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第4回政治山調査「ネット選挙に関する意識調査」【分析】Part4(2012/06/20 政治山)

 政治山が「ネット選挙」に関してインターネットと電話を使って行った意識調査で、ネット選挙に賛成の層と反対の層で、認識や考え方に大きな違いがあることがわかった。これは普段の投票行為とどのように結びついているのだろうか。最終回となる今回は、回答者の投票への関わり方とネット選挙への意識の違いを詳細に分析していく。
[関連ページ] 特集:ネット選挙ネット選挙に関する意識調査の結果
【分析】Part1【分析】Part2【分析】Part3

投票に行かないが、ネット選挙は反対?

グラフ1A、グラフ1B 普段から投票に行っているか

 インターネット調査で普段から投票に行っているかを聞いたQ7を細かく見てみよう(グラフ1A)。全体では61.9%が「毎回欠かさず行く」と回答しているが、年代別に見ると平均を超えているのは50代と60代以上のみ。20代では4割を切り、「投票には行かない」が21.3%に上った。若年層の「政治離れ」「政治への無関心」が指摘されて久しいが、今回の意識調査でもその傾向が顕著に現れたかたちだ。

 では、選挙に必ず行く人と、関心があれば行く人、行かない人に、ネット選挙の賛否を聞いたQ4を集計したのがグラフ1Bである(「政策に関心があれば投票に行く」と「候補者に関心があれば投票に行く」は、「関心があれば投票に行く」に統合して集計)。

 各回答によって大きな差はなかったが、ここで注目していただきたのは、「投票には行かない」とした層の賛成派の割合がもっとも低くなっている点だ。「賛成」と「どちらかというと賛成」の合計は63.5%。これは、インターネット調査での賛否全体を性別・年代別に集計した結果を比べると、60代以上女性に次ぐ低さだ(【分析】Part2参照)。また、「反対」「どちらかというと反対」の合計30.2%は同様に、20代女性にほぼ等しい。性別・年代8グループのうち反対派が3割を超えたのは、女性の20代、30代、60代以上のみである。

 普段から投票に行かない層は、ネット選挙へも否定的な層が比較的多くなっていることがうかがえる結果となった。これは、政治や選挙への“関心”の高さが影響しているのだろうか。

選挙行く人は行く、行かない人はネット選挙も使わない

グラフ2 ネット選挙が解禁された場合、自身の投票行動は変化するか

 もしネット選挙が解禁された場合、自身の投票行動が変化するかを聞いたQ8は、いわゆる「ネット選挙」の中でも「ネット“投票”」に特化した設問である。ここでは、必ず選挙に行く層と行かない層で特徴的な結果が現れた(グラフ2)。

 まず、積極的に政治・選挙に参加する“アクティブユーザー”である「毎回欠かさず投票に行く」人の回答を細かく見てみる。ネット投票解禁後、「インターネットを利用して投票する」と回答したのは40.5%だった。これは、全体平均よりも低く、各層で最低の割合である。さらに、「引き続き投票所に行って投票する」が28.0%、「投票するが、どちらでも良い」は31.2%だ。つまり、ネット選挙を積極的に活用する考えがない人が6割近くいることになる。

 次に、「投票には行かない」人たちがネット選挙をどうとらえているか。ここでも、ネット投票を活用するとした人は平均以下の43.8%にとどまった。さらに、「投票しない」と回答し、手段や方法にかかわらず、投票行為そのものを行う意思がない人が38.5%に上った。

 ネット投票の実現によって、投票率の向上を期待する声は多い。しかし、今回の調査で、従来から選挙に行っていた人は、ネット投票の有無にかかわらず投票行為は続け、逆に、もともと選挙に行っていなかった人は、ネット投票が実現しても投票する意思があまり上向かない――という傾向が見えてきた。ただ、「関心があれば投票に行く」と回答した層の6割を超える人がネット投票を利用すると答えている。「投票率の向上」という効果を上げるためには、ただネット投票を実現するだけではなく、運用面での工夫も必要となりそうだ。

手続きが面倒だから、ネット選挙はいらない

グラフ3 インターネットと利用して投票すると選ばない理由

 Q8で「引き続き投票所に行って投票する」または「投票するが、どちらでもよい」を選択、つまり「インターネットを利用して投票する」を選ばなかった人にその理由を聞いた。その結果を普段の投票行動で分類したのがグラフ3である。

 必ず投票に行く人が「ネット投票利用」を選ばなかった理由は多い順に、「自宅の近くに投票所があるから」(43.9%)、「自分の手で投票用紙に記入したいから」(32.9%)、「自分の一票がしっかり投票されたかどうか不安だから」(30.9%)。これは、従来通りの投票方法に満足しており、大きな変化を望んでいないことをうかがわせる結果だ。

 一方、普段投票に行かない人がネット投票でも参加しない理由は、圧倒的に「手続きが面倒くさそうだから」(80.0%)。どのような制度になるかまだ明確になっていない現時点で、ネット投票は「手続きが面倒くさそう」と考えている人が多数を占めている。ネット投票実現によって便利になり投票率が上がるという考えは、この層には当てはまらないのかもしれない。

 ここで、ネット投票を選ばなかった理由の「その他」の内容を見てもいると「不正が起こりそう」「成りすましなどの対策が不明だから」「改ざんされる恐れがある」など、セキュリティや悪用を心配する意見が多かった。また、「投票する者としての責任能力があやふやになるから」「一票の重さが軽くなったように感じそうな気がする」など、制度に対する不安を挙げる人も少なくなかった。

電話調査、残るデジタル・デバイドの問題

グラフ4A、グラフ4B、グラフ5、グラフ6

 電話調査で普段の投票行為を聞いた結果は圧倒的だ(グラフ4A)。「毎回欠かさず投票に行く」が、すべての年代で8割を超え、70代以上は男女とも9割以上の回答を集めている。また、各年代で「関心があれば投票に行く」も加えれば、ほぼ99%が投票行為を行なっているという結果となった。

 こうした結果を踏まえ、投票に行くと回答した人たちがネット選挙の賛否をどう判断したかをまとめたのがグラフ4Bだ。電話調査全体の結果と同様、約6割の人が反対派である。「関心があれば投票に行く」と回答した人を見ると、積極的な賛同である「賛成」が全体平均よりも少ない(9.6%)一方、強い否定である「反対」を選んだ人の率も全体平均より低い(26.3%)。その分、「どちらかというと賛成」が多くなっており(30.7%)、評価が分かれていることをうかがわせる結果となった。

 次に、インターネット投票解禁で自身の投票行為がどのように変化するかを聞いたQ8の結果を見てみる(グラフ5)。必ず投票に行く人の8割近くが「今までどおり投票所に行って投票する」(78.5%)と回答。「インターネットを利用して投票する」は15.1%にとどまり、ネット投票の有無に左右されないことがわかる。

 一方、関心があるときに投票に行くと回答した人を見ると、「今までどおり投票所」が半数強の53.5%となり、さらに「インターネットを利用」は25.4%と平均を大きく上回った。ただ、ただ、約2割が「わからない」(19.3%)と回答しており、まだ態度を決めかねている姿がかいま見える。

 最後に、先の設問Q8で「インターネットを利用して投票する」を選ばなかった人に、その理由を尋ねた(グラフ6)。どの年代でも大きな割合を占めたのが「自分の手で投票用紙に記入したいから」である。特に、70代以上男性では45.1%と半数に迫る高い割合となった。

 また、「インターネットの利用方法がわからないから」の割合が、男女とも年代を追うごとに大きくなっており、70代以上女性で35.9%に達した。今回の調査で、ネット選挙を「反対」する理由として、デジタル・デバイドを選ぶ人も多かっただけに、この問題は今後、解決すべき大きなテーマの1つとなりそうだ。

(政治山:二木頼之)

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