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第4回政治山調査「ネット選挙に関する意識調査」【分析】Part3(2012/06/13 政治山)

政治山が5月にインターネットと電話を使って行った「ネット選挙に関する意識調査」の結果、電話調査の6割以上がネット選挙には否定的な意見を持っていたことがわかった。ただ、否定的な意見の中にも、世代や性別によってさまざまな違いがある。今回は、ネット選挙解禁に「反対」とした層の考え方の違いを詳細に紹介する。
[関連ページ] 特集:ネット選挙ネット選挙に関する意識調査の結果【分析】Part1【分析】Part2

50代男性の反対派に特異な傾向

グラフ1 選挙活動のネット利用に反対の理由(反対+どちらかというと反対)

 インターネット調査でネット選挙導入に「反対」「どちらかというと反対」と回答した人に、その理由を聞いたQ6(複数回答可)の結果を見てみる(グラフ1)。全体の平均を集計すると、「他陣営や無責任な第三者による悪用(いたずら・誹謗中傷)があるから」が59.8%でもっとも多く選択されていた。「迷惑メールが大量に発生するから」「インターネットの利用には個人差(デジタル・ディバイドなど)があるから」も、それぞれ55.0%、54.1%となり、「悪用」と同レベル。「インターネット利用に付随する費用が増加するから」に関しては、そもそもがインターネット調査であることから、選択されないのもうなずける。

 では、この結果を性別と年代別に見てみよう。特徴的なのが、20代男性と60代以上女性である。20代男性はすべての項目が50%以下となり、回答が分散した。一方、60代以上女性は「悪用」が70.1%となるなど、すべてが6割を超え、反対派の多くが複数のデメリットを挙げていることがわかった。

 このほか、50代男性の「迷惑メール」が21.1%と、ほかに比べ大幅に少なくなっている。男性の50代を挟む年代の40代と60代以上を見ても、その差は歴然だ。女性ではこのような違いが見られないことから、これは50代男性だけに見られる傾向と言える。また、この層は「悪用」もすべての層の中で最低となった。「迷惑メール」と「悪用」は「害」の要素だが、「デジタル・ディバイド」は選挙の根幹に関わる「公平性」の部分と考えることができる。50代男性は、公平性への懸念はほかの層と同じようにとらえているが、「害」については比較的ゆるやかな考えを持っているのだろうか。

ネットの親和性と、選挙・政治への関心に違い?

グラフ2 選挙活動のネット利用に反対の理由(反対のみ)

 次に、Q6で強い否定である「反対」を選んだ人たちの動向を世代別に見てみよう(グラフ2)。「反対」を選んだ理由の全体平均を集計すると、「デジタル・ディバイド」(55.0%)と「悪用」(59.0%)、「迷惑メール」(54.0%)がほぼ横並びとなった。これを40代で見ると、それぞれ71.4%、64.3%、64.3%となり、この3項目で平均を上回る結果となっている。特に、「デジタル・ディバイド」はほかの世代との差が大きく、「どちらかというと反対」を含めた集計とは異なる傾向を見せた。このグラフは、右に長いほど多くの人が複数の回答を選んでるいることになるが、40代は頭1つ抜けている。「反対」の中に強い意思を感じる結果だ。

 次に特徴的なのが、30代の「費用が増加するから」である。45.5%という数字は、ほかの世代の2~3倍の高率だ。こちらも、「どちらかというと反対」を合わせた集計では見られなかった傾向でる。30代はこのほか、「デジタル・ディバイド」(36.4%)と「迷惑メール」(36.4%)の割合が、ほかの世代や全体平均よりも低くなっていることも目立つ。別の見方をすれば、「反対」の理由がバランスよく選択されていると言うこともできる。

 このような顕著な差は性別の集計では見られなかったことから、強い否定である「反対」を選んだ層の中でも世代によって、ネット選挙に対する考え方や捉え方が異なることがわかる。これまでの調査結果からこれは、ネットへの親和性と、政治や選挙への関心度というバランスの上に成り立っている傾向と見ることができよう。

電話調査では70代未満と以上で大きな差

グラフ3A、グラフ3B、グラフ4、グラフ5a、グラフ5B

 電話調査でネット選挙の賛否を聞いたQ4の結果グラフ3Aである。前回の【分析】Part1でお伝えしたインターネット調査との結果と比較すれば、その差は歴然だ。「反対」「どちらかというと反対」のネット選挙に対してネガティブな印象を持っている人が64.4%と過半を大きく超えている。特に、強い否定となる「反対」が3割強となっている点が注目される。また、これを性別・年代別に見てみると(グラフ3B)、男性より女性、50代より60代、60代より70代以上で「反対派>賛成派」という傾向が現れた。

 Q4で「賛成」もしくは「どちらかというと賛成」を選んだ人にその理由を聞いてみた(択一式、グラフ4)。もっとも多く選ばれたのは30.3%の「時間や場所を選ばずに情報を得られる」。続いて「候補者に関する多様な情報を得られる」(22.5%)、「選挙費用が減る」(21.6%)がほぼ同率で並んだ。複数選択と択一式の違いはあるが、インターネット調査で5割弱の支持を集めた「候補者からタイムリーな情報を得られる」(インターネット調査は「速報性があるから」)が6.2%と、低率だったのが特徴的だ。

 では、Q4で「反対」もしくは「どちらかというと反対」を選んだ6割強の人たちの、その理由を見てみよう(択一式、グラフ5A)。もっとも多かったのは「その他」だが、それ以外では「インターネットの利用には個人差があるから」が26.1%でトップ。次に「他陣営や無責任な第三者による悪用があるから」(22.5%)、「迷惑メールが大量に発生するから」(20.0%)と続く。インターネット調査と同様、「インターネット利用に付随する費用が増加するから」(5.0%)はもっとも少なかった。

 これを性別・年代別に見たのがグラフ5Bだ。ここで大きな差が出ているのが「インターネットの利用には個人差があるから」(=デジタル・デバイド)だ。50代女性の42.2%から70代以上女性の12.7%まで開きがある。ただこれは、70代以上女性の場合、「その他」が47.8%となっていることから、「デジタル・デバイド」を“選ばなかった”というよりむしろ、「その他」を“選んだ”結果と言うこともできよう。

「反対」の理由はデジタル・デバイド?

グラフ6 選挙活動のネット利用に反対の傾向、グラフ7 選挙活動のネット利用に反対の理由

 では、反対派の中でも強い否定である「反対」を選んだ人はどういう傾向があるのだろう。性別・年代別に見てみると(グラフ6)、70代以上の男女の割合が高いことがわかる。同年代だけで50%を超えている。やはり、インターネットへの親和性が大きく影響しているのだろうか。

 こうした人たちが「反対」とした理由を見てみると(グラフ7)、全体平均では「デジタル・デバイド」(22.0%)、「悪用」(19.7%)、「迷惑メール」(17.8%)が僅差で並び、「その他」が約1/3を集め最大となった。これを性別・年代別で見ると、男女とも50代から60代へは、「デジタル・デバイド」が拡大し(男性26.5%→35.1%、女性34.6%→34.7%)、「悪用」が減少(男性32.4%→16.2%、女性26.9%→14.3%)、「迷惑メール」は増加(男性8.8%→18.9%、女性11.5%→24.5%)――というパターンとなった。特に、「悪用」は、男女とも2倍近い違いが出ており、50代、60代女性の「デジタル・デバイド」がほぼ同率だったことからこの差が顕著に現れている。

 一方、「その他」に関しては、世代が進むにつれ割合が拡大しており、「反対」の内容や意思が明確ではなくなってくる。今回の調査では、選択肢以外の反対意見を持っているために「その他」にしたのか、どの選択肢も選べすに「その他」にしたのかがはっきりしない。ただ、世代を追うごとに「その他」が多くなってきていることから、この背景にはやはり、「デジタル・デバイド」が少なからず程度は存在すると考えるのが自然だろう。

◇        ◇        ◇

 次回は、Q7「普段投票に行っていますか?」の回答によって、ネット選挙への考え方や傾向がどう変化するかを見ていく。積極的に投票行為を行なってこなかった層が、ネット選挙導入でその意識が変わるのか――を中心に調査結果を分析する。

※政治山では、今回の調査結果分析ページで取り上げてほしい内容(クロス集計や詳細結果など)を募集しています。ご希望は「政治山フェイスブックページ」に「メッセージ」機能を使ってお送りください(対象は、第4回政治山調査です)。なお、ご希望にお応えできない場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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