地球温暖化対策、企業の役割について (2018/7/30 企業法務ナビ)
1.はじめに
連日、記録的猛暑が続いていますが、7月23日には都内で40度超えを記録しました。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、このままのペースで温室効果ガスが排出されると2040年ごろには産業革命以前と比較して1.5度上昇するとの予測をまとめました。
地球温暖化防止の国際的枠組みである「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑えることを目標としています。これは国家間における目標を定めたものですが、国内では地球温暖化対策として企業に対してどのような定めが置かれているのでしょうか。また、企業にはどのような役割が求められ、温暖化の対策を行うことによってどのようなメリットがあるのでしょうか。
2.地球温暖化とは
そもそも、地球温暖化とはどのようなことを言うのでしょうか。大塚教授によれば、「地球温暖化(気候変動)とは、二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの排出量の増大によって温室効果ガスの大気中の濃度が高まり、地表面の温度が上昇し、その結果、海水の膨張、極地の氷解による海面上昇、気候メカニズムの変化による異常気象の頻発等が生ずること」をいい、「これによって、沿岸部の侵食、洪水や砂漠化、農作物の生産の減少や生態系への悪影響、新たな伝染病の発生などがもたらされること」をいうとされています(大塚直『環境法』[第3版]143頁)。
3.地球温暖化対策の推進に関する法律の規定について
(1)企業にとって重要な規定として、まず温室効果ガス算定排出量の報告義務を定めた地球温暖化対策推進法(以下、「法」とします)26条が挙げられます。
(2)また、事業者は、
・事業活動に伴う排出抑制等の努力義務を負い(法23条)
・国民の日常生活における排出抑制に寄与しなければならない(法24条)としています。
また、これを受けて、主務大臣は、排出抑制等指針を策定することとなっています(法25条)。
4.コメント
事業活動に伴う排出抑制等のために必要な措置及び情報提供等国民の取組みに寄与する措置等については、努力義務であって、この措置を取らないことによる処分や罰則等は規定されていません。
しかしながら、二酸化炭素ほか温室効果ガス削減に取り組むことにより、その効果の算定・報告・公表という段階を踏むことにより、削減に取り組んでいることをアピールすることによって企業イメージを向上させることもできますし、ESG投資という形で融資を受けやすくなるということも考えられます。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)に配慮する企業を選んで行う投資のことを言いいます。国連の投資原則には2016年4月時点で1500を超える機関が署名し、運用資産額は62兆ドルにまで達しました。日本でも年金積立金管理運用独立法人(GPIF)ほか60機関が署名しており、急速に関心が高まっています。リスクと機会が明確になるという点で投資を呼び込みやすいという点がESG投資のメリットといえるでしょう。
さらに進んで、いわば企業版「パリ協定」ともいえるSBTを設定する企業も増えています。厳しい目標を設定しつつ工夫をすることでビジネスチャンスをつかむことができるという側面もあります。
ぜひ、一度温室効果ガスの削減を法務から提案してみてはいかがでしょうか。
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