CGSガイドライン改定!企業で行うべき取り組みとは (2018/11/26 企業法務ナビ)
1 はじめに
2018年9月28日、経済産業省は「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)を改訂し、公表しました。本稿は、自社のコンプライアンス対策をされている法務部員の方向けに、CGSガイドラインの概要、改訂の要点を解説し、改訂を受けて企業で行うべき取り組みを検討していきたいと思います。
・経済産業省―コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(PDFファイル)
・経済産業省―コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 サマリー版(PDFファイル)
2 CGSガイドラインとは
2015年、東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード」を公表しました。政府が成長戦略として掲げた3つのアクションプランの1つ「日本産業再興プラン」の具体的施策である「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化を官民挙げて実行する上での規範となるものです。CGSガイドラインは、コーポレートガバナンス・コードを補完し、コードを実践するために具体的に何をすべきかをまとめたものです。
・東京証券取引所―コーポレートガバナンス・コード(PDFファイル)
・野村證券 証券用語解説集―コーポレートガバナンス・コード
3 改訂の要点
今回の改訂では、会社の構成を(1)社長・CEOなどの経営陣と(2)コーポレートガバナンスを担当する企業幹部の2つに分け、何を検討するべきかがまとめられています。
- ●経営陣が検討するべきこと
- 取締役会の在り方
- 社外取締役の活用の在り方
- 経営陣の指名・報酬の在り方
- 経営陣のリーダーシップの在り方
- ●企業幹部が検討する際に注意しておきたい視点
- 取締役会の役割・機能に関する検討の視点
- 社外取締役活用の視点
- 指名委員会・報酬委員会活用の視点
- 社長・CEOの後継者計画の策定・運用の視点
経産省は今後、経団連等とも連携し、改訂版CGSガイドラインの普及と浸透を図っていく予定であるとのことです。
・経済産業省―コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)を改訂しました
4 改訂を受けて企業で行うべき取り組み
今回の改訂で最も大きい改定点は、企業幹部の視点4に挙げた後継者計画のあり方についてです。CGSガイドラインでは、全146ページ中40ページ近くがこの分野に費やされています。後継者計画の基本的な考え方や検討手順を新たに示すとともに、10社の具体的な実例の紹介がなされています。
後継者計画の立て方について、このような提言がなされています。
- 後継者計画には、選定・育成という2つの要素がある。並行して行うこと
- 十分な時間と資源をかけて後継者計画に取り組むこと
- 社長・CEOは就任時からみずからの交代を見据えて後継者計画に着手すること
- 通常想定される中長期的なプランのほか、不測の事態に対応するための緊急策も用意すること
- 計画の客観性・透明性を高めるため、社外取締役を中心とする指名委員会が計画の全般に関与すること
- 計画を言語化・文書化し、指名委員会等に共有すること
- 株主等のステークホルダーに対して、計画の状況や指名委員会の構成等について情報発信すること
会社を存続させるためには若い後継者に事業を託していくことが必要ですが、「まだ先のことだから」「社長は健康だから」と、問題を先送りにしがちです。円滑な事業継続のために必要な手続きであることを意識し、すぐに取り組むべき課題といえるでしょう。
CGSガイドラインには、ここで取り上げた内容以外にも、実務上検討すべき事項が数多く取り込まれています。ガイドラインを全て読むことは時間的になかなか難しいかもしれません。まずは18ページのサマリー版を読むことから始め、より詳しいことを知りたくなったときにガイドライン完全版を読むなどの使い方でも、取り組むべき課題が見えてくることかと思います。
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