第91回 作りっ放しにしないために~議会の役割とは?  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第91回 作りっ放しにしないために~議会の役割とは? (2014/6/25 元山形県酒田市議会議員 佐藤丈晴氏/元LM推進地方議員連盟共同代表)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第91回は、元山形県酒田市議会議員の佐藤丈晴氏による「作りっ放しにしないために~議会の役割とは」をお届けします。

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 議会の役割とは何か?

 市議会議員としてその議席を預からせていただいていた約9年半、いつも自問自答していた問いの1つです。地方議員は、市民にも近く、現場をよく知る存在として、市民の期待も大きいのですが、ともすれば、そんな存在だけに勘違いし、名誉職的な振る舞いをしてしまうことも散見されます。24時間、365日、まさに身を粉にして働くことが、選挙で選ばれる者の“宿命”とも言うべきものなのかもしれません。

 私は、そんな思いから、出張などで地元にいないとき以外はほぼ毎日、朝8時に市役所に出向き、議員の出退勤ランプを点灯し、市民の困り事は私が引き受けますよという証しを市民に示させていただきました。たまには、ランプがついているのを見た市民や部課長が、控室を訪ねてくれることもあり、議会を拠点にフル稼働した毎日を過ごすことができました。「そんなに肩ひじ張らずとも」と言われそうですが、少なくとも、私がその役割を預からせていただいた議員の報酬は、平均的な市民の所得水準よりも2~3倍程度あり、そのくらいのことをして当たり前と感じたものです。

 さて、そんな日々を過ごす中で、私はあることに気づきました。それは、「作りっ放し」であるということです。何が「作りっ放し」か、というと、市長提案の条例であれ、議員発議条例であれ、制定された条例に対する取り組みに意識が低いのではということです。地方自治法第96条及びその第一項には、

普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設け又は改廃すること。

とあり、議会の権限として、条例を制定することと改廃することを規定しています。議決する責任ばかりがクローズアップされがちですが、議決した後の責任もかなり重大なのではないでしょうか。

 条例は議決した後、執行権者にその運用の主体が移ります。つまり、行政が条例に基づいた運用を行うわけです。議会は、その運用が条例に基づいてきちんと行われているかどうかをチェックする役割があると思います。これは、何も地方議会に限ったことではなく、国会にも言えることで、みな、作ることには一生懸命になるのですが、制定した法律や条例をモニタリング・評価することには無頓着と言っても良いくらい野放し状態です。市議時代に、制定過程で地方議員連盟を設立し、制定に関わった「海岸漂着物処理推進法」にも、見直し条項が設けられており、附則の2に、

2 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、海岸漂着物等の状況その他この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

とあります。海岸漂着物の問題は、この法律で完璧に捕捉できているわけでもなく、附則でうたっている「必要あると認める」事項が現にある中で、何ら見直しに着手されていない状態です。

 これからの時代、争訟法務の重要性も増してくると思われる中で、自治体にとって条例のモニタリング・評価という視点は欠かせないものと考えます。特に、地方議会においては、その役割が増してくると思います。議会として、きちんとチェックするために、ぜひとも、条例体系を整理してみるとか、政策法務の研修を定期的に行うなどのアクションを期待したいものです。

著者プロフィール
佐藤丈晴氏 佐藤 丈晴(さとう たけはる):元酒田市議会議員
1967年4月22日生まれ。山形大学理学部卒業後、アイジー工業(株)入社。その後、実家の電気工事会社に転職し、中間支援NPOの事務局長を経て、平成15年酒田市議会初当選(以降連続3期、約9年半)。平成24年衆議院議員選挙出馬、落選。現在、杉田水脈衆議院議員公設秘書。
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佐藤丈晴氏プロフィール
LM推進地議連の連載コラム
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関連リンク
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