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特集「参議院議員選挙2013」

各党マニフェスト・公約の意義と意味を考える (2013/7/9 早稲田大学マニフェスト研究所)

関連ワード : 全国 参院選 

熱い選挙戦が展開されている第23回参議院議員選挙(参院選)では、政治山でも比較表を掲載しているとおり、各党はマニフェストや公約、政策などを発表し、有権者の審判を仰いでいます。早稲田大学マニフェスト研究所(早大マニ研)は、各党のマニフェストが出揃った時点で、学生による各党のマニフェストのでき栄えや政策の特徴、有権者への伝える工夫などについての分析を行いました。

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参議院のマニフェストとは?

 早大マニ研ではまず、「参院選において各党からマニフェストや公約、政策集といったものが作成されているが、これはどのような位置づけとしてとらえればよいのか」について話し合った。なぜなら、マニフェストは一般的に「政権公約」と訳されるが、“政権をとった時の約束”というのであれば、国会のシステムから考えると衆議院議員総選挙の時の公約がそれにあたるからだ。したがって、参院選は「政権選択選挙ではないのではないか」という疑問点が浮上する。この点の整理をしなければならない。

参議院の存在とは何なのだろうか? 参院選は意味があるのだろうか?

各党のマニフェスト・公約を比較する学生たち

各党のマニフェスト・公約を比較する学生たち

 参議院は「良識の府」と呼ばれるが、多くの国民が本当にそう思っているかどうかは疑問である。今回の参院選の争点は「衆参のねじれ解消」だと多くのメディアでも注目されているが、ねじれを解消しようとするのは国会審議において与党の政策を数の力でスムーズに通過させようとする政局的な立場での意見であると言わざるを得ない。すなわち、現在の参議院は「良識の府」ではなく「政局・政争の府」になっている。衆議院で通過した政策や法案が、いとも簡単に十分な議論もなく参議院を通過してしまうと、非常に危険である。このような考え方(衆議院のカーボンコピー)で参議院があるとすれば本当に意味があるのだろうか?

 参議院こそ、憲法のあり方や生命にかかわる倫理的な課題や教育の課題、議員定数など、じっくりと時間をかけて結論を出さなければならない事案について議論をしていく場所であってほしい。民主主義はポピュリズムの側面もあるため、衆議院のみの一院制では危険だと考える。マニフェストも、そうした参議院の意義を踏まえたうえで、作成されるべきではないか。

 このような意見が出されたところで、各党のマニフェストについてどのような公約が描かれているのかについて確認を行った。

財政や経営戦略に触れられていない

 「震災復興」「景気回復」「無駄の削減」のほか、経済の立て直しや新たな新技術の導入による成長戦略などを描いている党が多いことに注目した。景気浮揚策や新成長産業への投資は、直近の家計や将来の国民の生活を持続可能なものとするための重要政策であることは十分認識できる。ところが、そこから国家としてどの程度の収入が見込まれ、どのような経営戦略を描いているのかが読み取れるマニフェストはなかった。

 我が国は今年度末で、国債や地方債などを合わせた借入残高が1100兆円になると見込まれており、先進国の中で最も悪い財政となっている。平たく言えば、40兆円しか収入が無いのに毎年90兆円の支出を繰り返してきたツケである。従来型の支出の思考プロセスが今後も可能であるはずもなく、場面転換が求められている。

 しかし、そのことにはあまり触れられておらず「○○を実施する」と財源根拠を示さないままの政策が列挙されている公約が多い。また、成長戦略にしても分野限定的なものが多く、「今後の日本はどのようにして食べていくのか」という国家としての経営戦略が示されていない。

マニフェストはビジョンを実現する物語

 経営戦略を描こうとすれば、はじめに考えなければならないことは「どのような国を目指しているか」という“ありたい姿“であり、このことを「ビジョン」と呼ぶ。ビジョンがあって、ビジョンを実現するための政策が語られ、そこには取り組む優先順位や行程が設けられ、実際の実現手法や財源などが描かれる。ビジョンを実現する物語にマニフェストがなっていることが望ましい。

 今回の各党のマニフェストを読み比べてみると、読み手に取ってビジョンが明確にわかるものは少なく、また、「なぜそのような国を目指しているのか」といった目的や背景などがわかりにくいものが多い。

政策とネットの連携を

 我が国初のインターネット選挙として注目を集めている今回の参院選だが、「ネットはネット、これまでの紙はチラシ」といった分離型になっている政党が多い。例えば、街頭や演説会場などで配布しているアナログのチラシにQRコードなどを掲載して「詳細はこちらから」「動画更新中」などのようにWebページへの誘導であったり、逆にWebページから候補者の街宣ルートなどを周知してチラシを配布するなどのアナログとデジタルとの連動型とし、有権者へ政策等を伝える工夫を凝らしてほしい。

 今回の参院選は盛り上がりに欠けるため、低投票率になる可能性があると言われている。しかし、日本は国内・国外共に重要課題が山積しており、場面転換を図らなければならない時期にある。我々有権者も投票を棄権する(白紙委任する)のではなく、自らの意思を示す必要がある。我々の現在の生活、将来の性格に関わることはすべて、政治によって決められているからだ。参院選は、重みのある選挙である。

 早大マニ研では、各党のマニフェスト比較も行なっている。参考にご覧いただき、ぜひ、投票へ行ってほしい。

(早稲田大学マニフェスト研究所)

 

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