【特別インタビュー】ボトムアップで地方自治体を強くするスーパー公務員 山形市役所 後藤好邦氏(3/5) (2016/08/22 地方自治体を応援するメディア - Heroes of Local Government)
外と繋がらないと気が付かないことがある
後藤氏:そうですね。本当に外を知らないというのはダメなんですよね。役所の職員は閉鎖的だと思うんですよ。例えばですけど、市が費用をお支払いしているような民間企業の方と一緒に飲みに行くとまずいんじゃないのって。そういうことは、民間の企業さんもあるのかもしれないですけど、必要以上に垣根を高く感じてしまっている部分もあるのかなと。だから、外の人と繋がるにしても、せいぜい同じ自治体職員とかが多いんです。なので、ネットワークを立ち上げる時も自治体職員だけのネットワークにはしたくなくて、民間企業の方とかNPOの方とか、若い方や学生にも参加して欲しいなと思ったんです。そこで周りからいろんな価値観を吸収して、やっぱり山形市役所の中の考え方っていうものが意外と世の中と違うんだなとか、もっと進んでいる自治体があるんだなとか、民間ではそういうことをやっているんだとか、最初の気付きになると思うんです。そこはやっぱり外と繋がらないと気付けない部分かなと思いますけどもね。
加藤:確かに。内向きになってしまうことは、会社組織でもあるかもしれないですね。会社の中で上司に好かれれば良いというか、上司に好かれることが目的となっている人がどうしても出てくるので。
費用対効果を重視できない仕事が辛かった
加藤:今までのお仕事でもっとも辛かったことは何でしょうか?
後藤氏:良いところは多かったんですけど悪いところと聞かれると、なんですかね・・。一番元に戻りたくないなと思うのは体育振興、国体の仕事をしている時ですね。その後に行政評価という費用対効果を考える仕事に就いたから余計に感じるんですけど、やっぱりああいうイベント系の仕事って、費用対効果なんて考えてないですからね(笑)。イベントが盛り上がることを目的としているので。そうすると、お金を気にしていたらやっていられないところもあるんで、無駄なこともやっぱり多い訳ですよ。そういう無駄な仕事って基本的にやりたくないですよ(笑)。だから、そういうイベント系には戻りたくないなと思いますけどね。
加藤:体育振興課には元々は興味があったというお話は拝見していたんですが・・。
後藤氏:私自身がモーグルをやっていたので、国体の公開競技でモーグルをするかもしれないということが噂としてあったので、趣味と実益を兼ねられると思って希望したところ、珍しく異動出来てですね。ただ、その中で予算とか経理とかの仕事をしていたのですが、その費用対効果のバランスが、今の自治体が求められているようなバランスの取り方じゃなかったので、ああいう仕事はもうやりたくないかなって。ただ、難しいところなんですけど、そこをケチる人だと逆にイベントがうまくいかないっていう(笑)。勿論、もし自分がその部署に行ったら、責任を持って求められていることはやりますけども、ただ、やりたいかやりたくないかと言えば、そういう仕事は今後あまりやりたくないかなと思いますね。
加藤:地方自治体の財政の問題が話題になってきているので、イベントについても昔に比べて費用対効果を見てやりなさいという状況ではないんでしょうか?
後藤氏:失敗させるわけにはいかないですからね。民間さんの場合だとイベントをやる際にスポンサーはどれぐらい入れてとか、収入の部分を考えながらやると思うんですけど、役所がやるスポーツイベントって結局は収入とか考えないわけじゃないですか(笑)、例えば昔から伝統のある大会だとか、市長が推しているスポーツの大会だからだとか色々な理由があると思うんですけど、市民が喜ぶ大会とは限らない場合もあるので、そういうところに多少なりとも経費を使うのにどうなのかと思ってしまうってとこですよね。それだったらもっと使うべきところがあるのかなと個人的には思ってしまいます。
今後は繋がりを生むことで人材を育成したい
加藤:お仕事やそれ以外の活動でも今後していきたいということを教えていただけますか?
後藤氏:山形市役所の中ではきちんと成果を出しつつ、年齢も年齢なのできちっと人材育成をしていきたいですね。直属の部下には仕事の面でしっかり成果を上げてもらうようにして、彼らが成長していけるような仕事の取り組ませ方をしたいなというのが一つ。後は、役所全体を考えると、外に出ることの大切さとか、住民と繋がることの大切さとか、そういうことを伝えられるようなオフサイトの場をこれからも作っていきたいです。
あと、東北オフサイトミーティングの活動で言うと、その活動に触発されて九州とか四国とか、さらに小さい単位で言うと、群馬県の上州とか越後とか全国各地にこういった活動ができているんですよ。そういうところと連携しながら、何かアウトプットが出来たらいいなと思っています。自治体がやるものとはまた違うとは思うんですけど、ボトムアップで草の根的な地方創生に絡めるような活動が出来たらと思います。東北と九州だと人の気質やネットワークの雰囲気とかも全く違いますし、それぞれの強みを活かし、弱みを補い合いながら面白いことが出来ないかなと思っています。
どんなに頑張っても、役所にいられるのは15年しかないので、その中で何が出来るのかと言えば育成の部分が大きいのかなと思います。偉くなればなるほど成果を上げていかなければいけないのは必然的なものですが、その中で忘れがちなのが人を育てていくってことなのかなって思うんですよね。そこは微力ですけど自分なりにやってみたいと思います。
頼まれごとは試されごとだから断っちゃダメ
加藤:人を育てるというところで今まで試行錯誤されたと思いますが、後藤さんにとっての方程式というかこういうやり方がうまくいったというのはありますか?
後藤氏:一緒に活動しているうちの若い職員に言っているのは、何かを頼むと「自分には出来ないですよ」って言う子が多いんですよ。でも、そういう時に言うのが、人の限界とかリミッターは自分が判断するものじゃなくて、他人が判断するものですよと。まして、頼まれたということは、自分が出来ないと思っていることでも、相手が出来ると思っているということ。ここまでは出来るとその人に評価されたんだから、必ず頼まれ事は受けるようにと。そこを頑張って一所懸命にやれば必然的に成長するし、もし仮にやれなかった場合でもその時の努力は、何かの力になっていると思います。プラスして言えば、最悪、うまくいかなかった場合は頼んだ相手が悪いんだと思えばいいんだと(笑)。だから、「頼まれごとは試されごとだから断っちゃダメだよ」って話をしていますね。それを言っている張本人として、僕も頼まれたら極力断らないようにしていますし、同時に若くて経験のない子達に色々なことを頼むようにしています。そうすることによって、彼らが成長していくのかなと思いますね。
加藤:凄く納得します。自分でやらないとなかなか覚えられないじゃないですか、ただもの凄く簡単なことをお願いしてもそこはあまり伸びないというか。ちょっと自分に出来るのかなと、ウっとくるレベル。ただ、それでも頑張れば達成出来るレベルというのをやっていくと物凄く成長すると思っています。
後藤氏:そうですね。仕事だと時間を待ち切れないこともあるんですけど(笑)、プライベートの活動だとそこまで厳しく期限を求められないじゃないですか。ただ、自分が考えるその人の限界点ぐらいまでの役割を求めて、しっかりサポートはするけど、自分事として取り組んでもらうことを仕掛けていきたいと思いますけどね。
加藤:それは凄くわかります。
後藤氏:そういうこともあるので、オフサイトミーティングの活動では学生に事例報告をしてもらったりとか、入ったばっかりの若いメンバーに司会とか目立つことをしてもらったりとか、そういう仕掛けはするんですよ。そうすることによって、さっき言った成長の部分と、自分はここの組織やネットワークの一員なんだなと自分事として考えられるようになるので一石二鳥だなと思っています。
仕事以外の活動を仕事に還元し、今いる組織でやり易さを創ることが大事
加藤:逆にオフサイトミーティングのような仕事以外のイベントに参加する方が、気をつけた方が良いことはあるんでしょうか?
後藤氏:その活動を職場と家庭から良く思ってもらえるかどうかというのがとても大事で、「どうせ上司はわかってくれないから良いよ」って言うのは簡単なんですよ。でも、上司に納得してもらっているかどうかで、その職場でのやり易さが大きく変わってくると思うんです。そして、上司に納得してもらって、やり易く出来るどうかというのは本人にしか出来ないことだと思うんですよね。よっぽど良い取り組みになって先に外から評価されるっていうのも一つのやり方としてあるんですけど、人の感情って難しくて、自分から見て良く映らない人が外から評価を受けていると、余計に悪く思うこともありますからね(笑)。
一番大事なのは、そこの組織の中でこういう活動している人だから、うちにいてもらって良かったなと思ってもらえることですね。例えば、前に行革にいた時は総務省絡みの仕事が多かったんですよ。国から色んなことが降りてきますよね、ただその際に抽象的なモノはネットで調べてもわからないんですよ。上司から「これってどういう意味なの?」って聞かれた時に「ネットで調べたらこんなことが書いてありました。あまり良くわからなかったので、総務省の知り合いに今聞いています」って言って、その後に生の情報を教えるだけで凄く良い情報が手に入ると思うじゃないですか。
だからオフサイトの活動を仕事に還元するってことが大事かなと思っていて、そうすることによって周りから「やっぱりこういう活動って必要なんだな」って思ってもらえるようにする。だから自分が持っているネットワークを自分だけが使うわけではなくて、組織からも使ってもらえてなんぼだと思っています。
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