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成果が問われるこれからの議会改革 議員と市民の条例づくり交流会議開催(2012/08/02 政治山)

議員と市民の条例づくり交流会議 写真1

 自治体議会の改革や自治体づくりの知恵と経験の共有を目的とした勉強会「市民と議員の条例づくり交流会議2012」が7月28、29日、東京・市ヶ谷の法政大学で開催された。同会議のテーマは「動き出した議会改革― 市民自治体の姿がみえてきた」。復興と議会、地方自治法、議会事務局改革といったテーマに沿ってそれぞれ講演や分科会が2日間に渡って開催された。

1日目 全体会 動き出した議会改革、問われる成果

 夏らしい強い日差しの中、両日とも約300人の市民・議員らが会場に集まった。

 1日目は、主催団体である自治体議会改革フォーラムが毎年行っている議会改革調査の結果をもとに、報告と問題提起が行われた。

自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表の廣瀬克哉氏自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表の廣瀬克哉氏

 首都大学東京准教授の長野基氏は、「動き出した議会改革―なにがかわり、なにがかわっていないのか」と題して2007年と今回の2012年の調査結果を比較。この5年間で「議会への市民参加」「議会の情報公開」は進んだが、「議員間討議・議会による熟議」は大きな進捗が見られなかったとした。

 それを受け、自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表の廣瀬克哉氏は、「市民自治体の姿がみえてきた―合議体ならではの役割」というテーマで基調提起。現在の地方自治体および地方議会の役割について、法制度の観点から期待された成果を出していないと指摘した。これまでの議会改革は、取り組み(アウトプット)を行っていることは伝わっているかもしれないが、成果(アウトカム)をうまく伝えられていないと述べ、これからは「改革が市民に何をもたらしたか?」が問われると語った。

被災3県の自治体議員が復興と議会をテーマに議論

 パネルディスカッションでは、被災地の自治体議員3人をパネリストに「復興と議会」について議論した。首都大学東京准教授の饗庭伸氏がコーディネーターを務め、大震災のような自治体存亡の危機に際して議会の存在意義が問われたとし、震災時に自治体や議会がどういった役割を果たしたかについてそれぞれの立場から説明があった。

議員と市民の条例づくり交流会議 写真3

 宮城県議会議員の藤原のりすけ氏は、公平性を重んじる自治体の体質について「例えば、1000人いる避難所に800人分の食料が届いたら不公平になるというので自治体は出さない。災害対応では、こうした体質は弊害だ」と批判し、縦割り行政の解消や指揮系統の単純化などを提言した。また、「震災がれき処理を地元の業者で行うべき」という意見については、がれき処理が進まないと復興が進まないとし、ある程度の踏ん切りが必要だと述べた。

 岩手県陸前高田市議会議員の菅野広紀氏は、震災後に策定される復興計画を議会で議決をするかどうかで市長と意見の相違があったことに触れた。市長は復興計画に議会を関わらせるとスピード感が鈍るという認識を持っていたが、議会基本条例の一部改正で議決事件にし、2011年12月には同計画を議決した。「議決事件にしたことで、市民への責任をより実感した」と語った。

 福島県浪江町議会議員の小黒敬三氏は、東京電力福島第一原発事故に当たり、町民の意見を聞く場として懇談会を54カ所で開いた経緯を説明。厳しい意見が出たが、その意見を復興ビジョンや復興計画に生かせたとした。また、現在の復興・復旧について、(1)目標値のない除染、(2)生活支援としては足りない賠償、(3)区域の線引きが賠償と絡んでいること、(4)こういった問題を福島県双葉郡内の1地域に矮小化している点といった4つの大きな問題点があるとした。

宮城県議会議員の藤原のりすけ氏
宮城県議会議員の藤原のりすけ氏
岩手県陸前高田市議会議員の菅野広紀氏。
岩手県陸前高田市議会議員の菅野広紀氏
福島県浪江町議会議員の小黒敬三氏
福島県浪江町議会議員の小黒敬三氏

2日目 片山善博前総務大臣の基調講演、4つの分科会で議論

基調講演を行う片山善博前総務大臣基調講演を行う片山善博前総務大臣

 2日目は、地方自治の「武器、道具」として、地方自治法、議会事務局改革といったテーマで全体会、分科会が行われた。

 午前の全体会「自治法改正を使いこなせ!」では、まず前総務大臣で慶応義塾大教授の片山善博氏による基調講演が行われた。自身の大臣時代の経験や民主党の地域主権改革に触れ、地方自治体と地方議会の責任はより重くなったが、地域主権改革は期待よりも進んでいない現状を説明。今後議会が取り組むべきこととして、条例の有効期限を決める「サンセット(時限)方式」の導入などを提案した。講演を受けて、山梨学院大教授の江藤俊昭氏、東京財団研究員で第30次地方制度調査会臨時委員の中尾修氏、総務省自治行政局行政課地方議会企画官の寺田雅一ら有識者が知見を述べた。

 午後からは、各分科会に分かれて活発な議論が行われた。各会のテーマは以下の通り。

  • 第1分科会「住民投票条例」―住民意思を反映させるポイントはこれだ!
  • 第2分科会「議会報告会」―市民との対話の積み重ねが、議会を「討論の広場」へと変える!
  • 第3分科会「計画・評価と議会」―事業・政策・計画は議会がチェック・判断・評価する!
  • 第4分科会「議会事務局改革」―市民自治体の意思決定機関“議会”を支える議会事務局改革
議員と市民の条例づくり交流会議 写真8

 最後は廣瀬氏が全体のまとめを行い、会は幕を閉じた。

 自治体議会改革フォーラムが毎年実施している調査をまとめた冊子の今年度版「議会改革白書2012」は発売中。購入などの問い合わせは自治体議会改革フォーラム事務局まで(jourei@jourei.jp)

参考
市民自治体をめざして 市民と議員の条例づくり交流会議
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