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“未来を開く”日本財団パラアスリート奨学生の挑戦01―競泳・陸上 (2017/8/25 日本財団)

北の大地からの挑戦
競泳・山口源起、陸上競技・斉藤双希

北の大地、網走にふたりの奨学生がいる。山口源起くんと斉藤双希くん。ふたりは日本体育大学が2017年4月、スポーツを通した知的障害者教育を目的に開設した附属高等支援学校に学ぶ高校1年生である。

「パラリンピックに出る」と決意を語る山口源起くん

「パラリンピックに出る」と決意を語る山口源起くん

山口源起くん

山口くんは高校生になって、競泳の北海道代表に選ばれた。クロールと背泳ぎ、2つの種目で2020年東京パラリンピック出場を目指している。7歳から水泳を始め、中学時代は全国大会でも上位の成績も収めた。ただ168センチ、60キロの身体はいかにも小さく細い。「全国大会で勝つためには、もっと大きくならないと…」と自分自身でも話す。

負けん気が強い。6月、横浜で行われた知的障害者の日本選手権。最初の50m自由形は思い通りに泳げなかった。悔しさをぶつけるように次の200m自由形では、前半から飛ばした。しかし、力が入りすぎたか、中盤を過ぎて泳ぎは重くなってしまった。この日は競技時間が延び、北海道に帰る時間が迫っていた。エントリーしていた200m背泳ぎは棄権する予定だった。だが、山口くんは納得しない。「自分の泳ぎができていない」と訴え、背泳ぎにも「出る」と言い出した。周囲から長水路での自己新記録だったと聞いて、ようやくプールを離れた。

母の真紀子さんによれば「小さい頃から納得できるまで続ける性格」だったという。そんな山口くんに、日体大職員で日本水泳協会競技委員でもある粟井崇紀さんは、こうアドバイスした。「スタートから全力で泳げばいい。スピードを身体で覚え、その距離が伸びていけば記録はあがる。最初から計算して泳ぐと、そのタイムからは伸びない」。前向きな山口くんに合った練習方法かもしれない。いま、毎日200mを8本泳ぐ。加えて、週に3回は4000mから5000mの長距離練習で基礎体力を養っている。

「どうしてもパラリンピックに出る」。思いは強い。小学5年のとき、スイミングスクールの友人が亡くなった。脳性まひの友人とふたり、いじめの対象となった。ふたりは励まし合って練習し続けた。それを見守ってくれていたのが、ふたりの母親。友人が亡くなったとき、山口くんは彼の母に、「僕がパラリンピックに連れて行く」と話したという。「だから自分が頑張らなきゃ、と思っているんです」。真紀子さんが話してくれた。自分がパラリンピックで頑張ることで弱い者いじめや差別をなくしたい。そんな強い思いが、いま山口くんを支えている。

斉藤双希くん

そんな山口くんと並ぶと、斉藤くんの背の高さが際立つ。180cm、62kg。恵まれた体格に豊かな将来性がのぞく。「まだ、何をどうしていいのか、よくわかりません。投てきや跳躍が好きですが…」。斉藤くんは陸上競技を始めて間もない。本来なら、パラリンピックをはじめ、国際大会に出場が期待される選手を対象とした「日本財団パラアスリート奨学金」制度の適用外だったかもしれない。しかし、中学時代に行った体力測定で、並外れた記録をだした「未来への可能性」を評価された。

「大変ありがたいことですし、とても励みになります」。斉藤くんはゆったりと話す。前向きな山口くんと対照的に、こちらはどこか、のんびりとしたムードが漂う。

練習も土日をのぞいた毎日、2時間から2時間半程度、体幹を鍛える基礎トレーニングと走ることが中心のメニューである。「やっと学校の雰囲気や陸上競技にも慣れてきたというところでしょうか。本格的な練習を始めるのはこれからになりますね」

体育の栗原太郎先生は母校、日体大の協力に期待を寄せる。自身は柔道部出身。基礎トレーニングや筋力トレーニングの指導はできても、砲丸投げ、走幅跳や三段跳びなど、技術的な指導はできない。斉藤くんの潜在能力を引き出す専門家の存在が必要となる。それを可能にしたのがスポーツ教育の名門、日体大の附属学校というアドバンテージである。

もしかしたら、この夏から日体大陸上部員やコーチなどからの直接指導が行われるかもしれない。時間をかけて、斉藤くんの潜在能力を引き出し、磨き上げていくシステムが、この北の学校に用意されている。

 

【パラ奨学生】
2020年東京パラリンピックを控え、日本財団では世界レベルでの活躍が期待できる選手を対象に創設した「日本財団パラアスリート奨学金」制度に基づき、今春からパラアスリートへの奨学金給付を始めました。障害者スポーツ教育に実績のある日本体育大学の学生、大学院生ら19人が給付を受け、実力向上に励んでいます。このコーナーではそうした奨学生たちの活動などを随時紹介し、パラ競技とパラアスリートへの理解を深め、支援の輪を広げるとともに、2020年東京パラリンピックへの機運を高めていきます。

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