地域医療構想調整会議での議論「加速化」させよ―厚労省・武田医政局長 (2018/1/19 メディ・ウォッチ)
厚生労働省は1月18日に、全国厚生労働関係部局長会議を開催し、次年度(2018年度)における厚生労働行政の重要事項を、都道府県などの保健福祉担当者に説明しました。
厚労省のサイト「平成29年度全国厚生労働関係部局長会議資料」
医政局の重要事項については、厚生労働省医政局の武田俊彦局長が、地域医療構想や医師偏在対策を中心に説明しました。
地域医療構想調整会議での議論、「2018年度までが特に重要」
2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となることから、医療(特に回復期・慢性期)・介護ニーズが飛躍的に高まり、地域における医療提供体制の再編(機能分化・連携の強化)が必要となります。このため、各都道府県が「2025年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能別の必要病床数」などを推計し、地域医療構想(いわば「2025年における医療提供体制像」)として昨年(2017年)3月までに策定・公表しています。
地域医療構想の実現に向けては、都道府県が地域ごとに開催する地域医療構想調整会議(以下、調整会議)などで医療関係者らが話し合い、医療提供体制を再編して「2025年における医療提供体制像」に近づけるために「各医療機関がどのような役割を担えばよいのか」を具体化していきます。
厚労省は、「都道府県が何をしなければいけないのか」「どういう点から検討していけばよいのか」などを、これまでも通知の発出や研修会開催などで都道府県に伝えてきましたが、昨年(2017年)12月、「都道府県がすべきこと」がより明確になるように、地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)での議論を整理しています。武田局長は、この「議論の整理」の中で、調整会議での協議の進め方が次のように明確化されたことを説明しました。
▼公立病院や公的医療機関などの具体的な対応方針(2025年時点の医療機能ごとの病床数など)について、調整会議で今年度(2017年度)中に協議する
▼医療機能などを大きく変更する予定のある医療機関の対応方針も、速やかに協議する
▼遅くとも来年度(2018年度)末までに、全医療機関の対応方針を協議する
▼調整会議で関係者の合意が得られた対応方針を、都道府県が毎年度取りまとめる
また武田医政局長は、昨年(2017年)6月に閣議決定された「骨太方針2017」(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)の中で、「2年程度かけて、調整会議で集中的な検討をする」よう促されていることを挙げ、「今年度(2017年度)から来年度(18年度)が重要な年になる。議論を加速化してほしい」と都道府県担当者に呼び掛けました。
地域医療構想調整会議を外来医療についても検討する場に
医師の偏在対策については、医師需給分科会が昨年(2017年)12月にまとめた「早急に着手すべき対策」に基づいて、医療法や医師法の改正案を厚労省が準備しています(2018年通常国会に提出予定)。武田医政局長は、今般の医師偏在対策の柱は、(1)医師少数地域での勤務を医師に促す環境整備(2)都道府県の体制強化(3)外来医療機能の偏在などへの対応―であることを確認。
医師少数地域の診療所などで医師が働くに当たっては、現状、「自分の代わりを務める医師がおらず、休暇が取れない」「自分の専門外の患者を診療することになった場合に、相談できる医師が身近にいない」といった不安を感じるかもしれません。そこで、偏在対策の(1)では、▼医師が交代で勤務できるように、医療機関からの医師派遣を複数人セットで行うを派遣する ▼地域の中核病院が、専門外の症例に関する助言などを行う―ことで、安心して診療できる勤務環境を整えていきます。医師派遣や助言提供を行い、勤務環境整備に貢献する医療機関には、経済的なインセンティブ(補助金など)が付与されることになります。
また、そもそも医師不足地域での勤務を希望する医師の数を増やすために、「医師少数地域で一定期間勤務した医師を厚生労働大臣が認定する制度」を新設。武田局長は、「認定を得た医師に対しては、さまざまなインセンティブを検討したい」と述べています。
一方、(2)の「都道府県の体制強化」では、3か年の「医師確保計画」の策定が都道府県に義務付けられます。「医師確保計画」には、「地域の医療ニーズに見合う医師確保の目標値」などを盛り込み、目標達成に向けて、都道府県が大学医学部やその付属病院などと連携しながら、医師派遣や医師の地域定着策に取り組めるように、都道府県に権限(例えば、医学部に「地元出身者枠」を設けるよう大学に要請する権限)を与えます。
また、(3)の「外来医療機能」の関連では、無床診療所の開設場所が都市部に偏ってしまっている現状を踏まえて、「外来医療の需要があるにもかかわらず供給が不足している地域=開業が成功しやすい地域」の情報 を、開業を希望する医師に提供する仕組みを設けます。「外来医療の供給が不足している地域」での開業を促す狙いがあり、どのような情報を提供するかは、二次医療圏ごとに医療関係者らが話し合って決めることになります。この外来医療に関する協議の場について武田局長は、「地域医療構想調整会議も活用してはどうかと考えている」と述べています。
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