法律違反だけではない パナマ文書公開が世界中で問題になる理由とは? (2016/5/11 JIJICO)
パナマ文書公開で世界中が混乱
今、パナマ文書が世間を騒がせています。
このパナマ文書とは、中米のパナマにある法律事務所から流出した膨大な内部情報のことで、この法律事務所がタックスヘイブン(租税回避地)を利用した法人設立などを扱っていたことから、その文書によってタックスヘイブンを利用していた人物や法人名などが明るみに出てしまうために世間を騒がせることになりました。
そもそも税金をどのように課すのかということは、それぞれの国が自ら決定できる事項なのですが、オリジナルな産業基盤の乏しい小国では、税率を低くしたり、あるいはそもそも課税しないことで、富裕層や大企業を集めることが可能となり、それを自国の雇用に繋げるなどして経済力を高めることができます。そのような租税政策を採っている国や地域のことをタックスヘイブンと呼びます。
タックスヘイブンが法律に反するのはどのようなケース?
しかしながら、タックスヘイブンに設立された法人が、実体のないペーパーカンパニーであったり、取引をしているように装っていたとしたら、合法的な節税ではなくむしろ悪質な脱税ということになりますので、所得税法違反や法人税法違反といった罪に問われかねません。
また、テロリストや詐欺集団などなどの犯罪組織が得た違法な収益は、タックスヘイブンに設立されたペーパーカンパニーと架空の取引をすることで、そのペーパーカンパニーが一旦取得し、これをタックスヘイブンにある銀行を通じて送金させれば、いわゆるマネーローンダリング(資金洗浄)となります。
タックスヘイブンを悪用するために、金融機関に対し取引主体について虚偽の申告をしたり、あるいは第三者に自ら開設した取引口座等を譲渡したりする行為は、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反といった罪に問われることになります。
パナマ文書が世界中で問題になっている本質とは?
パナマ文書の問題は、タックスヘイブンを利用していた人物や法人が脱税やマネーローンダリングに関与している疑いがあると考えられるから世間を騒がせていると思いがちですが、タックスヘイブンに設立された法人やそれを通じて行われた取引が実体のある真正なものである限り、特に違法となるものではありません。
我が国の憲法では国民の財産権が保障されており、課税には法律が必要であるとする租税法律主義も定められていますので、合法的な節税自体は何ら咎められることではありません。しかしながら、国の要職にある人物は、国の財政を運営していくために適切かつ平等な徴税のあり方を模索する立場にあります。そのような人物が、積極的にタックスヘイブンを利用して節税をしていたとなると、いくら合法であるとはいっても、やはり首を傾げたくなるのも頷けるというもので、そこが騒ぎを大きくしている本質のようです
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