非喫煙者の肺がんリスク、受動喫煙で約1.3倍に (2016/9/13 QLife)
国立がん研究センターが複数の論文を解析
たばこを吸わない人にとって、他人のたばこの煙は気になるもの。まして、その煙によって健康被害を受けるとしたら、避けたいと思う気持ちが自然ではないでしょうか。公共施設などでの禁煙、分煙化の流れが世界的に進むなか、日本でも2003年に施行された健康増進法第25条「受動喫煙の防止」に基づき、受動喫煙対策が進められています。しかし、事業者の努力義務にとどまっており、強制ではないのが現状です。
受動喫煙と肺がんの関連については、1981年に国立がんセンター研究所が世界で初めて報告。その後、2004年に国際がん研究機関(IARC)が、環境のたばこ煙の発がん性を認めています。しかし、受動喫煙と肺がんになるリスクについて、これまでの個々の研究では有意な関連が示されていませんでした。
そこで、国立がん研究センターが複数の論文を統合し、解析。その結果、受動喫煙のある非喫煙者は、ない人と比べて肺がんになるリスクが約1.3倍という数字が明らかになりました。
肺がんリスク評価「ほぼ確実」から「確実」へ
発がんに関わるリスク要因の評価は、世界保健機構(WHO)やLARCなどが組織した委員会が世界各国から専門家を招集し、科学論文に基づいて討議しています。評価は、科学的に「確実」「可能性大」「データ不十分」など、いくつかの段階にランク分けされて提示していますが、欧米人と日本人は遺伝的背景、生活習慣が大きく異なるため、日本人の生活習慣や研究結果に基づいたがん予防の指針で対策を行う必要があると考えられています。
今回の研究結果を受け、国立がん研究センター社会と健康研究センターを中心とする研究班は、受動喫煙が日本人の肺がんリスクを上げることが科学的根拠に基づくとして、受動喫煙による肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」に強めました。さらに、日本人の実情に合わせたガイドライン「日本人のためのがん予防法」の「喫煙」の項目で、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から「避ける」に修正し、受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標として提示しました。
受動喫煙は肺がんだけでなく、循環器や呼吸器の疾患、乳幼児突然死症候群などにも影響することが科学的に確立されています。愛煙家にとっては耳の痛い話題かもしれませんが、それでも“他人の煙”による健康被害を公平かつ効果的に防ぐため、同研究班は「公共の場での屋内全面禁煙の法制化など、たばこ規制枠組み条約で推奨されている受動喫煙防止策を、我が国においても実施することが必要です」と提言しています。(菊地 香織)
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