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賃貸物件施工不良に関する法的問題 (2019/2/19 企業法務ナビ

関連ワード : 住宅 法律 

はじめに

 賃貸住宅の施工不良に揺れるレオパレス21(東京都中野区)が入居者に対し3月末までに転居を要請していることがわかりました。引越し費用などを同社が負担するとのことです。今回は賃貸物件に施工不良があった際の法的問題について見ていきます。

住宅

事案の概要

 報道などによりますと、2018年4月にレオパレス21が扱う賃貸集合住宅について2名の入居者から図面に記載されている屋根裏の界壁が設置されていない旨の指摘がなされ施工不良が発覚しました。建築基準法などによりますと部屋と部屋を隔てる界壁は防火・防音のために屋根裏にまで貫通して設置される必要があるとされます。その後2019年2月7日には界壁の不備に加えて新たに1324棟の賃貸物件で施工不良があったと発表しました。

 同社は該当物件の入居者に対して3月末までに転居するよう要請しておりますが混乱が広がっているとされます。

賃貸人の義務

 賃貸借契約では賃貸人は入居者から賃料を受け取り、その引き換えに入居者に賃貸物件を使用・収益させる義務を負います(民法601条)。賃貸人は自ら入居者の使用・収益を妨げてはならないだけでなく、第三者による使用妨害があった場合はそれを排除する義務があります(最判昭和5年7月26日)。

 また賃貸物件に必要な修繕を行う義務があり(606条1項)、入居者が費用を支出したときにはその償還義務があります(608条)。

解約と立ち退きの可否

 それでは賃貸物件に施工不良などの不備が見つかった場合、賃貸人から解約・立ち退きを求めることができるのでしょうか。借地借家法27条1項によりますと、賃貸人から解約の申し入れをした場合、その日から6カ月が経過すると賃貸借契約は終了するとしています。また解約申し入れには正当事由が必要とされます(28条)。

 正当事由は具体的には賃貸人自ら物件を使用する必要性やそれまでの賃貸の経過、建物の利用状況や現況、立ち退き料などが考慮されます。裁判例では賃貸人と賃借人の建物使用の必要性や耐震工事などの修繕の必要性などを総合的に判断して、立ち退き料の有無は補助的な要素としているように思われます(東京地裁平成25年2月25日等)。

その他の法的責任

 賃貸物件に施工不良などの重大な問題点があった場合には、賃借人に対して債務不履行責任(民法415条)や不法行為責任(709条)が生じる可能性があります。賃貸人には上記のような義務があり、また危険な欠陥住宅を建築し提供したこと自体が不法行為に該当しうるからです。また瑕疵担保責任により解除や損害賠償請求がなされることもあり得ると言えます(570条)。

コメント

 本件でレオパレス21の1300棟以上の物件は建築関係法令の基準を満たさず耐火性能に問題が有るとされております。同社は建て替えや補修工事を行う予定で入居者には3月末までに退去することを求めております。法令の基準を満たさず防火上の危険がある物件の工事の必要性や引越し費用、転居先の礼金などを負担するとしている点を考慮すれば解約申し入れの正当事由は認められる可能性もあると考えられます。

 しかし上記のとおり解約申し入れには最低6カ月の期間をあける必要があることから、入居者が任意に同意しない限り3月末までに退去させることは容易ではないと言えます。また今後入居者側から賠償請求などが提起されることも考えられます。

 以上のように入居者の生活の拠点を提供する賃貸業者には法令上様々な義務や責任が課されており解約・退去も簡単ではありません。賃貸業を行う際には関係法令の規制を把握しておくことが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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