【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第65回 議員にしかできないこと、存在意義ではなく存在価値を示そう! (2013/12/18 桐生市議会議員 井田泰彦氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第65回は、群馬県桐生市議会議員の井田泰彦氏による『議員にしかできないこと、存在意義ではなく存在価値を示そう!』をお届けします。
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桐生市にいらっしゃいませ!
群馬県桐生市は東京から鉄道でも自動車でも1時間半ほどの距離にある山紫水明の地であり、織物で盛栄を極めたまちです。山々と市街地が近く、絶好のハイキングコースがあるのでぜひお越しください。名物のひもかわうどんとソースかつ丼がお待ちしております!
桐生市は、平成の大合併で旧新里村と黒保根村を吸収合併しました。私はこの旧新里村出身ですので、どちらかというと客観的に桐生市を分析していると思います。合併時の紆余(うよ)曲折で新里、黒保根と桐生地区の間にはみどり市がある飛び地合併となってしまいました。地域の一体感はもとより“規模の経済”が発揮できておりません。みどり市に限らず、広域連携をしていく上で大きな障害となっています。
現状と課題
現在の人口は12万人ほど。1年でなんと約1400人減少を続けています。市街地では、もともと可住地面積が少なく、インフラは整備されているものの「新たに家をつくる土地がない、地価が周辺よりも高い、職場も減った」という理由で周辺地域に人口が流出しています。高齢化率、空き家率も高く、明確な計画と早急な対策が必要な状況です。
もっとも、新里地区を含む周辺地域では人口は増えている場所もありますが、スプロール化、いわゆる無秩序、無計画に発展している感もあります。都市計画と農地、住宅政策を人口減少社会の中で縦割りではなく一体的に見直さなければなりません。財政も絡めて。地域らしさを出しながら、市という共同体としてのメリットを最大限得るために。
そこで私は抜本的な行政の体質改善に向けて、「しごとの見直し」、つまり行政評価をキッカケに「一点突破、全面展開」すべく、私が提案し、施行中の条例を礎に取り組んでいます。条例化したおかげで(私的には物足りない部分もありますが)一応前に進んでいます。次項では、参考になるか分かりませんが「桐生市行政評価条例」施行までの取り組みをご紹介させていただきます。
行政評価条例の提案~議員の存在価値は?~
それぞれの地域らしさあふれる自治体経営をしていかなければならない時が、とっくに来ています。市民一人ひとりがすべきこと、地域や公共ですべきこと、それぞれのあり方を創りなおす 必要があります。私はそのキッカケとして、市の行政評価制度構築に尽力しています。
地方議会は強い権能を持っているのに、上手に使いこなせているでしょうか。首長が動かない場合、イノベーションを起こすことは議会にもできます。議会は政策を創造し、行政を引っ張る。それが地域主権時代の議会の役割だと私は思います。
ただ、強い権能を持つのは議会であり、個々の議員ではありません。例えば拘束力ある条例の制定は過半数の賛成が必要です。パフォーマンスは別として、本気で政策条例を市政に反映させたい場合、他の議員を説得し、納得してもらう地道な努力が必要になります。
議員の「政策立案能力」は間違いなく必須ですが、同時に「政策実現能力」も重要です。良い政策なら即OKされるかというと、そうはいかないのが現在の議会の実情でしょう。私は2010年6月に「桐生市行政評価条例」を提案し、可決していただきました。参考になるか分かりませんが、議員提案実現までの取り組みを紹介します。
まず、(1)継続した質問。当選後から3年間ほぼ毎議会、一般質問で改善提案をしました。これによって当局と二人三脚で行政評価制度も成長し、ほかの議員に「行政評価の井田」と印象付けられたかなと思います。
(2)問題意識の共有。更にほかの議員の理解を深めてもらうために、総務常任委員会の視察を活用しました。委員会で問題意識を共有できたことは後に大きく影響しました。
(3)知識の一層の習得、提案根拠の明確化。条例提案は責任も重大ですので、公共経営研究科に通い知識の習得に努めました。議会での提案と並行し、桐生市の行政評価はどうあるべきか研究し提言した「桐生市サブシディアリティ評価実施への提言」を作成しました。それを礎に条例を作成、提案を行いました。
(4)市当局や執行部の背中を押す。多くの議員は、当局が前向きな答弁をした件は受け入れる傾向がないでしょうか。地道ですが、批判ではなく継続した提案と議論を通じて問題意識の共有や信頼を構築しました。答弁も徐々に前向きになりました。
(5)手段としての条例。条例化は目的ではありません。政策提言でもできることはあります。条例の拘束力と行政内外へのインパクトを狙いました。よって、政策シンクタンク「構想日本」による事業仕分けの実施も実現しました。現在では発展的に独自の内部評価と外部評価を行っています。予算編成方針にも掲げられています。
いずれにせよ、「議員一人の力は弱い」という認識は必要です。周りの協力あってこそ議員としての存在意義が生まれ、ひいては議会が成長し、行政を引っ張ることができます。結果として客観的な評価である存在価値が示せます。大胆に行動しつつ協調性を持つことが、目的達成に向けた私の処世術です。
- 著者プロフィール
- 井田 泰彦(いだ やすひこ):1978年2月9日生まれ 桐生市新里町生まれ、在住 B型。妻と一女一男。桐生市議会議員2期目、公共経営修士、地域政党そうぞう群馬代表。「議員発、市役所の文化を変えるキッカケづくり~桐生市行政評価条例の議員提案」で第5回マニフェスト大賞優秀政策提言賞受賞。
blog:一人一人の存在価値の高い地域を創るキッカケを
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twitter:井田泰彦 桐生市議会議員
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