第73回 地方議員のお仕事~3つの活動領域で整理する~  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第73回 地方議員のお仕事~3つの活動領域で整理する~ (2014/2/19 福岡市議会議員 田中しんすけ氏/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第73回は、福岡県福岡市議会議員の田中しんすけ氏による「地方議員のお仕事~3つの活動領域で整理する~」をお届けします。

◇      ◇      ◇

商都・福岡について

 福岡市は2000余年、大陸との交流の中で新しいことにチャレンジして、歴史を築いてきたまちです。商人のまち、港町としての歴史を通じ、さまざまな人と物の交流の中で、おもてなしの心と進取の気性にあふれる市民気質が形成されました。そのような土台もあり、近年ではアジアからの留学生や旅行者も多く、九州・アジアのゲートウェイ都市としての地位を確立しています。今でも人口が増え続けている都市でもあり、2013年には市内人口が150万人を突破しました。男女比率で言うと、女性人口の方が多いというのも特徴の一つです。また、本年のNHK大河ドラマでは福岡に縁のある『軍師官兵衛』が放送されるなど、全国でもホットな元気のある都市として認識されているのではないかと(勝手に)思っています。

 そんな元気な福岡市ですが、人口も未来永劫増え続けるということではなく(福岡市の総人口のピークは2035年頃に約160万人)、今後迎える人口減少によって、従来の社会・経済構造を維持することは困難になると予測されています。人流・物流を経済のよりどころとする福岡市にとって、現在進行形で生じている九州全体の人口減少は行政運営にも大きな影響を及ぼすことから、本市は比較的安定した状況が見込まれる今後10年間のうちに、社会・経済構造を転換し、豊かさを実感できる都市として再構築するための布石を打っていく必要があります。

福岡市議会の取り組み

 議員提案条例については、最近は1会期に1本は、市民生活のニーズをとらえた条例案が上程・可決されています。2011年3月議会には、郊外地域で乗り合いバス路線の休廃止が相次ぐ中で、生活に関する交通を維持していくための『公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例(通称:生活交通条例)』が、2013年9月定例会には、放置された空き家が防災・防犯上の課題となっていたことを受けて『空き家の倒壊等による被害の防止に関する条例(通称:空き家条例)』が、それぞれ議員提案により制定されました。今後の課題は、議員提案条例の本数をどれだけ増やせるか、また、当該条例案を練り上げていくための公式な会議体を設置できるか、という点でしょう。

 また、議会改革については、2013年2月からの委員会傍聴制度の充実、同年10月の決算特別委員会総会からのインターネット放映開始(本会議のインターネット放映は既に実施済み)、同年12月定例会からの一般質問における「一問一答制」の導入など、さまざまな議会改革に取り組んだ1年でもありました。

会派主催の議会活動報告会の様子

会派主催の議会活動報告会の様子

 このように、「出来る所から少しずつ」変えていこうというのが福岡市議会流の議会改革のスタンスなのですが、全国の改革先進議会と比較すると、活性化に向けた抜本的な議会改革の取り組みについてはなかなか進んでいない、というのが実感です。福岡市議会では議会基本条例は制定されておらず、議会報告会や議員間討議なども実施されていません(※会派ローカルマニフェストに基づく議会活動報告会については、民主・市民クラブは会派で独自に毎年実施)。議会報告会や議員間討議については、それらの事項が議論の俎上(そじょう)にすら上がっていないのが現状です。議会改革については、まずは議会全体で協議機関を設置することを目指さなければなりません。

ところで、『地方議員の仕事』って?

 ここからは、地方議会に籍を置いて活動してきた私個人の経験と考えを中心にご紹介していきます。私が福岡市議会に議席をいただいてからもうすぐ7年が経過しようとしていますが、この間に最も多く受けた質問、それは「福岡市議会議員って、どんな仕事をしてるの?」というものでした。

 そこで、私は福岡市議会議員として活動してきた早い段階で、地方議員が取り組むべき『3つの活動領域』を設定し、それぞれの領域で市民の負託に応えるべく仕事に取り組んできました。この点については、普段の活動報告会や街頭演説では冒頭で説明するように心がけています。

(1)議会活動

条例や予算、市が行う契約の締結など、福岡市にとって重要な問題について審議・決定する(※議案審議、議会質問、請願審査、議会改革に関する取り組みなど)。

(2)政治活動

市民に政策や議会、政治家の実態を伝えることで、政治に対する関心を高めてもらう(※活動報告会の実施、街頭活動、学生インターンシップの受け入れ、政治参加意識の向上に関する取り組みなど)。

(3)地域活動

地域や団体での活動を通して、市政の問題点や課題を発見し、解決する(※商店街活動、消防団での活動、地域防犯や地域体育振興に関する取り組みなど)。

地方議員の3つの活動領域

地方議員の3つの活動領域

 これら「議会活動」「政治活動」「地域活動」は、もちろん一つひとつの中身も大事ですが、それぞれが相互に関連しています。特に、「政治活動」と「地域活動」で得た情報やアイデアを「議会活動」に反映させ、一地域の課題でも全市的な問題として取り上げることが重要です。この3つの領域でバランスよく活動することが、地方議員には求められていると考えます。

未来に責任を持つ『制度づくり・人づくり』を!

 最後に、私個人の思いにはなりますが、地方議員としての今後の活動指針について述べて締めくくりたいと思います。

福岡市議会議員 田中しんすけ氏

福岡市議会議員 田中しんすけ氏

 昨年、会派ローカルマニフェストに基づく政策実現型の質問に加えて、「マンション建設の在り方」や「若者の政治参加・社会参加の促進」といった地域活動や政治活動の中で感じた市政の課題を扱い、これらを根本的に解決することの難しさを痛感しました。そこで、今後はまちづくりや教育といった視点を活動の中心に据えて、『制度作り・人づくり』に寄与する活動をこれまで以上に増やしていこうと考えました。

 政治の世界では35歳と言えば、活動的でまだまだ先が長いというイメージでとらえられることが多いのですが、実際に政治の世界(特に議会の中)で活動していると、「自分が元気なうちに、自分たちが理想とする政治がどれだけ実現しているだろうか?」、と考えることが少なくありません(別に諦観(ていかん)しているわけではありませんがw)。

 自分たちが議会からいなくなっても、少なくとも将来にわたって福岡市民が健康で幸せな生活を送るための基盤(条例や制度)だけは残していきたい。「手掛けなければならないことはとても多いけれども、それに比べて時間は限られているんだよ」、という気持ちを強く持って日々の活動に臨んでいこうと思います。

著者プロフィール
田中 慎介(たなか しんすけ):福岡市議会議員、1978年6月14日生まれ。筑紫丘高校、九州大学法学部、早稲田大学政治学研究科修士課程修了。アクセンチュアを経て2007年の福岡市議会議員選挙で初当選(現在2期目)。民主党県連では青年委員長、所属会派の民主・市民クラブでは政調会長を務める。ライフワークは「商店街」、「消防団」、「地域スポーツ」、「次世代育成」など。『胸を張って、元気よく!!』をキャッチフレーズに福岡市で鋭意活動中です!
HP:田中しんすけ公式サイト
Blog:田中しんすけオフィシャルブログ
Facebook:田中しんすけ
twitter:@tanaka0614
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