世界の社会課題を現地からレポート!~豪州編「ウミガメを救え!グレートバリアリーフの海洋環境」 (2016/10/31 EcoNetworks)
オーストラリアはインド洋と太平洋に囲まれたオセアニア地方に所属するとても大きな島国です。
その中でもクイーンランド州は一年の320日ほどが晴れであることから
“Sunshine State”(太陽の州)と呼ばれ、
一年を通して暖かい気候が続きます。
世界遺産でもあるグレートバリアリーフもそこに位置し、
世界最大級のサンゴ礁地帯と共に豊かな生態系を育む重要な役割を担っています。
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ウミガメと珊瑚
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グレートバリアリーフに生息するトロピカルなマス
しかしながら、地球温暖化による海水温度上昇、工業化による汚染物質の流出、
旅行産業による珊瑚の破壊、ボートからの汚染物質の排出・ゴミの放棄、乱獲により
世界有数の豊かな生態系が近年急速に破壊されてきています。
特に多大なる影響を受けているのがウミガメです。
世界中で7種が確認されており、そのうち6種がグレートバリアリーフ近郊に生息しています。
Flashback turtle(ヒラタウミガメ)の巣は世界中でグレートバリアリーフのみで確認されており、
オーストラリアの法律で6種すべてが絶滅危惧指定されています。
政府はこれを重要視し、ウミガメの保護のために
Recovery Plan for Marin Turtles in Australia(ウミガメ回復計画)を策定。
計画には、乱獲の禁止から、生態系の観察、水質管理、
工場排水、旅行産業によるウミガメへのダメージまでこと細かく記載されています。
特に旅行産業がウミガメに与える影響は多大です。
グレートバリアリーフで最も大きな旅行会社の1つであるCruise Whitsundayはエコツーリズムバッジを取得し
生態系を保護する様々な取り組みをしています。
その活動は病気・負傷しているウミガメを保護、海に帰すだけに留まらず、
スタッフの環境教育、器具の清掃洗剤の選択、船の排水処理、旅行者の教育まで及びます。
私自身もこの旅行会社を5カ月ほど前に使用し、
スタッフの環境知識の高さ、海に入る前の注意事項の細かさに驚いたのを覚えています。
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写真左:Cruise Whitsunday船
また、オーストラリアの教育部門では
海洋生物学専攻者だけでなく、多くの学生が海洋環境について学ぶ環境が整っています。
たとえばクイーンズランド大学では選択授業のなかに海洋生物学が含まれており、
大学の研究所がある島に大学生がフィールドトリップで行き、
現在直面している課題、保護、観測などを身をもって学ぶことができます。
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クイーンズランド大学の学生による珊瑚の測定の様子
オーストラリアの海洋環境改善において
このように産業や教育部門と生態系が隣り合わせとなり
一人一人の環境に対する意識を向上させることが
これからますます重要になってくるでしょう。
グレートバリアリーフに訪れる機会があれば、
ぜひエコツーリズムバッジを取得している旅行会社を選択してみては?
川平紗代@オーストラリア
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