に入り炭鉱の閉山が相次ぎ、失業者が溢れ、人口が激減するなど大変厳しい状況に陥りました。そして現在でも、その後遺症である高い生活保護率(2014年1月現在:61.5‰)や失業率(2010年:12.8%)などと闘っているまちです。
政治への想い
そんな田川市で生まれ育った私は、高校卒業後すぐに田川市役所に入所しました。田川を1週間以上離れたことのない私は、外から客観的に田川市を見ることもなく、その厳しい現状に目を向けることもなく、毎日の仕事に追われながら過ごしてきました。
そんな私に大きな転機が訪れます。市役所勤めも既に10年以上経過した2002年のことでした。市役所の仲間たちと政策に関する自主研究を始めたこと、そして生活保護を担当する課に異動になったことで私の人生は大きく変わっていくのです。
仲間と政策の自主研究を行うことで、他自治体のグループとの交流が徐々に活発になっていきました。そういった中、感じ始めたこと。それは、県内、県外問わず田川に対して良いイメージを持っていない人が大変多いということです。特に田川に一度も来たことのない人までが、「炭鉱=荒っぽい」というイメージだけで田川のことを良く語らないことに衝撃を受けました。
また生活保護の現場に立ち、閉山から50年以上経過してもいまだにその影響から立ち直れていないという現実に大きなショックを受けました。炭鉱に替わる新たな働く場所が創り出せていない、3世代にわたり生活保護受給が続く家族、貧困からくる学力の低さ、そして働こうという意志のない人があまりにも多いことに。
これらの出来事を通じて、半世紀が過ぎ去っても、閉山の後遺症から脱することができなかったこれまでの政治の無力さに憤りを覚えるとともに、ならば自らがやらなければならないという思いを強く持ちました。これが、私が政治家を目指した最も大きな理由です。
愛する故郷を全国に
その後、市役所を退職。2011年の市議会議員選挙にて当選、政治家としての活動を開始した私が現在、最も注力しているのがシティプロモーションによる田川のイメージアップと郷土愛の醸成です。
田川にはたくさんの良いところ、地域資源があります。ユネスコの世界記憶遺産に国内で初めて登録された「山本作兵衛氏の炭坑記録画」や国登録有形文化財の「二本煙突」と「伊田竪坑櫓」、田川の人ならば誰でも踊れる田川市発祥の「炭坑節」などの炭鉱が育んだ数々の宝。炭鉱時代から食べられているご当地グルメ「田川ホルモン鍋」、田川市が発祥で今も市内で製造されている「チロルチョコ」など、他にもたくさんの素晴らしい宝が田川にはあります。しかしこういった宝もしっかりその魅力や歴史を情報発信しなければ、それこそ宝の持ち腐れとなり、田川のイメージアップを図ることはできません。
そこで、まず私は議会において、シティプロモーションによる地域内外への情報発信をしっかりと予算をつけて行い、そのことで市民の郷土愛を育むべきとの指摘をさせていただきました。その結果、市長にもその必要性を認識していただき、内容、金額とも十分ではありませんが、2012年からシティプロモーション活動が予算措置され、事業化されました。今後も近隣の福岡・北九州両都市圏におけるプロモーション活動の回数増や質の向上、SNS等による情報発信の強化などを求めていきたいと考えています。
個人的にもご当地グルメ「田川ホルモン鍋」を活用したまちおこし団体「田川ホルモン喰楽歩(くらぶ)」を仲間と共に立上げ、田川のPR活動に取り組んでいます。過去2回参加した「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」では10位以内に入賞。昨年の「九州B-1グランプリ」では、最高賞を受賞するなど、田川を全国にPRしているボランティア団体として市民の皆さんから高く評価していただいています。
今後は、シティプロモーションを軸に、田川のイメージアップを図りながら、幅広い世代の郷土愛を育んでいきたいと考えています。また他地域と連携しながら互いの地域、資源をPRし合う「Local to Local」を更に強化、東京への一極集中を打破し、地方からこの日本を元気にしていきます。
- 著者プロフィール
金子 和智(かねこ かずとも)
1970年9月3日、福岡県田川市生まれ。福岡県立田川東高等学校(現 東鷹高等学校)卒業後、田川市役所に入所。2010年に田川市役所退職、2011年から田川市議会議員に。
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