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ヤマダ電機が不適切説明で謝罪、抱き合わせ販売について (2017/8/9 企業法務ナビ

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はじめに

ヤマダ電機は8日、人気ゲーム機「Nintendo switch」とネット接続機器を抱き合わせ販売しているのではないかとネット上で批判がなされていることを受け謝罪文を発表しました。商品や役務を販売する際に別個の商品などをセットで販売すると、場合によっては独禁法で禁止された抱き合わせ販売となることがあります。今回はその要件を公取委の審決例から見ていきます。

ゲーム機

事案の概要

ヤマダ電機の発表によりますと、同社では6月から「Nintendo switch」とWifi接続機器「SoftbankAir」の販促策として、両方を同時に購入した場合に「Nintendo switch」用ソフトを特典として付属させていたとのことです。しかし一部店舗では「Nintendo switch」単品での販売はできないが、「SohfbankAir」とセットであれば販売できるので「SoftbankAir」の購入をお勧めしますといった説明を行っているとの批判がTwitter上などでなされました。このような独禁法違反に当たるのではないかとの批判を受け同社は調査の上、店員に対する指導不足であったとして指導強化を徹底するとしています。

抱き合わせ販売とは

独禁法の一般指定10項によりますと「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」を抱き合わせ販売として禁止しています。商品と商品を組み合わせてセットで販売すれば直ちに抱き合わせとなるわけではなく、一定の要件のもとで個別具体的に判断されることになります。具体的な要件について以下見ていきます。

行為要件

(1)他の商品又は役務
主たる商品に付ける商品は「他の」もの、すなわち別個の商品である必要があります。ガイドラインによりますと、「組み合わされた商品がそれぞれ独自性を有し、独立して取引の対象とされているか否か」で判断するとしています。つまり需要者が異なるか、内容や機能が異なるか、需要者が単品で購入できるかなどの点が考慮されます。審決例としてはMS社の「エクセル」「ワード」「アウトルック」はセットになっておりましたが、内容、機能が異なり、それぞれ単品でも購入できることから「他の」商品に該当するとしています(平成10年12月14日)。他にも人気ゲームソフトと他の在庫ソフト、エレベーターの部品と取替工事などがあります。

(2)購入させること
他の商品を「購入させ」るとは、「個別主観的に当該個々の顧客が取引を強制されたかどうか」ではなく客観的に顧客が他の商品の購入を余儀なくされているかで判断するとしています(審決平成4年2月28日藤田屋事件)。つまり本来は主たる商品のみの購入を望んでいても、それを購入するためには他の商品を買わざるをえない状況であるかということです。販売者の主たる商品市場における経済上の地位や、主たる商品のシェア、需要に対する供給量などから判断されることになります。

公正競争阻害性

違法な抱き合わせとなるためには「不当に」なされること、すなわち公正競争阻害性が無くてはなりません。抱き合わせ販売における公正競争阻害性の内容は(1)顧客の商品・役務の選択の自由を侵害し不公正であること、(2)従たる商品市場における自由競争の減殺であることとされております。(1)については相手方の数、行為の反復継続性、行為の伝播性を、(2)については市場におけるシェア、出荷額、規模、従たる商品における競争者と顧客の状況などから競争の減殺を判断するとされております。

コメント

本件でヤマダ電機は「Nintendo switch」と「SoftbankAir」の両者を購入した顧客に対し専用ソフト付けるというキャンペーンを行っておりましたが、この行為それ自体は独禁法上問題となる可能性は低いと考えられます。

仮に「Nintendo switch」を購入したい顧客に対し、「SoftbankAir」の購入を余儀なくされる状況にしていた場合、顧客の商品選択の自由が侵害され、また、Wifi接続機器市場における自由競争を減殺することになると判断される可能性はあると言えます。

以上のように抱き合わせ販売の適法性のポイントは、人気商品や需要の高い商品の購入に際して、顧客が本来不要としている商品・役務の購入を余儀なくされる状況に陥らせるかという点に重点があると言えます。

その意味では、単品購入も可能であれば原則的に問題が生じない可能性が高いと考えられます。顧客の選択の自由を害しないか、セット商品での市場の競争に悪影響を出さないか等を考慮して、抱き合わせとならないよう注意しキャンペーンを展開することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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