2014年のがん罹患率、男性は胃がんの72.0、女性は乳がんの82.9が最高―国がん (2018/9/19 メディ・ウォッチ)
2014年におけるがんの人口10万対の年齢調整罹患率は354.6で、男性429.4、女性300.7となった。部位別に見ると、男性では▼胃72.0▼大腸(結腸・直腸)67.9▼肺62.1▼前立腺58.6―、女性では▼乳房82.9▼大腸(結腸・直腸)40.4▼子宮29.3▼肺23.7―で高い―。
国立がん研究センター(国がん)が9月15日に公表した「日本のがん罹患数・率の最新全国推計値」から、こういった状況が明らかになりました。
また2014年の最新データをもとにすると、今年(2018年)は101万3600人(男性57万4800人、女性43万8700人)ががんに罹患し、37万9900人(男性22万3000人、女性15万7000人)ががんで死亡すると予測されます。
2014年のがん罹患数は86万7408人、人口10万人対の年齢調整罹患率は354.6
この推計は「地域がん登録」のデータを活用したもので、前年(2013年)・前々年(2012年)に引き続き47都道府県すべてでデータが揃っています。また、前年(2013年)に続いて、全都道府県で国内精度基準が満たされており、今回の推計値も「より真の罹患数に近い」ものと国がんはコメントしています。
まず2014年の1年間にがんと診断された人は、日本全国で86万7408人と推計され、前年の男女合計実測値(84万8830人)より増加しました。人口10万対の年齢調整罹患率は354.6で、こちらも前年の実測値(351.1)より増加しています。
男女別に見ると、がん罹患数は男性50万1527人(同49万916人)、女性36万5881人(同35万7914人)、人口10万対の年齢調整罹患率は男性429.4(同427.0)、女性300.7(同296.2)となっており、男女とも前年よりやや増加しています。
部位別の罹患率、最高は男性では胃がんの72.0、女性では乳がんの82.9
部位別の罹患数・人口10万対の年齢調整罹患率を見てみると、次のようになっています。
【肺】
▼罹患数:男女計11万2618人(同11万269人)、男性7万6789人(同7万5517人)、女性3万5739人(同3万4752人)
▼罹患率:男女計40.8(同40.6)、男性62.1(同62.2)、女性23.7(同23.4)
【大腸(結腸・直腸)】
▼罹患数:男女計13万4453人(同13万1984人)、男性7万6718人(同7万4793人)、女性5万7735人(同5万7011人)
▼罹患率:男女計53.1(同52.7)、男性67.9(同67.3)、女性40.4(同40.2)
【乳房】
▼罹患数:男女計7万6780人(同7万3339人)、男性523人(同551人)、女性7万6257人(同7万2788人)
▼罹患率:男女計42.6(同41.1)、男性0.5(同0.5)、女性82.9(同80.0)
【胃】
▼罹患数:男女計12万6149人(同12万6092人)、男性8万6656人(同8万6526人)、女性3万9493人(同3万9566人)
▼罹患率:男女計46.7(同47.6)、男性72.0(同73.4)、女性25.8(同26.4)
【子宮】
▼罹患数:女性2万4944人(同2万4061人)
▼罹患率:女性29.3(同28.4)
【食道】
▼罹患数:男女計2万2710人(同2万2357人)、男性1万9067人(同1万8812人)、女性3643人(同3545人)
▼罹患率:男女計9.2(同9.2)、男性16.7(同16.7)、女性2.8(同2.6)
【肝および肝内胆管】
▼罹患数:男女計4万827人(同4万1526人)、男性2万7315人(同2万7693人)、女性1万3512人(同1万3833人)
▼罹患率:男女計14.7(同15.2)、男性22.9(同23.7)、女性7.7(同8.0)
【膵臓】
▼罹患数:男女計3万6156人(同3万5132人)、男性1万8745人(同1万8306人)、女性1万7411人(同1万6826人)
▼罹患率:男女計12.9(同12.8)、男性15.9(同15.8)、女性10.3(同10.3)
【前立腺】
▼罹患数:男性7万3764人(同7万959人)
▼罹患率:男性58.6(同57.6)
【皮膚】
▼罹患数:男女計1万9528人(同1万9014人)、男性9871人(同9491人)、女性9657人(同9523人)
▼罹患率:男女計6.7(同6.7)、男性8.1(同7.9)、女性5.7(同5.7)
罹患率の高い部位を男女別に見ると、男性では▼胃72.0▼大腸(結腸・直腸)67.9▼肺62.1▼前立腺58.6―、女性では▼乳房82.9▼大腸(結腸・直腸)40.4▼子宮29.3▼肺23.7―などとなっています。
2014年のがん死亡率、男性では肺がんの39.7、女性では大腸がんの12.2が最高
次に死亡率(年齢調整、人口10万対)を部位別に見てみましょう。
男性では高いほうから、▼肺39.7(前年から0.7ポイント減)▼胃24.1(同1.1ポイント減)▼大腸(結腸・直腸)21.0(同0.1ポイント減)▼肝および肝内胆管15.0(同1.0ポイント減)▼膵臓13.3(同増減なし)―という順です。
また女性では、同じく高いほうから、▼大腸12.2(同増減なし)▼乳房11.8(同0.2ポイント減)▼肺11.4(同増減なし)▼胃9.0(同0.2ポイント減)▼膵臓8.5(同0.1ポイント増)―となっています。
男女では50代から罹患率が上昇するが、女性では20代から上昇するがん種も
また、性別・部位別・年齢階級別に罹患率を見てみると、男性では、5大がんのいずれも50代に入ると罹患率が急上昇するものの、▼肺がんは年齢が上がるにつれて罹患率も高くなり続ける▼大腸がん(結腸・直腸)は年齢が上がるにつれて罹患率も高くなり続けるが、70代後半から上昇ペースが鈍化する▼胃がん・肝臓がん(および肝内胆管がん)は80代前半まで「年齢の上昇につれて、罹患率が上昇する」が、80代後半に入ると減少する▼前立腺がんは70代まで「年齢の上昇につれて、罹患率が上昇する」が、80代に入ると減少する―といった傾向が読み取れそうです。
一方、女性では、▼子宮頸がんは20代後半から罹患率が上昇し、50代後半でピークを迎え、その後、緩やかに減少する▼乳がんは30代から罹患率が急騰し、40代後半から60代までがピークとなり、その後、減少する▼胃がん・大腸がんは40代後半から罹患率が急上昇し、年齢が上がるにつれて罹患率も上昇し続ける▼肺がんも40代後半から罹患率が急上昇し、年齢が上がるにつれて罹患率も上昇し続けるが、70代に入ると上昇ペースがやや鈍化する―といった傾向があるようです。
読み取れそうです。
同じ部位のがんでも、男女で罹患傾向が大きく異なるため、こうした点に留意したがん対策(とりわけ検診体制など)が求められます。
肝がん、西日本で罹患比・死亡比ともに高い
さらに都道府県別に標準化罹患比・死亡比(全国の罹患率推計値を100、死亡率を100として、各都道府県の状況が全国値と比べてどの程度なのかを見たもの)を見てみると、罹患傾向と死亡傾向とは一致しないことが再確認できます。地域特性を踏まえた、予防対策・治療対策を打ち立てる必要があるでしょう。
【男性全部位】罹患比が高いのは「関西地方や中国地方」、死亡比が高いのは「北海道や東北地方」
【女性全部位】罹患比が高いのは「北海道、広島県、富山県、石川県」、死亡比が高いのは「北海道」
【胃がん】罹患比が高いのは、男女とも「東北地方、北陸地方、関西地方、中国地方」、死亡比が高いのは、男女とも「東北の日本海側や北関東、関西地方」
【大腸がん】罹患比が高いのは、男女とも「東北地方や広島県」、死亡比が高いのは、男性では「東北地方や茨城県」、女性では「北海道や東北地方」
【肝がん】近畿以西の地域で罹患比・死亡比とも高いが極めて高い
【肺がん】罹患比が高いのは、男女とも「北海道や関西地方、死亡比が高いのは、男女とも「北海道」
【乳がん】北海道や広島県で罹患比が高く、青森県・東京都・神奈川県・佐賀県で死亡比が高い
なお、こうした最新データをもとに、国がんでは▼生涯でがんに罹患する確率は男性62%(前年から変わらず)、女性47%(同1ポイント上昇)▼生涯でがんにより死亡する確率は男性25%(同変わらず)、女性16%(同変わらず)▼今年(2018年)の状況は、がん罹患数101万3600人(男性57万4800人、女性43万8700人)、がんによる死亡数37万9900人(男性22万3000人、女性15万7000人)―といった推計も行っています。
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