不適切な人材紹介会社の情報、都道府県に提供を―厚労省 (2018/1/10 メディ・ウォッチ)
人材紹介会社が、求職者を病院などに紹介して手数料を得た後、その求職者に入職後2年以内に転職を勧めることは不適切である。医療機関は、こうした不適切な人材紹介会社について都道府県労働局に情報提供してほしい―。
厚生労働省は昨年(2017年)12月27日に通知「職業安定法等の改正の施行に向けた周知の取組について」を発出し、医療機関に協力を呼び掛けました。今年(2018年)1月1日施行の改正職業安定法などで、人材紹介会社の遵守事項が見直されることを踏まえた対応です。
紹介手数料や早期離職者数を厚労省のサイトで確認可能に
求職中の看護師らを病院などに紹介する有料サービスをめぐっては、人材紹介会社によって、▼手数料の金額▼入職後早期に離職した場合に返戻する手数料(返戻金)の金額―などにばらつきがあると指摘されます。また日本医師会などは、「紹介後に早期退職を促し、別の医療機関に紹介することで、新たに手数料を得る“求職者の使い回し”が行われている可能性もある」などと問題視しています。こうした状況を踏まえて、今年(2018年)1月1日に施行された改正職業安定法で、人材紹介会社に情報公開が義務付けられ、その内容が厚労省のウェブサイト「人材サービス総合サイト」に掲載されています。
このウェブサイトで、▼年度ごとの紹介実績(就職者数)▼年度ごとの、紹介後6か月以内の離職者数▼手数料(例えば「年収の30%」など)▼返戻金の規定(例えば「入職後1か月以内に離職した場合、手数料の50%を医療機関に返戻する」など)―などの情報を人材紹介会社ごとに確認できます。
また、人材紹介会社の遵守事項を定める告示「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」も、1月1日に改正され、▼自らの紹介により就職した人に対して、入職後2年間は転職を勧奨してはならない▼人材紹介会社が受け取る手数料などを、求職者・求人者双方に明示しなければならない―といったことが新たに盛り込まれました。
法規違反の人材紹介会社、医療機関は都道府県に通告を!
昨年(2017年)12月27日に厚労省が発出した通知では、こうした法規改正を踏まえて病院などに対し「規定に反する人材紹介会社があれば都道府県労働局まで情報提供する」よう促しています。また、入職後の早期離職者数(上記ウェブサイトで公表されるもの)を人材紹介会社が把握して情報公開できるように、人材紹介会社側から問い合わせに病院が協力する(離職者数を伝える)ことも求めています。
必要な看護職員らを自己応募などだけで確保できない病院にとっては、人材紹介会社を利用せざるを得ませんが、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査では「人材紹介会社を通じて入職した職員は早期離職率が比較的高く、実際には職員不足を解消できていない」という課題が浮き彫りになっています(関連記事はこちら)。病院側の窮状に漬け込むような不適切な行為を行う人材紹介会社があれば、早急に改める必要があります。
医療機関側にも、労働条件の見直し内容を求職者に伝える義務がある点に留意
一方で、今般の改正職業安定法では、職員募集を行う病院側にも一定の義務を規定しています。
具体的には、求人票などに提示した労働条件を、やむを得ず変更する場合に、変更内容を求職者側に速やかに明示することが求められます。例えば、病院が基本給を「月30万円」と提示して求人募集を行っていたにもかかわらず、やむを得ず「月28万円」に変更する場合、求人票の内容を速やかに改め、「当初:基本給30万円/月→基本給28万円/月」のように記載しなければいけません。また、面接などを進めている最中に労働条件を変更する場合には、変更内容を明示した書類を求職者に渡すなどして、求職者が、変更後の労働条件を踏まえて入職するかどうかを検討できるようにする必要があります。
課題解決に向けて、人材紹介会社側が襟を正すことが強く求められますが、病院側も「労働環境の整備などによる職員の定着」を図ることなどが重要でしょう。
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