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不当表示の摘発について (2018/5/10 企業法務ナビ

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1 はじめに

 商品や役務を取引する際、企業は広告に当該商品や役務に関する情報を載せます。一般消費者の合理的な選択の妨げとならないよう、表示は適切に行う必要があります。景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、広告の不当表示を禁止しています。

 近年、消費者庁は不当表示の摘発を加速しており、17年度の措置命令件数(50件)は前年の2倍近くに達しています。そこで今回は、(1)不当表示の類型(2)不当表示認定のリスクについて(3)打ち消し表示について(4)企業における今後の方針について検討していきます。

製品広告

2 不当表示の類型

 景表法が定める不当表示には、3つの類型があります。

(1)優良誤認表示(5条1号)
 商品等について、実際のものよりも著しく優良であると示すもの

(2)有利誤認表示(5条2号)
 商品等について、同種の商品等を提供する他の事業者によるものよりも、取引の相手方にとって著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

(3)その他誤認されるおそれのある表示(5条3号)

 従来は(1)優良誤認表示の摘発が中心でしたが、近年は(2)有利誤認表示の摘発が増えており、17年度の摘発50件のうち20件を占めるようになっています。(2)の摘発が増えた理由について、消費者庁表示対策課は、「摘発件数を目標として掲げている訳ではない」としていますが、「どのような表現が有利誤認に当たるのか、情報やノウハウを蓄積できていることが大きい」としています。今後も、「違反が疑われる事例は積極的に調査していく」との方針です。

3 不当表示認定のリスクについて

 不当表示を行ったと認定された企業に対しては、再発防止策の策定などを内容とする措置命令(第7条)がなされることがあります。措置命令に従わない場合は、必要な措置を講じるように勧告(第28条1項)されることもあり、勧告に従わない場合はその旨が公表(同条2項)されることもあります。公表された場合、企業のイメージが悪化することは避けられません。

 悪質な不当表示と認定された場合は、制裁措置として、課徴金納付命令(第8条)がなされることがあります。対象となるのは、売上額が5000万円以上あり、企業側が「相当の注意」を怠っていたとされる場合です。2016年の導入時は1件でしたが、17年度は19件に増えています。

 課徴金の額は売上額の3%であり、会社に対して少なくない損害になる可能性があります。今年3月、SIMフリースマホ製造・販売、MVNOサービスを展開するプラスワン・マーケティングは、8824万円の課徴金納付命令を受けています。

4 打ち消し表示について

 今後、いわゆる「打ち消し表示」が争点になっていくと見られています。打ち消し表示とは、体験談などに「個人の感想です」などの文言を添えたり、キャンペーンの例外条件を注釈でつけたりする手法を指します。消費者庁は昨年7月、これらの小さな注釈を多くの消費者が見落としているといった調査結果を発表しています。適切な表示方法についての判断基準は、今後の措置命令を通じて明らかになっていくと思われます

5 企業における今後の方針

 景表法は不当表示該当性について明確な基準を置いていないため、消費者庁は「一般消費者の目から見てどうか」という観点から総合的に判断しているようです。打ち消し表示について適切な表示方法の基準が固まっていくのはまだ先になりますが、一般消費者の立場に立って、自社の広告を客観的に眺めることが有用であると考えられます。

 措置命令を受ける企業の業種は多岐に渡っており、不当表示のリスクが高まっていく中で、独自の対応を取っている企業もあります。

  • 表示コンプライアンス委員会の設置(パナソニック)
  • 最新技術と表示の知識を持つ担当者を製品開発研究所に配置(花王)
  • 開発担当者と品質管理者で広告を二重に確認する体制の整備(グリー) *全て敬称略

 景表法は、企業に表示管理担当者の設置などを義務付けています。上記企業の例を参考にしたり、措置命令の事案を検討したりすることで、自社に最適な表示管理方法を模索していくことが必要です。

提供:企業法務ナビ

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