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特定消費者団体が家賃保証会社を提訴、消費者契約法による規制 (2016/10/26 企業法務ナビ

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はじめに

賃貸住宅の家賃の支払を肩代わりする会社が賃借人との間の契約で違法な契約条項を盛り込んでいるとして消費者支援機構関西は24日、家賃保証会社「フォーシーズ」に対し契約条項差止を求める訴えを大阪地裁に起こしました。前回は消費者契約法の違約金条項について見ましたが、今回はそれ以外で無効とされる契約条項を見ていきます。

アパート

事件の概要

被告であるフォーシーズは住宅賃借人からの保証委託に基いて賃貸人と保証契約を締結し家賃の支払の肩代わり等の事業を営む会社です。訴状によりますと、被告会社は大阪市に事業所を置き、全国の不特定多数の賃借人や連帯保証人と「住み替えかんたんシステム保証契約」と称する保証委託契約を締結しておりました。

その契約では以下のような契約条項が盛り込まれておりました。
(1)賃貸人の他に被告会社にも賃貸借契約の解除権を付与する
(2)賃貸借契約の無催告解除権を被告会社に付与する
(3)保証債務履行に際して事前通知を不要とする
(4)賃借人が任意に退去していなくても建物内の動産類を被告会社が法的手続によらず処分できる
(5)これらにつき賃借人は異議権を放棄する等。

消費者支援機構関西はこれらの条項が消費者契約法に違反するとしてフォーシーズに対し差止を求める訴えを大阪地裁に起こしました。

消費者契約法上の規制

消費者契約法10条によりますと、「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」としています。これはその条項がなければ適用されるルールと比較して、消費者の権利を制限したり義務を加重するもので信義則に反するものは無効ということです。より簡単に言うと、その条項を加えたことによって消費者が一方的に不利になる条項と言えます。

例えば民法上の要件を消費者に不利になるように加重したり、逆に事業者に有利になるように軽減したりといったことが当たります。期限までに断りの意思表示が無い場合には承諾したものとみなす、と言った条項もこれに該当します。無効とされた裁判例としては、保険料支払不履行の場合の無催告失効条項、入学辞退の場合の入学金不返還条項、賃貸借契約の更新料特約、賃借人に原状回復費を負担させる特約、敷金から敷引金を控除する敷引特約等があります。

その他の規制項目

消費者契約法にはその他にも8条と9条による規制が存在します。8条では事業者の債務不履行により損害が生じた場合、事業者の債務の履行につき不法行為によって損害が生じた場合、有償契約において目的物の隠れた瑕疵により損害が生じた場合に事業者の責任の全部又は一部を免除する条項は無効としております。

民法上の瑕疵担保責任(570条)の規定は任意規定ですので特約によって排除することは本来可能です。しかし事業者と消費者との契約においては責任の全部免除する条項は無効としています。ただし代替物の提供や瑕疵修補義務といった条項を定めておけば有効とされます(8条2項)。そして9条は前回も取り上げましたが実損を超える手数料、違約金条項を無効としております。

消費者契約法改正について

なお消費者契約法10条については平成28年5月25日に改正されております。施行は来年平成29年6月4日となっております。改正後の条文には「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」という具体例が追加されておりますが基本的には改正前のものと変わりはありません。

コメント

本件でフォーシーズの契約条項の解除権の付与と無催告解除条項は、民法上の契約における解除権者である契約当事者以外の者からの解除を認めるものであり、また解除の要件である催告を不要とするものであるから(541条)消費者である賃借人に一方的に不利なものと言えます。また保証債務の履行につき主債務者への通知を不要とする条項は、賃借人が賃貸人に対して相殺等の対抗事由を有していた場合でも保証人が求償することができる(463条、443条)とするものであり、これも賃借人に一方的に不利と言えるでしょう。そして未だ明け渡していない建物内の賃借人の所有物を保証人が処分できるとする条項は、本来なら民事執行法に基づき裁判所の許可を得て、執行官同伴で行うべき強制執行手続を私人が勝手にできるようにするというものであり違法性は相当強いと思われます。

フォーシーズはこうした賃借人の立ち退きや所有物の処分を賃貸人に代って行うことを利点として顧客獲得を行ってきたとされております。賃借人にとっては手間が省けて効率的な住人の入れ替えができることから魅力的な条項であると考えられます。しかし消費者契約法は立場の弱い消費者の一方的な不利になる条項は無効としております。今一度これらの点を踏まえて契約約款の条項を見直すことが重要だと言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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