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医療ビッグデータ法整備 治療・薬開発に活用 個人情報保護などの問題は? (2017/1/17 JIJICO

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医療ビッグデータ法と個人情報保護法との関係

医療機関等で蓄積された個人の情報をビッグデータとして新薬の開発や治療効果の分析といった公益目的で利用できるようにするための「医療分野の研究開発に資する医療情報提供促進法案(仮称)」(以下「医療ビッグデータ法」といいます)が、本年1月20日に召集される通常国会で提出されるとの報道がありました。

センシティブな個人情報が利用されることにならないか、個人情報保護法との関係を解説してみます。

カルテ

改正個人情報保護法を背景に医療ビッグデータ法が推進されることに

平成17年4月に施行された個人情報保護法は、情報通信技術の発展や事業活動のグローバル化等の急速な環境変化により、法律の制定当初には想定されていなかったパーソナルデータの利活用が可能となったことを背景として、平成27年9月に改正されました。

この改正個人情報保護法は、本年5月の全面施行が予定されているところですが、この改正法では、「個人情報」を特定の個人を識別することができる情報と定義付けた上で、本人の人種、信条、病歴など本人に対する不当な差別又は偏見が生じる可能性のある個人情報をさらに「要配慮個人情報」として位置付け、その取得及び第三者提供については原則として本人の同意を得ることを義務付ける一方で、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を「匿名加工情報」と位置付け、これについては目的外利用や第三者提供を行う際の本人の同意を不要として、その利活用を確保できるようにしています。

要配慮個人情報が漏洩することは本当に無いのか?

しかしながら、今回の医療ビッグデータ法では、国が医療系の学会や医薬品の開発などを行っている団体を「認定機関」に指定した上で、この認定機関が、医療機関等が保有する個人情報を集めた上で、情報を匿名化し、本人の同意を得ることなくこれを大学や研究機関に提供できるようになっているようです。

匿名化されている状態で大学や研究機関に提供されるのであれば、改正個人情報保護法との関係で問題がないように思いますが、その前段階として、医療機関等から認定機関に対し「要配慮個人情報」が提供されるわけですから問題が生じます。

特に、「要配慮個人情報」については、オプトアウト(予め必要な事項を本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに個人情報保護委員会へ届け出ておくことにより、本人の事前同意を不要とすること)の方法であっても第三者提供ができない仕組みになっているのですが(同法23条2項)、「法令に基づく場合」には、そもそも本人事前同意が不要であるため(同法23条1項1号)、新たな法律を作ることで、本人の事前同意の取得というハードルをクリアするということのようです。

プライバシーという個人の利益と新薬の開発や治療効果の分析といった公益が対立する場面ですが、センシティブな「要配慮個人情報」は、一旦漏洩してしまうと本人の人生を台無しにしてしまいかねない問題を孕みますので、安易に公益を優先させることなく慎重な議論を重ねて頂きたいものです。

提供:JIJICO

著者プロフィール
田沢剛

田沢 剛/弁護士
東京大学法学部卒業、同年司法試験に合格。2年間の司法修習を経て、裁判官に。名古屋、広島、横浜などの裁判所で8年間裁判官を務め、退官。裁判官として、一般民事、行政、知的財産権、刑事、少年、強制執行、倒産処理などの事件を担当。2002年に相模原市で弁護士事務所を開業。2005年に新横浜にオフィスを移転し、新横浜アーバン・クリエイト法律事務所を開設。現在に至る。オールラウンドに案件を扱うが、なかでも破産管財人として倒産処理にあたるなど、経営問題に辣腕を振るう。

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