東洋ゴムが「TOYO TIRE株式会社」へ、商号変更について (2018/4/4 企業法務ナビ)
はじめに
東洋ゴム工業株式会社は先月29日、定時株主総会で社名を「TOYO TIRE株式会社」に変更する議案が可決、承認された旨発表しました。これにより2019年1月1日から正式に社名が変わるとのことです。今回は会社の商号とその変更手続きの注意点について見ていきます。
事案の概要
東洋ゴムの発表などによりますと、同社は1945年8月に「東洋ゴム化工株式会社」と「株式会社平野護謨製造所」が合併し「東洋ゴム工業株式会社」として設立されたとのことです。設立70余年を経て従業員数、売上高、営業利益などの海外比率が過半を占め、よりグローバル化とブランド力向上を目指し、商号も「TOYO TIRE株式会社」、英文表記:Toyo Tire Corporationとし、定款の一部変更を行ったとされます。
商号とは
社名、すなわち商号とは商人が営業上自己を表示するために用いる名称を言います(会社法6条1項)。商号は会社の目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額、発起人の氏名住所と同様に定款記載事項となっており(27条)、原始定款に定める必要があります。また同時に登記事項(911条3項2号)ともなっていることから商号変更の際には定款の一部変更とその旨登記する必要があります。
商号変更の手続き
商号変更の具体的な流れとしては、まず取締役会や株主等によってどのような商号にするかを决定します。商号は上記のとおり定款記載事項となっていることから定款変更手続きを要し、株主総会の特別決議による承認が必要となります(466条・309条2項2号)。そして関係取引先などに商号変更を連絡し、商号変更登記を2週間以内に行ないます(915条1項)。その後税務署や日本年金機構などの行政機関に届出をすることになります。
商号决定の際の注意事項
商号にはいくつかルールが存在し、それに則った商号でなければ認められません。まず会社の形態に沿って「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」という文字を必ずその商号の中に用いなければなりません(6条2項)。この会社の形態を表す文字は前につけることも後につけることも中間に入れることもできます。
次に数字については漢数字だけでなく「1」「2」「3」といったアラビア数字も使用できます。平成14年法務省告示以前は漢数字のみが認められておりました。また同年からローマ字も使用が可能となりました。そして「・」や「-」「,」「’」「&」も文字を区切るための符号として使用できます。また「.」も文字を区切る場合、または単語の最後に使用できます。しかし「(」は使用できません。
コメント
本件で東洋ゴム工業株式会社はローマ字と「株式会社」表記を組み合わせて「TOYO TIRE株式会社」となりました。商号は基本的に自由に決めることができますが、以上のようにかなり細かくルールが決められております。これ以外にも同一本店所在地に同じ商号を持つ会社を作ることができないことや、銀行や保険会社のように許認可が必要な業種ではこの許認可がなければ「銀行」「保険」といった文字をつけることができません。
またルールには沿っていても、有名企業などの商号と類似し、一般に誤認されやすい商号を使用することは不正競争防止法などの他の法令に違反する場合もあります。商号はその会社の重要な顔となるものです。商号の决定や組織再編などで商号を変更する際にはこれらのルールを正確に把握して行うことが重要と言えるでしょう。
- 関連記事
- 富士重工業がSUBARUに社名変更 期待される効果とは?
- タカタが中国系企業に主力事業を譲り渡し、事業譲渡について
- 事業の分社化とは
- 「からやま」が「かつよし」を提訴、周知表示混同惹起とは
- 会社設立段階における暴力団排除への動き