市と鹿児島銀行の奮闘で「日置オリーブ」を新しい特産品へ (2016/12/9 nezas)
地方創生のために鹿児島銀行は日置市と提携し、共同で鹿児島オリーブ株式会社を設立した。今回はその「日置オリーブ」のプロジェクトに関わる鹿児島銀行の取り組みについて紹介する。
オリーブを特産品に
鹿児島県西部の日置市は薩摩半島のほぼ中央に位置し、西側は日本三大砂丘の一つである白砂青松の吹上浜と東シナ海に面している。温暖で暮らしやすく、鹿児島市のベッドダウンとして栄えている。
この日置市と鹿児島銀行が共同で設立している鹿児島オリーブ株式会社は、「KAGOSHIMA OLIVE」のブランド名を掲げている。そして直営店や独自のオンラインショッピングサイトを通じて、オリーブオイルや化粧品を販売している。
「KAGOSHIMA OLIVE」の特徴は、栽培から収穫、精製、商品化までを自ら管理し、鑑定士と連携して規格基準での品質・風味を守っていることにある。国際オリーブ協会(IOC)の厳格な規定を守って純正エキストラバージンオリーブオイルを商品化しており、そのことが認められて「オリーブジャパン国際オリーブコンテスト」で2015年に金賞、2016年に金賞、銀賞を受賞している。
ただし現時点では、原材料に用いているオリーブは、イタリアの農園で栽培されたものである。なぜなら、現在はまだ日置市でのオリーブ栽培が安定的でないからだ。
2012年度から日置市は、オリーブの6次産業化に取り組んでいる。6次産業とは、農業のような第1次産業を食品加工・流通販売にまで多角展開することであり、それに伴って多くの雇用も創出される。
現在、東市来圃場他で15品種のオリーブ(約1,000本)が実証栽培されており、いずれは日置市民に2,000本を半額補助で配布し、栽培の輪を広げていくことを目指している。日置市ではオリーブ推進係を設置し、農家への栽培方法を指導するとともに、市民向けにオリーブオイルセミナーも開催する。
日置市は近い将来、オリーブを日置市の特産品とし、地元で採れたもので製品を作り出すことを大きな目標としている。そのため、今は実験的にオリーブの木を植樹し、本格的な栽培を始めるための体制を整えているのだ。
マーケットの確立のため現地で体験
一方、鹿児島銀行は第5次経営戦略計画で「地域マーケットの創造」を基本戦略の一つとして掲げ、地元に徹底的に関わって支援していく方針を定めている。その一環として2012年5月に締結したのが、日置市との包括的業務協力協定である。
新産業創出のために、オリーブを活用した“産業興し”に着手したのである。また、2013年10月には本格調査のために行員2人をイタリアとスペインへ約2ヵ月間にわたって派遣し、収穫から加工まですべての過程を体験させた。
速やかに事業の枠組みを確立して加工販売業者の誘致も行い、「日置オリーブ」のブランド構築を目指している。2015年2月には、日置市や市内の企業とともに出資する鹿児島オリーブ株式会社によるオリーブ専門店(直販店)「Vigore(ビゴーレ)」がオープンし、イタリアとスペインにある「日置オリーブ農園」で育てた緑の実のオリーブ「緑豊オリーブ」を原料とした製品の販売がはじまった。
オリーブが雇用を増やす鍵
地方創生という言葉を口にするのは簡単だが、そのためには雇用を創出して経済を活性化させることが必要となってくる。かねてから鹿児島銀行は地元における雇用環境に危機感を抱いており、日置市との協業もその状況を打破するための一手だったわけである。
雇用創出こそが地方銀行の役目と考える鹿児島銀行は、日置市と提携を結び3年の歳月を費やしながら企業とのマッチングや加工工場建設を進めている。「徹底的に地域と関わり、その経済発展を支援する」というミッションを貫く鹿児島銀行の尽力が、結実しつつあるといえよう。
提供:nezas
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