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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第24回「人口減少の危機に、地方議員が動き出した」(2013/2/20 山梨県甲府市議会議員 神山玄太/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第24回目は、甲府市議会議員の神山玄太氏による人口減少の危機に、地方議員が動き出したをお届けします。

◇        ◇        ◇

甲府市議会議員・神山玄太氏と、ご当地名物・鳥もつ煮のキャラクター「とりもっちゃん」(右)、「えん丸くん」(中) 甲府市議会議員・神山玄太氏と、ご当地名物・鳥もつ煮のキャラクター「とりもっちゃん」(右)、「えん丸くん」(中)

 2027年、山梨県甲府市大津町を経由して、品川~名古屋間でリニア中央新幹線の開通を予定している。山梨県が行った試算によると、リニア中央新幹線の開業が山梨県の人口数に与えるインパクトは、2027年の開業時に県全体で3,800人の増、開業10年後の2037年までに約1万4,600人が増加するとしている。

 しかし、甲府市は2005年から人口の減少が始まっており、リニア中央新幹線の開業効果が、どのように影響するかは未知数である。実際、リニア中央新幹線が開業するころの甲府市の人口を国立社会保障・人口問題研究所の推計で見てみると、2025年には17万8,561人になると予想されている。2010年には19万6,454人だったので、2025年までの15年間に1万7,893人も減ることになる。つまり、仮に山梨県が行った試算の通りにリニア中央新幹線の開業効果が表れたとしても、県全体で増加した人口数以上に甲府市の人口が減少することになる。

 現在、市や県ではリニア時代のまちづくりについて議論が活発に行われているが、甲府市のリニア時代は、人口減少社会とともにやってくるのである。人口減少社会でどのように行政経営を行っていくかという課題は、甲府市だけの課題ではなく、多くの地方自治体が直面し始めている。

 人口減少社会におけるこれからの行政経営は、非常に難しい。それはただ単に人口総数が減っていく人口減少ではなく、少子高齢化という「若い世代が顕著に減っていく」形を伴っての人口減少だからである。先ほどの国立社会保障・人口問題研究所の推計を見てみると、甲府市の人口推計はこのようになる(表)。2025年までに、0歳から14歳までの年少人口は、2010年の2万4,289人から6,411人減って1万7,878人に、15歳から64歳までの生産年齢人口は、12万3,308人から1万7,160人減り10万6,148人。その一方で、65歳からの老齢人口は、4万8,857人から5,678人増え、5万4,535人になるとされている。

甲府市の人口推計

  0~14歳 15~64歳 65歳以上 合計
2010年 24,289 123,308 48,857 196,454
2015年 21,672 116,436 53,497 191,605
2020年 19,446 111,285 54,805 185,536
2025年 17,878 106,148 54,535 178,561
2025-2010 -6,411 -17,160 5,678 -17,893
2035年 15,558 91,999 55,296 162,853
2035-2010 -8,731 -31,309 6,439 -33,601

(国立社会保障・人口問題研究所資料から神山玄太氏作成)

 2010年に65歳以上の方1名を2.5人の生産年齢人口(15~64歳)で支えていたものを、2025年には1.9人で支えなければならず、2035年になると1.7人で支えなければならない計算になる。

 このように地方の多くの自治体では、働き盛りの生産年齢人口が減少していくことで税収が減り、一方で高齢者が増えることで給付が増大していくことが想定される。つまり、人口減少社会において、地方の多くの自治体は今後、難しい行政経営を強いられることになる。だからこそ、この厳しい状況の中で、人口減少社会における難しい行政経営への答えを示した自治体が生き残ることができるのである。

 私はこの危機感から、人口減少社会における行政経営について議会で議論していくために、その情報を把握し、知識を習得する目的で、若手有志と勉強会を立ち上げた。この人口減少社会を生き抜かなくてはならないという危機感を多くの住民とどのように共有するかが課題であり、そして人口減少という危機に住民とともに立ち向かっていくことが、生き残るために重要となってくる。議会において議論をしていくために、また住民に対して危機感を伝えていくために、自分自身が研さんを積める勉強会を立ち上げたのである。

 本来であれば、人口問題などは、国が強いイニシアチブを取って改善を図る政策であるが、これまで国による有効な手立てはほとんど展開されることはなかった。1975年に合計特殊出生率が、人口が減り始める目安の2.0を下回ったとき、本来であれば国が強い危機感を持ち、人口減少を食い止めるための対策をすべきだった。しかし、人口問題を放置し続けたことからも、国の姿勢は明らかである。

 私たちの世代は、人口が減少していくこの時代を生き抜かなくてならない。だからこそ、私は今、人口減少社会における行政経営のあり方という、本来であれば国が示すべきことを、この地方都市の甲府市で、将来のために取り組んでいきたいと考えている。

甲府市議会定例会本会議で一般質問する神山氏(2012年9月) 甲府市議会定例会本会議で一般質問する神山氏(2012年9月)

 私たちが行っている勉強会での議論を、少しだけ紹介したい。私たちは、人口減少社会における行政経営では、「財源が減っていく中、どのように財政運営をしていくか」という視点と、「人口減少を食い止め、増加に向けてどのような政策を展開させるか」という2つ視点が必要であると考えている。そして、人口減少を食い止めるためには、死亡者数や市外流出数よりも人が増えるような政策を実施すればいいということである。

 この考え方に立つと、甲府市は2035年に人口減少を食い止めることを目標とすると、毎年、新たに増える人数を70人ずつ上乗せしていけば達成すると導かれる。つまり、これから検討すべきなのは、この70人増加のためにどのように政策を展開していくか、ということになる。このように目標を明確に定めることができれば、政策にも結びつけやすくなり、また住民に対してもわかりやすく説明することが可能となってくる。

 人口減少が進展し、少子高齢社会の影響が顕著に現れてくるのは、地方都市からである。いち早くこの課題に取り組み、この甲府市で答えを導き出し、それを日本全国の意識ある地方都市に発信していきたい、と考えている。そして、この取り組みが甲府市に住む多くの住民にとって、将来にわたる安心と住民自治の向上につながると信じている。

著者プロフィール
神山玄太(かみやま げんた):山梨県甲府市生まれの30歳。県立甲府東高等学校を卒業後、1浪を経て、2002年に金沢大学法学部に入学。2006年に早稲田大学大学院公共経営研究科に進学し、元三重県知事の北川正恭、公会計の第一人者の小林麻理両教授に師事した。修士論文は「マニフェスト時代における政党マネジメント―政策を中核に据えた政党組織モデル―」をテーマに執筆。大学院修了後は、日本インターネット新聞社『ザ・選挙』編集部で政治記者として働く。2010年、政策担当秘書資格試験に合格。帰郷後、2011年の統一地方選挙で初当選。現在、甲府市議会議員1期目で無所属として活動している。
HP:神山玄太のホームページ
facebook:genta.kamiyama / twitter:@genta_kamiyama
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