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消費者裁判手続特例法が来月から施行、その概要について (2016/9/9 企業法務ナビ

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はじめに

平成25年12月4日に成立した「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(消費者裁判手続特例法)がいよいよ10月1日に施行されます。個々の消費者の被害回復を目的とする本法は日本版クラスアクション制度とも呼ばれ注目を集めております。今回はその概要について見ていきます。

訴訟

制度創設の経緯

近年消費生活センター等に送られる消費者被害相談の件数は年間約85万件を超えると言われております。消費者は事業者と比べてその情報収集能力や交渉力が乏しく被害回復のための行動が取りにくいことから、3割を超える被害者が泣き寝入りをしてしまうと言われております。また訴訟を起こすにも消費者一人一人の被害額が大きくないことから訴訟費用に見合わないことも要因となっております。そこで個々の消費者に代って知識と情報収集能力を有する消費者団体が事業者に法的措置を講じ、消費者の利益を回復し健全な国民経済の発展を図ることを目的として本制度が創設されました。

制度の概要

消費者裁判手続特例法による集団訴訟制度の最大の特徴は二段階訴訟制度にあります。まず消費者と事業者との間での消費契約に関するトラブルが相当数生じた場合、特定適格消費者団体が共通義務確認に訴えを提起することになります(3条)。これにより対象となる消費者の範囲や事業者の義務等を審理し確定することになります。ここで認容判決が出され相手方事業者の義務が確認されますと二段階目の手続に入ります。事業者の義務の存在を前提に簡易確定手続開始の申立てがなされ消費者団体から個々の消費者に通知・公告がなされ参加が募られます(25条)。その後個々の消費者から団体への授権を行い、権利の範囲等を審理して簡易確定決定(44条)がなされ支払へと移行します。決定に不服がある場合には1ヶ月以内に当裁判所に対し異議を申し立てることができます(46条)。

適格消費者団体

消費者に代って訴訟を追行する適格消費者団体は既存の消費者契約法に基いて認定されている全国11団体の中から内閣総理大臣が新たに要件を吟味して認定することになります(2条10号)。その認定要件は(1)消費者契約法に基いて差止請求関係業務を相当期間継続して適切に行ってきたこと(2)人員体制、業務規定、経理的基礎が被害回復業務を適正に行う上で適していること(3)報酬、費用等の算定方法が定められており、消費者擁護の見地から不当でないこと等が挙げられております(65条)。また適格消費者団体には濫訴の禁止や弁護士による訴訟追行、個人情報の適切な管理、徹底した情報公開等の責務を負い内閣総理大臣による監督を受けることになっております(75条~99条)。

対象となる事案

適格消費者団体による訴訟の対象となる事案は消費者契約に基づいて事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務に関するものに限定されます(3条1項)。具体的には(1)契約上の債務の履行請求(2)不当利得に係る請求(3)債務不履行による損害賠償請求(4)瑕疵担保責任による損賠賠償請求(5)不法行為に基づく損害賠償請求が挙げられます。契約の目的以外の物や人身に生じた損害や慰謝料等は対象外となります。つまりこの訴訟で被告となる可能性が高いのは消費者と直接取引を行っている小売業、サービス業、不動産業等と言えます。商品の不良による解除、約款による免責事項の不当といったことを原因とする損害賠償や不当利得返還といった請求が典型例となると考えられます。

コメント

消費者裁判手続特例法は日本版クラスアクション制度と言われ消費者保護に資することを期待されております。米国のクラスアクション制度と違う点はまず原告が適格消費者団体に限定されていることと、手続に参加する消費者は申し出た者に限定されること、対象事案が消費者契約に限定されていること等が挙げられます。それにより米国ほど集団訴訟が乱発される事態に陥ることはある程度防止されるのではないかと考えられます。しかしこれまでは適格消費者団体が行えた措置が差止請求のみであった点を鑑みると相当権限が強化されたと言えます。適格消費者団体は消費生活相談員等を擁し全国消費生活情報ネットワークシステムにアクセスすることが出来ますので、消費者からの被害相談件数が多くなってくれば提訴を検討することになると考えられます。店頭での製品の表示方法、電話勧誘の際の説明、契約約款の免責事項や高額な解約料等、一般に消費者から被害相談が上げられそうな事項からまず見なおして突発的な提訴を防止することが重要となってくる考えられます。

提供:企業法務ナビ

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