安倍政権の評価を背景に自民が高支持、ネット選挙は候補者のHPに信頼感
第10回政治山調査「参議院議員選挙とネット選挙に関する意識調査」(2/3) (2013/7/4 政治山)
今回の参院選は、日本で初めてインターネットを使った選挙運動が展開される。候補者はもとより有権者も、初めての経験になる「ネット選挙」。あらためて、有権者の意識を調査してみた。
8割が「ネット選挙」を正しく認識
ネット選挙の利用意識を調査する前にまず、今回の参院選で解禁される「ネット選挙」の認知度を測ってみた(グラフ5)。今回は、「インターネットを使った選挙活動」と、よく誤解されている「インターネットを使って投票ができる」、さらに「知らなかった」の選択肢を用意し、択一式で選んでいただいた。結果はグラフ5の通りだ。約8割の人が「インターネットを使った選挙活動」と回答(79.6%)。一方、「インターネットを使って投票ができる」(14.4%)、「ネット選挙が解禁されることを知らなかった」(5.5%)と、合計で約2割の人が誤解もしくは知らなかったと回答した。
選挙情報の取得先は4割がインターネットと回答
前ページで、投票先を決める際に重視するポイントを調査したが、ここではそうしたポイントに関する情報をどのメディアから取得するかを聞いた(グラフ6A)。
最も多かったのは29.6%の「テレビ」。これは、地域が異なるので単純比較はできないが、都議選時に行った第9回政治山調査の20.8%から8.8ポイントも増加した数字だ。次に多かったは新聞(紙媒体)で18.5%だった(第9回政治山調査では20.8%)。
一方、ホームページやブログ、SNSといったインターネット関連で見ていると、8項目の合計は42.2%となり、“情報ツール”としては今回も最大の割合となった。内訳を見てみると、「ネット上のニュースメディア」が11.5%で、ほぼ同率の11.4%で「ネット上の選挙情報メディア」が並んだ。これらのメディアは“信頼性”という意味ではある程度のものが担保されており、情報源として有権者としても安心して利用できるのだろう。
3番目に多かったのは「候補者や政党のHPやブログ」で6.3%。次いで、「インターネットの掲示板」が5.1%となった。フェイスブックやツイッターなどのSNSは、発信者にかかわらず1%台となっており、有権者の利用意識が低いことが分かった。
この結果を年齢別に見たのがグラフ6Bだ。20歳代では、ネット上の情報を利用するとの回答が5割を超えている。20歳代では「ニュースメディア」の利用が16.4%と、他の年代に比べ高くなっているのが特徴だ。また、20歳代と30歳代で「インターネットの掲示板」が8%台と高くなっているのも注目される。
テレビや新聞などの「非ネット情報」は40歳代が最高で、年齢が上がるごとに下がっていっている。年齢が上がるごとに増加したのは、「新聞(紙)」だった。また、「ポスターやちらし」に関しても年齢の高低に比例する動きは見られていない。
候補者や政党の情報は「参考にする」
ネット選挙が解禁されると、選挙期間中にインターネット上のさまざまな情報を参照し、投票行動の参考することができるようになるが、有権者はその情報をどの程度、利用しようとしているだろうか? グラフ7は、選挙期間中に情報が発信されるメディアの利用状況を聞いたものだ(グラフ中の「個人」は、候補者や関係者以外の「ブロガーや一般人」と規定して調査を実施)。
「参考にする」で「大いに」と「ある程度」を合わせ5割を超えたのは、「候補者本人のホームページやブログ」「政党のホームページ」「ニュースサイト」「政治・選挙情報サイト」の4つ。「ニュースサイト」は「大いに」が17.4%、「ある程度」は57.0%と高い割合を示した。また、「候補者本人のホームページやブログ」や「政党のホームページ」といった“公的情報”を積極的に利用しようと考えている様子もうかがえる。
一方、「個人のSNS」や「政治評論家や有識者のSNS」は、「参考にしない」で「あまり」と「まったく」を合わせ7割を超えた。特にこの2つは、「まったく参考にしない」が3割を超えており、選挙情報の収集に活用しようという意識が低い可能性もある。また、SNS全般に目を移してみると「候補者本人のSNS」では、「まったく参考にしない」が26.8%あるものの、「あまり参考にしない」と「ある程度は参考にする」が拮抗しており、候補者の使い方次第で効果が変わってくる可能性もありそうだ。
“炎上”は「その後」が大切
候補者がホームページやブログ、SNSで情報を発信をしていくうえで、リスクとして考えておかなければならないものに“炎上”がある。これまでも、ちょっとした表現のニュアンスの違いや誤解などで簡単に炎上してしまう例は枚挙に暇がない。グラフ8は、候補者のブログやSNSが“炎上”した場合、投票意識に影響があるかを聞いたものだ(択一式)。
約半数が「“炎上”した理由によって判断する」(50.5%)と回答。“炎上”という現象だけを見て判断する傾向が強い「“炎上”した候補者には投票しない」は7.3%となり、一方「“炎上”は投票意識に影響しない」は18.0%という結果となった。
ここで注目したいのが、「一般ユーザーからの書き込みコメントの内容で判断する」を7.3%が選択している点。「一般ユーザーからの書き込みコメント」には“炎上させている”当人の書き込みも含まれる可能性がある。こうしたコメントは、冷静に分析・判断すれば、“炎上”の理由やどこに瑕疵があったかなどが見えてくるが、悪意のある“炎上”の場合、デマや誇張も少ないないため本質を見誤ってしまう可能性も少なくない。割合は少ないながらも、有権者の判断材料となっている点は無視できない点だろう。
このほか、15.9%が「“炎上”した後の候補者の対応を見て判断する」と回答。“炎上”自体は不可抗力の部分があるが、それにどう対応したかを有権者は見ているとも言える。ここでの対応を誤ると、“炎上”以上に影響が大きくなることはよく言われていることだ。ネット選挙時代を迎えるにあたり、“炎上”から“消火”までの対策を考えておく必要がありそうだ。
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ここまでは今回の参院選から解禁されるネット選挙に関する意識調査の結果をご紹介してきた。次ページでは、誕生から約半年が経過した安倍政権に関する調査結果をまとめた。安倍政権がどう評価されているかは、参院選に大きな影響を及ぼす要因の1つと言える。有権者が安倍政権どう評価を下しているのかを見ていく。