人口の自然増減、過去最大マイナス28万人、女性の出産率は改善1.46へ―2015年人口動態統計月報年報 (2016/5/25 メディ・ウォッチ)
2015年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナス28万4772人で過去最大の減少幅を記録した。しかし、1人の女性が一生の間に生む子供の数を示す「合計特殊出生率」は1.46となり、前年に比べて0.04ポイント上昇している―。
このような状況が、23日に厚生労働省が公表した2015年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」から明らかになりました。
少子化は、社会保障制度はもとより我が国の根幹をも揺るがしかねない問題です。少子化にストップがかかったのか、一時的なものなのか、今後の動向をしっかりと見極めていく必要があります。
合計特殊出生率、前年より0.04ポイント改善
人口動態統計は、出生、死亡、婚姻、離婚、死産の5つの人口動態事象を把握し、少子化対策など厚生労働行政の施策立案のための基礎資料を得ることが目的です。少子化が進めば、主に社会保障の受給者である高齢者の支え手が少なくなるため、財源となる保険料や税、給付のあり方を考え直す必要があるからです。
2015年の状況を見ると、まず出生数は100万5656人で、前年に比べて2117人増加しました。出生率(人口1000対)は8.0で前年と同率でした。
一方、死亡数は129万428人で、前年に比べて1万7424人増加しています。死亡数は戦後最多となっており、高齢化の状況を見ると、「多死社会」がますます進行するものと考えられそうです。ここからは、「どこで死ぬのか」という重要なテーマが浮上します。130万人に及ぼうかという人を、すべて病院で看取ることは極めて困難なためです。
出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス28万4772人で、前年に比べて1万5307人減少しました。過去最大の減少幅となっており、我が国の「人口減少」に拍車がかかっていることが伺えます。
国家の三要素として「領土」「国民」「主権」が挙げられます。人口減少は、三要素の1つ、つまり国家が消滅に向かっていることを意味しており、社会保障はもちろん、我が国の存立にかかわる重要問題です。
ところで、うれしいニュースもあります。「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率が前年から0.04ポイント上昇し、1.46となった点です。ただし、少子化に歯止めがかかりつつあるのか?あるいは一時的な現象にすぎないのか、今後の動向をしっかりと見守る必要があります。
3.5人に1人ががんで死亡
なお、死亡数を死因別に見ると、第1位は悪性新生物で37万131人(人口10万対の死亡率は295.2)、第2位は心疾患で19万5933人(同156.3)、第3位は肺炎で12846人(同96.4)、第4位は脳血管疾患で11万1875人(同89.2)となっています。
第1位の悪性新生物は、2015年の全死亡者に占める割合が28.7%となっており、およそ3.5人に1人が「がんで死亡」している状況です。
第3位の肺炎は1980年に「不慮の事故」に代わって第4位となり、2011年には脳血管疾患にかわり第3位となりました。2015年の全死亡者に占める割合は9.4%となっています。20日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」では、相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)から「肺炎を5疾病・5事業にように取り上げるべき」との指摘も出ています。医療費与えるインパクトも同時に強くなるので、今後も予防策・治療の充実などが求められます。
なお、性・年齢(5歳階級)別に主な死因の構成割合をみると、5~9歳では悪性新生物・不慮の事故、10~14歳では悪性新生物・自殺、15~29歳では自殺・不慮の事故、30~49歳では悪性新生物・自殺がそれぞれ多くなっています。年齢が上がるにつれ悪性新生物の占める割合が高くなっていますが、男性では65~69歳、女性では55~59歳がピークとなっており、ここから「高齢者に対するがん対策(例えば抗がん剤などの副作用も強い治療法の選択など)は、若年者と同じでよいのか」という問題意識が出てきます。
さらに、悪性新生物の主な部位別に死亡率を見ると、男性では「肺」がもっとも高く(1993年以降第1位)、2015年の死亡数は5万3170人、死亡率は87.2となりました。ている。女性では「大腸」(2003年以降第1位)と「肺」が高くなっています。女性では、「大腸」がんによる2015年の死亡数は2万2867人、死亡率は35.5となっています。
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