第40回政治山調査「過半数が「議員の理解が進んでいない」と回答、女性活躍は数合わせではなく環境づくりから」 (2016/11/25政治山)
今年4月に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」は、政府が進める一億総活躍社会の実現に欠かすことのできないものとして注目されています。女性が存分に活躍できる環境を整えるためには、どのような課題を解決すべきなのでしょうか。政治山では、全国の20歳以上の男女を対象に11月11日から17日まで、インターネット意識調査「政治山リサーチ」を用いた調査を実施しました(回答数2214)。今回はその概要をお届けします。
もっとも理解が進んでいないのは「議員」
まずはじめに、働く女性自身に加え、家族や職場、議員やメディアなどがそれぞれ、女性活躍について「どの程度理解が進んでいると思うか」をたずねたところ、「進んでいない」または「どちらかというと進んでいない」と答えた人がもっとも多かったのは「地方議員・国会議員」50.2%との結果が得られました(グラフ1)。
政治の世界は未だに典型的な「男性社会」というイメージが強く、女性議員の少なさや男性議員によるセクハラ、女性蔑視発言が後を絶たないことから、議員に向けられる世間の目は厳しいようです。
次いで理解が進んでいないとされたのは「企業・経営者」45.2%で、「行政機関・職員」43.3%、「上司・管理職」41.0%と続きました。
また、働く女性自身の理解も進んでいるとは言い難く、35.3%が「進んでいない」または「どちらかというと進んでいない」と回答。「進んでいる」または「どちらかというと進んでいる」と答えたのは41.6%でした。
一方、「進んでいる」または「どちらかというと進んでいる」との回答がもっとも多かったのは「家族・友人」43.1%で、次いで多かった「インターネットメディア」42.0%と並んで「働く女性自身」を上回りました。
女性活躍の企業認定制度、期待は4.1%
次に、政府や行政が検討または実施している施策について、有効だと思うものを3つまで選んでもらったところ、「家事・子育て・介護支援の充実」29.8%がもっとも多く、「女性の健康、妊娠、出産、育児、介護の支援の推進」25.6%、「待機児童解消に向けた子育て基盤の整備」19.6%、「育児・介護休業等の取得促進」18.3%と続きました(グラフ2)。
さらに見ていくと、「長時間労働の削減」14.8%、「非正規雇用の女性の待遇改善」13.7%、「男性の家事・育児等への参画を促す社会の気運醸成」13.5%、「女性のキャリアアップや起業の支援」10.7%、ひとり親家庭等への支援10.3%が10%を超え、「旧姓の通称としての使用の拡大」4.6%と「女性活躍推進企業の認証制度の推進」4.1%は少数にとどまりました。
女性活躍推進法の施行を受けて、厚生労働省は女性活躍企業を認定する「えるぼし」制度を創設しましたが、まずは制度の認知度を高める必要がありそうです。
活躍している女性政治家、半数が「小池百合子氏」
続いて、「もっとも活躍していると思う女性政治家は誰ですか?」との問いには、小池百合子東京都知事49.5%に回答が集中しました(グラフ3)。
次に多かったのは蓮舫民進党代表6.9%で、稲田朋美防衛大臣3.7%、野田聖子元郵政大臣2.0%と続きました。また、稲田大臣と同様に現職大臣である高市早苗総務大臣と丸川珠代五輪担当大臣は0.9%で並びました。
女性議員、「無理に増やす必要はない」が最多
次に、「国会や地方議会で女性議員が増えるには、どのような施策がもっとも有効だと思いますか?」とたずねたところ、もっとも多かった回答は「無理に増やす必要はない」27.9%でした(グラフ4)。
女性議員を増やす施策としてもっとも重視されたのは「女性議員が働きやすい環境(制度や設備)を整備する」19.9%で、「女性に一定の議席数を割り当てる(クオータ制の導入)」11.7%と「議席数を男女同数に割り当てる(パリテ方式の導入)」7.0%の合計値を上回りました。
形式的に数を増やすよりも、まずは働きやすい環境づくりを優先し、自ずと増えていくことが望ましいと考えている人が少なくないようです。
女性議員は12%、2020年までに30%は現実的か
政府は「2020年までに社会の指導的地位に立つ人の30%以上が女性」という目標を掲げていますが、国会でも地方議会でもその目標達成は極めて厳しい状況と言えます。
列国議会同盟(IPU)の統計(2015年)によれば、日本の女性国会議員の割合は11.60%で186カ国中147位。世界平均の20.52%に遠く及びません。また、女性地方議員の数はおよそ4000人で12%。自治体の長に至ってはわずか2%にとどまっています(政治山調べ)。
今回の調査は主に政治・行政に焦点を当てましたが、ここで決められた法令や運用される制度は私たちの働き方や暮らしに直結します。そこに当事者である女性も主体的に関わることができるように、環境を整えていくことが期待されます。
本調査レポートについて
本調査の詳細なレポートでは、性別や年代、地域別や職業別、各設問間のクロス分析の結果と自由記述による回答もご紹介しており、「政治山会員」の方は会員ページにてご購入いただけます。
<調査概要>
調査対象者 | 全国の20歳以上の男女 |
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回答者数 | 2,214人 |
調査期間 | 2016年11月11日(金)~11月17日(木) |
主な質問 |
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調査手法 | インターネット調査(政治山リサーチ) |
調査実施機関 | 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー |
- <著者> 市ノ澤 充
- 株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。政治と有権者の距離を縮め、新しいコミュニケーションのあり方を提案するための講演活動も実施している。
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