[用語解説]パリ協定、京都議定書
「攻めの地球温暖化外交戦略」どこへ-パリ協定批准間に合わず11月発効 (2016/10/28 政治山)
2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の承認案が10月19日、参院本会議で審議入りしました。衆院では環太平洋経済連携協定(TPP)承認案・関連法案を優先審議しており、パリ協定は参院で先議し批准を急ぎます。米中など80カ国以上がすでに批准し、11月4日に発効することが決まっており、政府・与党は11月7日までの国会承認を目指します。
国会審議入り遅れ、締約国会議の初会合に正式参加できず
11月7日から同18日までモロッコで開催される第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)では、パリ協定に基づく温暖化対策の具体化を話し合う第1回締約国会議(CMA1)も合わせて開催されます。締約国会議の初会合に正式参加するには、10月19日までに国会承認する必要がありましたが、日本は間に合いませんでした。締約国会議へのオブザーバー参加は可能ですが、発言権はなく日本抜きで議論が進む可能性もあります。
岸田文雄外相は参院本会議で「協定を重視しており、迅速な締結が必要だ」と述べました。野党側もパリ協定の承認にはおおむね反対しておらず、今月下旬には参院で承認案が通過する見込みです。政府・与党はCOP22までに衆院で可決、批准し、日本が温暖化対策に取り組む姿勢をアピールしたい考えです。
温暖化対策では、1997年12月に京都市で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で、気候変動枠組条約に関する京都議定書が採択され、日本は世界をリードする立場でした。
また、政府は3年前に策定した「攻めの地球温暖化外交戦略」の中で、国際的なパートナーシップを強化し国際社会をリードすること理念に掲げ、国際枠組みの構築に向けた議論を日本がリードすると謳っていましたが、パリ協定では出遅れが鮮明となっています。
世界が危機感?採択から1年足らずで発効へ
京都議定書では、日本はホスト国として採択に尽力し、ルール作りでも一定の発言力を保ちながら7年がかりで発効にこぎつけました。一方のパリ協定は昨年12月のCOP21で採択され、来月11月の発効までわずか1年足らずでスピード発効となります。
温室効果ガスの2大排出国である米国と中国が今年9月に協定の批准を同時発表したことで早期発効が確実となり、その後は、各国が雪崩を打ったように批准へと動きました。なかでもEUは、通常加盟国すべての国内手続き終了後にEUとして批准するところを、国際交渉で後れを取らないために、EUとしての批准を急きょ優先しました。
経済界の慎重姿勢も影響か
他国の批准の動きが急だったこともありますが、政府は環太平洋経済連携協定(TPP)の審議を優先しようとした事情もあります。安倍首相は臨時国会の所信表明で、パリ協定に言及しませんでした。
また、今年4月の「地球温暖化対策計画(案)」に対するパブリックコメントで、「パリ協定の署名及び締結に向けて必要な準備を進め…」との原案に対して、経済界から「各国の動向を踏まえつつ、パリ協定の署名および締結に向けての必要な準備を進め…」に改めるべきだなどとする注文がついたことも影響があったのではないかと言われています。
※パリ協定とは
2015年12月にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された、2020年以降の国際的な地球温暖化対策の枠組み。先進国に加え、中国やインドなども参加。世界全体で産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半には温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指します。
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